転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
1,077 / 1,259

千百十八話 反対はしない

しおりを挟む
「今日の探索が終われば、一旦戻るか」

ドラゴニックバレーで探索を始めて三日目の朝、ソウスケは朝食中にポツリと呟いた。

「ふむ…………そうか、解った」

「あら、もっと長く滞在していても構わないのではないか、と反対はしないのですね」

ミレアナは勿論、ソウスケの考えに反論する気は一切ない。

ただ、ザハークは最終的に従いはするが、それでも一度はもう数日ぐらい滞在していても良いのではないかと、反対すると思っていた。

「まだまだドラゴニックバレーの最寄り街、グロードに滞在するのだろう。であれば、焦ることはないと思ってな」

「そうですか……まぁ、それは間違いありませんね」

ミレアナはザハークやソウスケほど強大な力を持つドラゴンとの戦闘を望んではいないが、せっかく国を越えて目的地まで来たというのに、たった十日や二十日で移動するのは勿体ない……とは思っていた。

「しかし、思っていた以上にBランクのドラゴンだけではなく、同じBランクのモンスターもチラホラと生息していますね」

「そうだな。もしかしたら、ドラゴンにとっては特に過ごしやすい場所だけど、大多数のモンスターにとっても過ごしやすい場所なのかもしれないな」

ドラゴニックバレーで活動を始めてから、三人はドラゴン以外の強敵とも遭遇していた。

当然、襲い掛かるモンスターたちは、主にザハークとソウスケが堪能しながら叩き潰した。

「つまり、多くの強敵たちが生息する楽園という訳だな」

「ザハークにとっては、その認識で合っているでしょう。ただ、ドラゴン以外の生息しているモンスターまである程度の強さを持っているのは……進化、もしくは適応せざるを得なかったからでしょう」

「つまり、過酷な環境……生態系? から逃げなかった個体ばかりということだな」

朝から子供が見れば泣き出すこと間違いなしの笑みを浮かべるザハーク。

朝食を食べ終えてから数十分後、戦闘欲が溢れるザハークの最初の犠牲者となったのは、ソウスケが初日に戦ったドラゴンと同じ火竜であった。

「ハッハッハ!!!! 中々パワーがありそうな火竜じゃないか!!!!」

「グゥウウオオオォアアアアアアッ!!!!!!」

ザハークの言う通り、火竜ではあるものの、先日ソウスケが戦った個体と比べて全体的に大きく、そして太い。

見た目からしてパワー型であることが窺える。

(このパワーっ!! どうやら、岩竜にも、負けてない様だな!!!!!!!)

岩竜にも負けないパワー。
そこに加えて、以前ソウスケが戦った火竜よりは劣るものの、スピードは岩竜以上。

パワーだけの相手というのも悪くないが、そこに更にスピードが加われば直良し。
今回は身体強化のスキルを使う以外にも、両手両足に水の魔力を纏いながら戦うザハーク。

「凶暴性が高そうな火竜だな」

「そうですね。どの攻撃も荒々しい……以前ソウスケさんが戦った火竜と比べて知能が劣る様に感じますが、あれは
あれで恐ろしい戦力なのでしょう…………とはいえ、これから恐ろしさを感じるのは火竜の方だと思いますが」

「違いないな」

ミレアナが口にした通り、最初こそ火竜は威勢よく吼え、己の牙を、爪を振るっていた。

だが、狙った得物はどんな攻撃を放っても物理攻撃は笑いながら同じ物理攻撃で対応し、ブレスを放っても笑いながら水の衝撃波を放ち、対応されてしまう。

強烈な一撃を叩き込むのではなく、連続で炎爪を叩き込むも……これまた笑みを浮かべながら水を纏った拳で全ての爪撃を対応された火竜。

「ッ!!!」

「ふっふっふ、悪くない連撃だった。さぁ……次は俺に何を見せてくれる」

「ッ………………~~~~~~ッ!!!!!!! ギィィィイ゛イ゛アアアアアアアアアッ!!!!!!」

火竜は確かに恐怖を感じた。
しかし、暗黙のルールのせいか、それともプライドが許さなかったのか……撤退、ドラゴニックバレーから去るという選択肢は選ばず、全身に轟炎を纏ってザハークに咬みつこうとした。

「ふははははっ!!!!! 良いぞ!! それでこそドラゴンだッ!!!!!!!!!」

接触直前、ザハークは両手を上下に広げ、火竜の咬みつきに対抗した。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...