1,096 / 1,259
千百三十七話 疑っていなかった
しおりを挟む
「それでは、これから……もしくは翌日、どちらのタイミングでザハークと戦いますか」
今すぐ戦っても構わないし、明日時間を決めて戦っても構わない。
そんなソウスケの提案に対し……ソウスケよりも人生経験が長いベルダは、ソウスケが頭の片隅で何を考えてるのか察した。
(…………ふぅーーーーーー。どうせなら、明日にしとくか)
ソウスケはベルダとザハークが戦えば、確実にザハークが勝つと思っている。
決してベルダの実力を軽んじているわけではないが、それでも勝つのはザハークだと信じて疑っていない。
だからこそ、今すぐ戦っても良いけど、明日戦っても構わないと告げた。
「それじゃあ、明日にするよ。明日の十時、東門に集合でどうだい」
「ザハークとの戦闘は街の外で行うということですね」
「そうだ。その方が、あんた達も都合が良いだろ」
「……お気遣い、ありがとうございます」
色々と約束事が決まった。
その後、ソウスケたちはその場で解散。
ザハークと合流したソウスケは直ぐにベルダとの一件を伝えた。
「受けてくれてありがとう、ソウスケさん。あの冒険者は、それなりに面白そうだったから、是非戦りたかった」
「はっはっは、予想通りの答えだな」
「それにしても、あのヴァレードタイガーが仇討ち相手だったか…………おそらく、一人では無理だったのではないか?」
ザハークはまだパッとしか見てないが、ベルダでは絶対に無理だとは口にしなかった。
ただ、現段階では、ソロではまず非常に難しいというのが正直な感想。
同等の実力を持つ者たちがあと五、六人いれば……準備もバッチリしていれば、それなりに可能性はある様に思えた。
「そうだね。おそらく、他の人たちと組んで挑むつもりだったんじゃないかな。ベルダさんは大手のクランに在籍してるみたいだし」
「……友人を殺されたということは、その殺された冒険者と縁がある者が他にもあるという事か……であれば、可能性はありそうだな」
「私も同意見ではありますけれど、予定通りにいく可能性は低いかと」
「何故だ?」
「ヴァレードタイガーが生息している場所は、ドラゴニックバレーですよ」
ザハークの疑問に、ミレアナは少し呆れた様子で答えた。
当然のことながら、ドラゴニックバレーにはヴァレードタイガーよりも多くの竜種が生息している。
そのため、ヴァレードタイガーとなるべく万全な状態で遭遇する為には、なるべくドラゴンや他のモンスターと出会わないのがベスト。
しかし、ヴァレードタイガーの生息域は決して小さくなく、道中全く他のモンスターたちと遭遇するのは非常に難しい。
「一流の斥候がいれば可能性は上がるかもしれませんが……私としては、まだヴァレードタイガーが生きていたと仮定するのであれば、もう少し……あと数年は鍛錬と実戦に励むべきだと思いますね」
「……死なずに復讐を達成するなら、それが良いんだろうな」
ソウスケもミレアナと同じく、ベルダがまだまだこれからと感じさせる逸材であるこは見抜いていた。
ただ、ソウスケはそれが良い選択ではあれど、ベストな選択とは思わなかった。
「けど、そうやってちんたら待ってたら、他の冒険者が討伐してしまう。って、今回なった訳だろ」
「むむむ……………………難しい問題ですね」
「そうだな。少なくとも、俺たちが解った口であれこれ意識を逸らす様なことは言えない」
もしかしたら……いるかもしれない。
過去に出会い、語り合い、共に酒を呑んで飯を食べた同業者たちの誰かが、亡くなっているかもしれない。
(……いや、違うんだろうな。多分だけど……必死で、必死で抑えていた)
本当に親しい者だった。
そんな人物を奪った憎い難敵……その難敵を倒してしまった、同じ冒険者。
(強い人だな)
頼んでいる側だからこそ、見せなかった。
そんなベルダの精神に、ソウスケは心の中から称賛を送った。
今すぐ戦っても構わないし、明日時間を決めて戦っても構わない。
そんなソウスケの提案に対し……ソウスケよりも人生経験が長いベルダは、ソウスケが頭の片隅で何を考えてるのか察した。
(…………ふぅーーーーーー。どうせなら、明日にしとくか)
ソウスケはベルダとザハークが戦えば、確実にザハークが勝つと思っている。
決してベルダの実力を軽んじているわけではないが、それでも勝つのはザハークだと信じて疑っていない。
だからこそ、今すぐ戦っても良いけど、明日戦っても構わないと告げた。
「それじゃあ、明日にするよ。明日の十時、東門に集合でどうだい」
「ザハークとの戦闘は街の外で行うということですね」
「そうだ。その方が、あんた達も都合が良いだろ」
「……お気遣い、ありがとうございます」
色々と約束事が決まった。
その後、ソウスケたちはその場で解散。
ザハークと合流したソウスケは直ぐにベルダとの一件を伝えた。
「受けてくれてありがとう、ソウスケさん。あの冒険者は、それなりに面白そうだったから、是非戦りたかった」
「はっはっは、予想通りの答えだな」
「それにしても、あのヴァレードタイガーが仇討ち相手だったか…………おそらく、一人では無理だったのではないか?」
ザハークはまだパッとしか見てないが、ベルダでは絶対に無理だとは口にしなかった。
ただ、現段階では、ソロではまず非常に難しいというのが正直な感想。
同等の実力を持つ者たちがあと五、六人いれば……準備もバッチリしていれば、それなりに可能性はある様に思えた。
「そうだね。おそらく、他の人たちと組んで挑むつもりだったんじゃないかな。ベルダさんは大手のクランに在籍してるみたいだし」
「……友人を殺されたということは、その殺された冒険者と縁がある者が他にもあるという事か……であれば、可能性はありそうだな」
「私も同意見ではありますけれど、予定通りにいく可能性は低いかと」
「何故だ?」
「ヴァレードタイガーが生息している場所は、ドラゴニックバレーですよ」
ザハークの疑問に、ミレアナは少し呆れた様子で答えた。
当然のことながら、ドラゴニックバレーにはヴァレードタイガーよりも多くの竜種が生息している。
そのため、ヴァレードタイガーとなるべく万全な状態で遭遇する為には、なるべくドラゴンや他のモンスターと出会わないのがベスト。
しかし、ヴァレードタイガーの生息域は決して小さくなく、道中全く他のモンスターたちと遭遇するのは非常に難しい。
「一流の斥候がいれば可能性は上がるかもしれませんが……私としては、まだヴァレードタイガーが生きていたと仮定するのであれば、もう少し……あと数年は鍛錬と実戦に励むべきだと思いますね」
「……死なずに復讐を達成するなら、それが良いんだろうな」
ソウスケもミレアナと同じく、ベルダがまだまだこれからと感じさせる逸材であるこは見抜いていた。
ただ、ソウスケはそれが良い選択ではあれど、ベストな選択とは思わなかった。
「けど、そうやってちんたら待ってたら、他の冒険者が討伐してしまう。って、今回なった訳だろ」
「むむむ……………………難しい問題ですね」
「そうだな。少なくとも、俺たちが解った口であれこれ意識を逸らす様なことは言えない」
もしかしたら……いるかもしれない。
過去に出会い、語り合い、共に酒を呑んで飯を食べた同業者たちの誰かが、亡くなっているかもしれない。
(……いや、違うんだろうな。多分だけど……必死で、必死で抑えていた)
本当に親しい者だった。
そんな人物を奪った憎い難敵……その難敵を倒してしまった、同じ冒険者。
(強い人だな)
頼んでいる側だからこそ、見せなかった。
そんなベルダの精神に、ソウスケは心の中から称賛を送った。
332
あなたにおすすめの小説
虹色のプレゼントボックス
紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。
安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。
わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。
余計わけのわからない人物に進化します。
作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。
本当に尋常じゃないほど早いです。
残念ながらハーレムは無いです。
全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。
未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。
行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。
なかなかに最悪な気分になりました。
お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。
というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。
お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる