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千百三十九話 理解している……からこそ
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「それじゃあ、二人とも常識の範囲内で戦ってください」
それだけ伝えると、ソウスケは結界の外に出た。
(一応伝えはしたけど……まぁ、無理だろうな)
常識の範囲内で戦ってくれと伝えたソウスケではあるが、二人ははいそうですねと納得してくれるとは思えない。
「ソウスケさん、どうなると思いますか」
「……とりあえず、ベルダさんは本気で戦るだろうな」
ソウスケはベルダの事を、常識が欠如している女性冒険者だと思っているわけではない。
ただ、ベルダはザハークの事を自分よりも格上の存在だと認めてしまっている。
だからこそ……遠慮する意味はないと、そうはんだんしているように思えた。
「同意見です。いきなりザハークとの戦いを申し込んできた彼女ですが、今ではある程度ザハークの実力を把握しているでしょう」
「だよな…………まぁ、ザハークの力加減を信じるしかない、か」
二人がそうこう話しているうちに、結界の中では戦いが始まっていた。
「ヌゥウウウアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
気合一閃。
雄叫びを上げながら右ストレートを叩き込むベルダ。
「ぬっ! ……ふふ、やるじゃないか」
まだ、両者共にスキルや魔力は使用しておらず、ベルダが放ったのは素の状態での全力右ストレート。
それを左手で受け止めたザハークの体が……ほんの少し、後ろへ押されてしまった。
「まだまだぁあああああああッ!!!!」
最初の一撃で仕留められるなど到底思っておらず、ベルダは拳だけではなく蹴りも使い、連撃を叩き込み続ける。
「……モンスターとの戦いだけじゃなくて、対人戦も上手いみたいですね」
「勤勉な方の様ですね」
ベルダのザハークに対する攻め方を見て、現状……ザハークがベルダの攻撃を全て真正面対処しており、戦いを支配しているのはザハーク。
それでも、ソウスケとミレアナはベルダの攻め方を褒めていた。
そもそも鬼人族よりのオーガであるザハークと、虎系モンスターであるヴァレードタイガーでは体型も大きさも違う。
なので、ヴァレードタイガーに対する復讐ばかり考えて行動していれば、対人戦が疎かになってしまう。
しかし、ベルダの攻撃は一流の格闘家のそれである。
対人戦に関する技術力もBランク冒険者に相応しいものを有していた。
「こりゃあ……ひょっとするか?」
「どうでしょうか。現時点でこの状況ということは、結果的に延長線上になることでしょう。しかし…………見たところ、ザハークであってもベルダさんの実力を楽しむ事だけに集中していれば……片腕か、片脚をやられる可能性は無きにしも非ずかと」
「だよな。とはいえ、ザハークがそれを解らない訳がないと思うんだけど…………さてさて、あいつはどういう選択をするんだろうな」
なんだかんだで、そうなる可能性があると解っていても、楽しむ事だけに集中しそう……と、ソウスケが思っていると、まだ序盤の段階でザハークが受けから攻めに転じた。
「くっ!!」
「ふふ、あまりにも良い殺気を向けてくるものでな。つい、昂ってしまった」
今回の戦い……ベルダにとっては、敵討ちの機会を奪われた、これまたある種の復讐戦。
だからこそ、ベルダは自身とザハークの実力差を理解していることもあり、ザハークに対し……本気の、ヴァレードタイガーに向ける筈だった戦意を、殺意を向けていた。
「上、等ォオオオオオオオッ!!!!!!」
ベルダは直ぐに身体強化のスキルを発動し、ギアを上げた。
拳に、蹴りに、肘に、膝に鋭さと重鈍さが増す。
(ッ!!!! ふっふっふ……ヴァレードタイガー。お前が体験する筈だったこの復讐者との戦い……俺が貰うぞ!!!!!)
予想以上にギアを上げたベルダの攻撃に重さと鋭さを感じ、魔力を纏い始めたザハークは集中力を一段上げ、口端を吊り上げながらベルダの猛撃を捌き、次は……自身の打撃を叩き込んだ。
それだけ伝えると、ソウスケは結界の外に出た。
(一応伝えはしたけど……まぁ、無理だろうな)
常識の範囲内で戦ってくれと伝えたソウスケではあるが、二人ははいそうですねと納得してくれるとは思えない。
「ソウスケさん、どうなると思いますか」
「……とりあえず、ベルダさんは本気で戦るだろうな」
ソウスケはベルダの事を、常識が欠如している女性冒険者だと思っているわけではない。
ただ、ベルダはザハークの事を自分よりも格上の存在だと認めてしまっている。
だからこそ……遠慮する意味はないと、そうはんだんしているように思えた。
「同意見です。いきなりザハークとの戦いを申し込んできた彼女ですが、今ではある程度ザハークの実力を把握しているでしょう」
「だよな…………まぁ、ザハークの力加減を信じるしかない、か」
二人がそうこう話しているうちに、結界の中では戦いが始まっていた。
「ヌゥウウウアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
気合一閃。
雄叫びを上げながら右ストレートを叩き込むベルダ。
「ぬっ! ……ふふ、やるじゃないか」
まだ、両者共にスキルや魔力は使用しておらず、ベルダが放ったのは素の状態での全力右ストレート。
それを左手で受け止めたザハークの体が……ほんの少し、後ろへ押されてしまった。
「まだまだぁあああああああッ!!!!」
最初の一撃で仕留められるなど到底思っておらず、ベルダは拳だけではなく蹴りも使い、連撃を叩き込み続ける。
「……モンスターとの戦いだけじゃなくて、対人戦も上手いみたいですね」
「勤勉な方の様ですね」
ベルダのザハークに対する攻め方を見て、現状……ザハークがベルダの攻撃を全て真正面対処しており、戦いを支配しているのはザハーク。
それでも、ソウスケとミレアナはベルダの攻め方を褒めていた。
そもそも鬼人族よりのオーガであるザハークと、虎系モンスターであるヴァレードタイガーでは体型も大きさも違う。
なので、ヴァレードタイガーに対する復讐ばかり考えて行動していれば、対人戦が疎かになってしまう。
しかし、ベルダの攻撃は一流の格闘家のそれである。
対人戦に関する技術力もBランク冒険者に相応しいものを有していた。
「こりゃあ……ひょっとするか?」
「どうでしょうか。現時点でこの状況ということは、結果的に延長線上になることでしょう。しかし…………見たところ、ザハークであってもベルダさんの実力を楽しむ事だけに集中していれば……片腕か、片脚をやられる可能性は無きにしも非ずかと」
「だよな。とはいえ、ザハークがそれを解らない訳がないと思うんだけど…………さてさて、あいつはどういう選択をするんだろうな」
なんだかんだで、そうなる可能性があると解っていても、楽しむ事だけに集中しそう……と、ソウスケが思っていると、まだ序盤の段階でザハークが受けから攻めに転じた。
「くっ!!」
「ふふ、あまりにも良い殺気を向けてくるものでな。つい、昂ってしまった」
今回の戦い……ベルダにとっては、敵討ちの機会を奪われた、これまたある種の復讐戦。
だからこそ、ベルダは自身とザハークの実力差を理解していることもあり、ザハークに対し……本気の、ヴァレードタイガーに向ける筈だった戦意を、殺意を向けていた。
「上、等ォオオオオオオオッ!!!!!!」
ベルダは直ぐに身体強化のスキルを発動し、ギアを上げた。
拳に、蹴りに、肘に、膝に鋭さと重鈍さが増す。
(ッ!!!! ふっふっふ……ヴァレードタイガー。お前が体験する筈だったこの復讐者との戦い……俺が貰うぞ!!!!!)
予想以上にギアを上げたベルダの攻撃に重さと鋭さを感じ、魔力を纏い始めたザハークは集中力を一段上げ、口端を吊り上げながらベルダの猛撃を捌き、次は……自身の打撃を叩き込んだ。
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