転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百四十七話 ルール故に

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「ぬぅううおおおあああああああああああッ!!!!!!」

「ッ!!!!!!!!!!!」

ザハークが大剣から繰り出した渾身の水斬波を放ったのに対し、風竜は両翼から渾身の斬撃波を放ち、激突。
だが、大型の風竜はそれだけでは終わらず、直後にブレスを放っていた。

「フハハハハハッ!!!!!!!」

X型となって放たれた斬撃波に加えて、風のブレスも追加されたことで、完全に押され始めたと気付いたザハーク。

その状況に対して、ザハークは高らかに笑い、柄で水斬波を放った。

「ッ、シィィィイイアアアアアアアアッ!!!!!!!」

次は大型風竜がこのままでは不味いと感じ取り、今度は全力で風の爪撃を叩き込む。

「ヌハッハッハッ!!!!!!」

そこからは、もはや技術も戦略もない、ただの力の押し合いだった。

「ふっふっふ……良き力だったぞ、風竜」

ザハークは衝突から抜けた風斬を浴びており、体のところどころから血を流しながらも、満足気な笑みを浮かべながら……心臓が切断された風竜に向かって、称賛を送った。

「はいはい、それは認めるけどちゃんとポーションを飲んでくれよ」

「あぁ、解っている………………うむ、やはり不味いな」

ソウスケからポーションを受け取ったザハーク。
一気飲みすると、たちまち大型の風竜から受けた切傷が消えていった。

「とりあえず、お疲れさん。楽しめたようでなによりだよ」

「あぁ、良き戦いだった……しかし、あの様な風竜がいるとはな。あれは……亜種といった存在なのか?」

「ん~~~~~、それはどうだろうな。体系が違うだけでは、なんとも言えないかな」

見た目は風竜でありつつも、体色が緑やそれに近い色ではないものであれば、亜種である可能性は高い。

だが、ソウスケが一応鑑定して視た結果、特に亜種や希少種といった言葉は記されていなかった。

「そうだったか………………」

「? どうかしたか、ザハーク」

「あの風竜……これからの成長次第では、Aランクへと進化できたのではないかと思えてきてな」

現在ミレアナによって血抜きされている風竜の死体を見ながら、ポツリ口にしたザハーク。

「あぁ、そうかもね。その可能性は十分あったんじゃないかな」

「ですね」

「ッ!! 二人共、気付いていたのか」

「そりゃ外からザハークと風竜の戦いっぷり見てたからね」

大剣を使っているザハークの方が強い……とは安易に断言出来ない。
ただ、遊び心はありつつも、ザハークは真剣に戦っていた。

それでも、大型風竜は瞬殺されることはなかった。
それだけで外から観ていた二人からすれば、十分にその可能性はあると感じ取れる。

「何故……どうしてその時、言ってくれなかったんだ」

「「…………」」

ザハークの反応を見て、二人は若干呆れた表情を浮かべながら、やはり伝えなくて正解だったと思った。

「仮にそれを伝えたら、どうするつもりだったんだ?」

「それは………………? そう、だな…………結局のところ、どうにも出来ない、か?」

「ん? それはどういう…………あぁ、そうだな。うん、すっかり忘れてた」

どうにかこうして限界でまで追い詰め、大型風竜が逃走するように仕向ける。

悔しさをバネに更に強くなるだろうと考えていたザハークだが、ここはドラゴニックバレー。
そこに住むドラゴンたち……モンスターたちの中には暗黙のルールがあり、人間に負けたモンスターは出ていかなければならない。

最終的にザハークがほぼ一人で討伐したヴァレードタイガーの稀有な存在もいるが、基本的に追い出されてしまうからこそ、ミレアナが戦った毒竜や雷竜の様なドラゴンがドラゴニックバレー以外の場所で生息している。

故に、ザハークは一応オーガではあるものの、人間と組んで行動している従魔ということもあって、敗走すれば待っているのは退去。
なので、結局のところAランクに進化した大型の風竜と再び遭遇するというのは、無理な話だった。
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