1,079 / 1,259
千百二十話 曖昧な理解故に
しおりを挟む
「ん? あれは……ドラゴンじゃ、ないな」
「その様だな。しかし…………相当な強さだ」
視線の先で冒険者たちと戦っているモンスターはこれまで三人が遭遇してきた火竜や岩竜、風竜といったドラゴンではなく、頭部から刃が生えている虎、ヴァレードタイガーである。
「わぉ……あの虎系モンスター、名前はヴァレードタイガーで、Aランクのモンスターだ」
「Aランク、か…………確かに、似た様な雰囲気を、感じるな」
ザハークが思い出していたのは、学術都市が有する上級者向けダンジョンの深層で遭遇した狼系のモンスター、ガルム。
実際に戦ったのはソウスケではあるが、その雰囲気は覚えていた。
「……難しいところ、ですね」
冷静に戦況を観察しているミレアナ。
応戦している冒険者たちもドラゴニックバレーで活動する冒険者らしく、相当な戦闘力を有している。
素材や功績に目が眩み、実力不足で入り込んだ愚か者たちではない。
ただ……それでも、戦況は三対七で冒険者たち側が不利だった。
「ふむ。ヴァレードタイガーと戦っている冒険者たちも、悪くない戦闘力だな。ただ、このまま行くと……死ぬか?」
「何人かは、死ぬかもしれませんね。その犠牲を入れれば、勝てる可能性はあるでしょう。しかし……あのヴァレードタイガー、傷が多く……そして、かなり人と戦い慣れていますね」
「みたいだね…………人間とだけじゃなくて、ドラゴンと何度も戦ってるのかな」
ソウスケの予想通り、ヴァレードタイガーは何度もドラゴンと戦闘を行っていた。
ただ、過去に冒険者たちと戦闘を行った際……命の危機を感じ、逃走という選択肢を選んだ。
ドラゴニックバレーには、生息しているドラゴンたちに暗黙のルールの様なものがある。
適応されているのは主にドラゴンという種だけだが……モンスターたちはそこまで頭が良くはなく、暗黙のルールに関しても曖昧にしか理解してない個体も多い。
故に、ヴァレードタイガーは何度か多数のドラゴンから、何故まだドラゴニックバレーにいるのかと責められ、襲撃を受けた。
だが……ヴァレードタイガーは責められ、攻められることに屈しず、逆に食い返した。
暗黙のルールなど知ったことではない。
ただ、自分を敗走に追い込んだ人間に関して恨みはある。
だからこそ、人間と遭遇した際は、なるべく観察しながら戦っていた。
特別知能が高い個体ではなかったが……強くなる為に、適応した。
「……随分と、戦い慣れてる気がする」
「人と、ですね」
「あぁ。そりゃモンスターの中には知能が高いモンスターはいると思うけど、あのヴァレードタイガー……人間の戦い方に慣れてるだけじゃなくて、対パーティーとの戦い方にも慣れてないか?」
当然だが、ドラゴンやAランクモンスターと戦う冒険者たちは、ザハークの様に一人で戦おうとはしない。
これまた当たり前のことだが、わざわざリスクの高い対応も取らない。
わざと真正面から戦おうとはせず、タイミングをズラし、死角からも狙う。
しかし、ヴァレードタイガーはそういった攻め方をされるのに慣れているのか、明らかに死角から高速で飛来する攻撃にも対処していた。
「あっ、一人……離脱しましたね」
「だな。あそこから復帰する為にはもう一人離脱して……うん、そうなると……死にそうだな」
犠牲にして勝利を得られる可能性が極端に下がった。
(……行きましょうか)
(うむ)
リーダーの表情を見て、二人はこれから自分たちがどういった行動を取るべきか察した。
「……行くぞ、二人とも」
「「了解」」
ソウスケから命を受け、二人も後に続く。
「っ!?」
ザハークが注意を引くために強烈な殺気を放ち、予想通りヴァレードタイガーは反応。
その隙に前衛で耐えていた冒険者たちは後方に下がった。
「死にそうだったので、勝手ながら参戦させてもらいます」
新たに現れた人間が三人。
ヴァレードタイガーは焦ることなく、怒ることなく……ただただ、目の前の獲物を狩ることに集中し始めた。
「その様だな。しかし…………相当な強さだ」
視線の先で冒険者たちと戦っているモンスターはこれまで三人が遭遇してきた火竜や岩竜、風竜といったドラゴンではなく、頭部から刃が生えている虎、ヴァレードタイガーである。
「わぉ……あの虎系モンスター、名前はヴァレードタイガーで、Aランクのモンスターだ」
「Aランク、か…………確かに、似た様な雰囲気を、感じるな」
ザハークが思い出していたのは、学術都市が有する上級者向けダンジョンの深層で遭遇した狼系のモンスター、ガルム。
実際に戦ったのはソウスケではあるが、その雰囲気は覚えていた。
「……難しいところ、ですね」
冷静に戦況を観察しているミレアナ。
応戦している冒険者たちもドラゴニックバレーで活動する冒険者らしく、相当な戦闘力を有している。
素材や功績に目が眩み、実力不足で入り込んだ愚か者たちではない。
ただ……それでも、戦況は三対七で冒険者たち側が不利だった。
「ふむ。ヴァレードタイガーと戦っている冒険者たちも、悪くない戦闘力だな。ただ、このまま行くと……死ぬか?」
「何人かは、死ぬかもしれませんね。その犠牲を入れれば、勝てる可能性はあるでしょう。しかし……あのヴァレードタイガー、傷が多く……そして、かなり人と戦い慣れていますね」
「みたいだね…………人間とだけじゃなくて、ドラゴンと何度も戦ってるのかな」
ソウスケの予想通り、ヴァレードタイガーは何度もドラゴンと戦闘を行っていた。
ただ、過去に冒険者たちと戦闘を行った際……命の危機を感じ、逃走という選択肢を選んだ。
ドラゴニックバレーには、生息しているドラゴンたちに暗黙のルールの様なものがある。
適応されているのは主にドラゴンという種だけだが……モンスターたちはそこまで頭が良くはなく、暗黙のルールに関しても曖昧にしか理解してない個体も多い。
故に、ヴァレードタイガーは何度か多数のドラゴンから、何故まだドラゴニックバレーにいるのかと責められ、襲撃を受けた。
だが……ヴァレードタイガーは責められ、攻められることに屈しず、逆に食い返した。
暗黙のルールなど知ったことではない。
ただ、自分を敗走に追い込んだ人間に関して恨みはある。
だからこそ、人間と遭遇した際は、なるべく観察しながら戦っていた。
特別知能が高い個体ではなかったが……強くなる為に、適応した。
「……随分と、戦い慣れてる気がする」
「人と、ですね」
「あぁ。そりゃモンスターの中には知能が高いモンスターはいると思うけど、あのヴァレードタイガー……人間の戦い方に慣れてるだけじゃなくて、対パーティーとの戦い方にも慣れてないか?」
当然だが、ドラゴンやAランクモンスターと戦う冒険者たちは、ザハークの様に一人で戦おうとはしない。
これまた当たり前のことだが、わざわざリスクの高い対応も取らない。
わざと真正面から戦おうとはせず、タイミングをズラし、死角からも狙う。
しかし、ヴァレードタイガーはそういった攻め方をされるのに慣れているのか、明らかに死角から高速で飛来する攻撃にも対処していた。
「あっ、一人……離脱しましたね」
「だな。あそこから復帰する為にはもう一人離脱して……うん、そうなると……死にそうだな」
犠牲にして勝利を得られる可能性が極端に下がった。
(……行きましょうか)
(うむ)
リーダーの表情を見て、二人はこれから自分たちがどういった行動を取るべきか察した。
「……行くぞ、二人とも」
「「了解」」
ソウスケから命を受け、二人も後に続く。
「っ!?」
ザハークが注意を引くために強烈な殺気を放ち、予想通りヴァレードタイガーは反応。
その隙に前衛で耐えていた冒険者たちは後方に下がった。
「死にそうだったので、勝手ながら参戦させてもらいます」
新たに現れた人間が三人。
ヴァレードタイガーは焦ることなく、怒ることなく……ただただ、目の前の獲物を狩ることに集中し始めた。
353
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
虹色のプレゼントボックス
紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。
安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。
わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。
余計わけのわからない人物に進化します。
作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。
本当に尋常じゃないほど早いです。
残念ながらハーレムは無いです。
全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。
未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。
行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。
なかなかに最悪な気分になりました。
お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。
というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。
お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる