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千百三十一話 仇討ちに不向き?
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「そういう恐ろしさを考えれば、あの時あのバカたちを抑えて、ミレアナに戦ってもらったのは大正解だったな」
「ですね」
「……話から察するに、毒竜を他の冒険者たちが討伐しようと動いていたんだな」
毒竜であろうとも、ドラゴンであることに変わりはない。
Bランクのドラゴンを討伐すれば、とりあえずドラゴンスレイヤー……竜殺しの称号を手に入れられる。
であれば、レイウル以外の場所で活動している冒険者たちが血気盛んに挑もうとするのも解る……と考えていたバラスタだが、実情は違った。
「そうですね。討伐しようと動いたには動いたんですけど、そいつらはまだ……俺よりも歳が二つか三つ……もしくは四つ上ぐらい? の奴らだったんですよ」
「ソウスケの二つか三つ、もしくは四つ歳上となると……ギリギリ二十に届くか否かといったところか。その冒険者たちは、ソウスケの様にずば抜けた戦闘力を持つ者たちだったのか?」
「いえ。正直なところ、その世代の中では戦える方ではあるけど、といったところかと」
「……ソウスケさんは優しいのでこう言っていますが、彼らが親しい者の仇討ち? といった理由で突っ込んだところで、無駄死にするのは目に見えていました」
容赦ない評価ではあるが、ミレアナの言葉に嘘は一つもなかった。
「あ、仇討ちか…………おそらくその若い連中たちとは知り合いではないが、礼を言う。そいつらの無謀な行動を止めてくれてありがとう」
(……本当に優しいというか、思いやりがある人なんだな)
バラスタが冒険者の中でも他者に優しく接するタイプであるのは間違いないが、今回全く関りがないであろう人物を助けてくれた礼を伝えたのには明確な理由があった。
「それにしても、よりにもよって毒竜を相手に仇討ちか……」
「? ドラゴンによって、こいつ相手になら仇討ちをしても良いとかあるんですか?」
「特にそういった暗黙のルールはないぞ。ただ、相性の問題だ。モンスターはモンスターで暴力的なまでの戦闘力を持ち、理不尽な強さを持っているが、人間は人間で限界を超えて奇跡を起こす力を持っている」
これまでソウスケたち以上に多くの冒険者に関わり、共に冒険してきたバラスタはそんな光景を何度か見てきた。
「ただ、俺の経験上……毒竜と闇竜は、性格が悪い」
「……なんとなくイメージが出来ます」
「同じく」
実際に戦ったからこそ、ミレアナは毒竜ヴェノレイクは根っからの性悪なのだと理解していた。
「そういったドラゴンを相手に仇討ちを行えば、まず奇跡的に倒すという可能性は潰える」
「えっと…………相手をおちょくったり、行動を邪魔したりするのが上手いから、とかですか?」
「その通りだ。例え初めて復讐者と対峙することになったとしても、奴らは真面目に戦おうとはせず、基本的には復讐者たちを相手に嗤って対応する」
「冷静になれば、っていうのは無理な話なんですよね」
ソウスケは知人、友人がモンスターに殺されたという経験は、まだ一度もない。
それでも……仇を目の前にして、冷静ではいられないという思いは、なんとなく解かる。
「良く解ってるじゃないか。稀に、友人や恩人の仇を目の前にしても冷静さを保っていられる奴はいるらしいが、そいつ個人で仇討ちを行うならともかく、パーティー単位で仇討ちを行うなら、一人が冷静さを保てていたとしても、無意味な事が多い」
「……最悪、その冷静さを保てている人が、真っ先に死んでしまうかもしれませんね」
「仲間思いの奴なら、そうなってもおかしくないだろうな。それに、毒竜なんかは毒を上手く対処出来なければ、じわじわと削られ、何も出来ずに嬲り殺されるケースもある。ミレアナさんは……風を上手く使って対処したといったところか?」
「えぇ、その通りです。とはいえ、距離を取って攻撃していても油断出来ませんでしたが」
結果として、見た目だけであれば余裕の勝利で終わった毒竜戦だったが、戦った本人であるミレアナとしては、それなりに神経を削る戦いだった。
「ですね」
「……話から察するに、毒竜を他の冒険者たちが討伐しようと動いていたんだな」
毒竜であろうとも、ドラゴンであることに変わりはない。
Bランクのドラゴンを討伐すれば、とりあえずドラゴンスレイヤー……竜殺しの称号を手に入れられる。
であれば、レイウル以外の場所で活動している冒険者たちが血気盛んに挑もうとするのも解る……と考えていたバラスタだが、実情は違った。
「そうですね。討伐しようと動いたには動いたんですけど、そいつらはまだ……俺よりも歳が二つか三つ……もしくは四つ上ぐらい? の奴らだったんですよ」
「ソウスケの二つか三つ、もしくは四つ歳上となると……ギリギリ二十に届くか否かといったところか。その冒険者たちは、ソウスケの様にずば抜けた戦闘力を持つ者たちだったのか?」
「いえ。正直なところ、その世代の中では戦える方ではあるけど、といったところかと」
「……ソウスケさんは優しいのでこう言っていますが、彼らが親しい者の仇討ち? といった理由で突っ込んだところで、無駄死にするのは目に見えていました」
容赦ない評価ではあるが、ミレアナの言葉に嘘は一つもなかった。
「あ、仇討ちか…………おそらくその若い連中たちとは知り合いではないが、礼を言う。そいつらの無謀な行動を止めてくれてありがとう」
(……本当に優しいというか、思いやりがある人なんだな)
バラスタが冒険者の中でも他者に優しく接するタイプであるのは間違いないが、今回全く関りがないであろう人物を助けてくれた礼を伝えたのには明確な理由があった。
「それにしても、よりにもよって毒竜を相手に仇討ちか……」
「? ドラゴンによって、こいつ相手になら仇討ちをしても良いとかあるんですか?」
「特にそういった暗黙のルールはないぞ。ただ、相性の問題だ。モンスターはモンスターで暴力的なまでの戦闘力を持ち、理不尽な強さを持っているが、人間は人間で限界を超えて奇跡を起こす力を持っている」
これまでソウスケたち以上に多くの冒険者に関わり、共に冒険してきたバラスタはそんな光景を何度か見てきた。
「ただ、俺の経験上……毒竜と闇竜は、性格が悪い」
「……なんとなくイメージが出来ます」
「同じく」
実際に戦ったからこそ、ミレアナは毒竜ヴェノレイクは根っからの性悪なのだと理解していた。
「そういったドラゴンを相手に仇討ちを行えば、まず奇跡的に倒すという可能性は潰える」
「えっと…………相手をおちょくったり、行動を邪魔したりするのが上手いから、とかですか?」
「その通りだ。例え初めて復讐者と対峙することになったとしても、奴らは真面目に戦おうとはせず、基本的には復讐者たちを相手に嗤って対応する」
「冷静になれば、っていうのは無理な話なんですよね」
ソウスケは知人、友人がモンスターに殺されたという経験は、まだ一度もない。
それでも……仇を目の前にして、冷静ではいられないという思いは、なんとなく解かる。
「良く解ってるじゃないか。稀に、友人や恩人の仇を目の前にしても冷静さを保っていられる奴はいるらしいが、そいつ個人で仇討ちを行うならともかく、パーティー単位で仇討ちを行うなら、一人が冷静さを保てていたとしても、無意味な事が多い」
「……最悪、その冷静さを保てている人が、真っ先に死んでしまうかもしれませんね」
「仲間思いの奴なら、そうなってもおかしくないだろうな。それに、毒竜なんかは毒を上手く対処出来なければ、じわじわと削られ、何も出来ずに嬲り殺されるケースもある。ミレアナさんは……風を上手く使って対処したといったところか?」
「えぇ、その通りです。とはいえ、距離を取って攻撃していても油断出来ませんでしたが」
結果として、見た目だけであれば余裕の勝利で終わった毒竜戦だったが、戦った本人であるミレアナとしては、それなりに神経を削る戦いだった。
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