転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百十九話 万が一は考えてる?

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「ソウスケさん」

「なんだ、ミレアナ」

「……仲間に対して、バカだなと思ってしまうのはよろしくないでしょうか」

「人間なんだし、偶にそう思ってしまう事ぐらいはあると思うよ」

人間だから仕方ないと、ソウスケはミレアナの気持ちを肯定した。

「そうですか……では、ザハークを堂々とバカと呼んでも構いませんね」

「う、うん…………まぁ、そうだね。今回も今回で中々無茶をしてる訳だし」

前回の岩竜戦、岩竜のブレスを高速連続パンチでやり過ごすという対応も……バカだアホだという感情を通り越し、呆れてしまうところがあった。

だが、今回の今回でザハークはとんでもない行動を取った。

「普通、いくら力に自信があるとはいえ、あの様な真似をするでしょうか」

「普通はしないだろうな。直線的な攻撃は横からの攻撃に弱いから、ぶつかる直前で躱して、渾身の一撃を叩き込むと思う」

「私も、討伐するのであればそれが最善の策かと思います。なのに…………いえ、まだ両手両足だけではなく、全身に水を纏っただけ、万が一を考慮していると思うべきでしょうか」

ザハークは火竜の全身の轟炎を纏った突貫、咬みつきを真正面から受け止める為に、全身に水を纏った。

離れた場所で観戦しているソウスケとミレアナの元まで熱さが届いていることを考えると、それがせめてもの対応策と言えた。

「ヌゥゥゥゥゥゥウウウウウウッ!!!!!!」

「ーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」

押されながらも、未だ食われないザハーク。
そして、何が何でもここで仕留めようと、噛み千切り、食い殺そうとする火竜。

「……万が一飲み込まれたら、という考えはないのでしょうか」

「ん~~~……ザハークの場合、飲み込まれたらそれはそれで倒しやすくなるんじゃないかな。ほら、中から攻撃したら、多分為す術もなく殺されるだろ」

「それもそうでしたね……なにはともあれ、今回もザハークの勝利で終わりますね」

バカな行動を取る。呆れさせられるが……それでも、ミレアナはザハークが正気か否かの部分は置いておき、この戦いに勝利するという点に関しては疑っていなかった。

「ふ、ふっふ……ふんッ!!!!!!!!」

「っ!!??」

火竜の勢いを完全に止めてしまったザハーク。

受け止めた口を、無理矢理力任せに閉じさせた。
その衝撃で歯が揺れ、視界が揺れ……ほんの数瞬だけ、動きが止まってしまった。

「ふぅーー……せええええあああああああああッ!!!!!!!!」

「~~~~~~~っ!!!!!????? ッ、…………」

火竜の動きが止まった瞬間、ザハークは火竜の頭部……を潰すのではなく、首元に移動。

太い首を両腕で掴み、全力で抱きしめた。
結果……当然と言えば当然ではあるが、火竜の首はブチ切られてしまった。

「ふぅ~~~、こんなところか」

「「…………」」

「二人共、終わったぞ~~~」

ザハークとしては、元々は頭部を潰そうとは思っていたが、ドラゴンは心臓だけではなく、脳も売り物に、錬金術の素材になる……それを知っていたからこそ、今回は首を引き千切ろうと思い、実行に移した。

そんなザハークの考えを聞かされれば、首を両腕でブチ切ったのにも納得。

ただ、ソウスケとミレアナは解体中にその説明を聞いた。
ザハークからの説明を聞いて、わざわざラストアタックで首を狙ったことには納得したが……二人とも、何故大剣を使わなかったのかとツッコんだ。

「むっ、そうだな……忘れてたから、としか言えないな」

「わ、忘れてた、ですか……はぁ~~~~」

「あっはっは!!!!! ザハークらしい理由だな~~」

ミレアナはため息を吐き、ソウスケは笑うしかなかった。

その後、一応順調に探索は進み、昼食を食べ終えてから約二時間後……ソウスケたちはドラゴニックバレーに入ってから、初めて自分たち以外の冒険者を発見。

ただ……その冒険者たちはドラゴン以外のモンスターと戦っていた。
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