転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百三十二話 相手を間違えてはならない

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「とりあえず、毒竜を見つけたら必ず仕留めるようにしますね」

「あぁ、そうしてくれると助かる」

ソウスケたちはいつも標的を発見した際、どのモンスターも仕留めているが、バラスタの話を聞いて、毒竜だけは絶対に仕留めておこうときめた。

ドラゴンスレイヤー……竜殺しの称号が欲しい者であったとしても、わざわざ戦う相手が毒竜である必要はなく、仮にドラゴニックバレーに生息している毒竜の大半をソウスケたちが討伐してしまっても、特に問題はなかった。

毒竜の素材も、殆どの素材が色々と武器やマジックアイテムの材料……中には薬の素材として使える物もある。
ただ……全滅されなければ、ある程度ソウスケたちが狩ってしまっても構わないというのが、バラスタの考えだった。

(Aランクともなれば、討伐するのは容易な相手ではないが……Bランクのドラゴンであれば、一人で容易に討伐してしまうソウスケたちが三人纏めて戦えば、討伐も難しくはないか)

レイウルを拠点に活動しているバラスタとしても、出来れば毒竜との戦闘は避けたい。

とはいえ……ソウスケたち自身も、毒竜に関してはそこまで興味はなかった。

(また戦うとなれば……私が戦う事になりそうですね)

毒をメインに戦う相手ということもあり、戦闘スタイル的にもザハークが興味を持てない相手。
ソウスケも……戦わざるを得ない状況であれば戦うも、積極的に戦おうとは思えない相手。

そんな中、ミレアナだけは錬金術の素材として毒竜の素材には興味があるため、遭遇したら自分が戦っても良いと思っていた。

「そういえば、ソウスケたちはドラゴニックバレーにはどういう目的で来たんだ?」

「……それ、前に話したような気がするような」

「そうだったか? グレンゼブル帝国といえば、ドラゴニックバレーが有名どころだから、みたいな話は聞いたかもしれないが…………もしや、本当にそれだけが理由でドラゴニックバレーを探索しようと、レイウルに訪れたのか?」

「基本的にはそんな感じですね。多種多様なドラゴンと戦えるってだけでワクワクしますし、そんな凄い一帯があるなら、最寄り街のレベルも高いと思って」

レベルが高い……とりあえず大きな街には、美味い飯が集まるというのがソウスケの見解である。

「そ、そうか。いや、まぁお前たちの実力なら……そうだな。そこまで、生息しているモンスターの強さなどを意識せずとも問題はない、か」

先に自分たちが戦っていたとはいえ、基本的に一人でヴァレードタイガーを仕留めてしまったザハーク。

話を聞けば、ソウスケも過去に一人でAランクモンスターを討伐した経験があり、ミレアナもその功績に手が届くだけの力は持ち合わせている。

本当に……本当に、探索感覚でBランクのドラゴンやAランクドラゴンに遭遇し、討伐することが出来る。

「…………ソウスケたちにとっては既に体験済みかもしれないが、この先多くの同業者に絡まれると思う」

「特定のクランに入らず、まだ俺が冒険者歴が浅いから、ですよね」

「簡単に言うと、そうなるな。俺たちはお前に恩があるからこそ、うちのトップもそれとなく他のクランの奴らにぶつかるだけ無駄だと伝えるとは言ってたが……」

「同業者からそういう忠告を受けたところで、はいそうですかって答えないのが冒険者ですからね」

「まっ、そういう事だ」

バラスタは今でこそ、冒険者の中でも突拍子もない情報であっても、一応頭の片隅に置くようにする慎重派に成長していた。
ただ……今よりも若い頃は、同世代の中では優れた実力を持っていたこともあり、それなりにイキっていた。

本物の強者に叩きのめされ、クランに加入してからも、ぶつかる相手が他のクランのメンバーなどであれば、尖って尖って突き刺していた。

(冒険者の本質的な部分は変わらねぇからな……あいつらが同じ若い連中に教えてやってるとは思うが、俺からもちゃんと教えとかねぇとな)

ソウスケたちとの食事を終えてクランハウスに戻った後、バラスタは真剣な表情で……僅かな優しさも含ませ、若いメンバーたちに喧嘩を売る相手を間違えてはならないと伝えた。
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