転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千六十九話 権力がなくとも

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「ソウスケ様、お手紙が届いています」

「ありがとうございます」

ジブラと狩り勝負を行うことが決定してから四日後の朝、朝食時に宿の職員がソウスケ宛に届いた手紙を渡しに来た。

「………………なるほど」

ソウスケはまだ朝食の途中ではあったが、周囲の目など気にせず封を開けて手紙を読み始めた。

「ソウスケさん、内容をお聞きしてもよろしいですか?」

「あぁ。要約すると、二日後の午前九時にギルドに来てほしい。俺とジブラには、それぞれ二人の監視人が付く。狩り勝負は一週間」

「なるほど……妥当ではありますね」

「もう一つの手紙には、ギルドが素材に付ける点数が書かれてる」

今回、ソウスケとジブラが行うのは狩り勝負。
ただぶつかり合うだけの勝負ではないため、明確な採点基準が必要となる。

「………………こちらも、妥当な基準ですね」

手紙に書かれている素材名と点数を見て、ソウスケはギルドの基準に対して納得のいく表情を浮かべた。

「……しかし、やはり心配は残りますね」

「どういう心配だ?」

「あの冒険者が所属しているクランと、ギルドの一部の人間が繋がっていないかどうかです」

周囲でミレアナの言葉が耳に入った者たちは、あまりにも隠さない内容に驚きを隠せなかった。

ミレアナの発言は、まだ証拠もないのに大手クランを疑う内容。
それだけでも、クランからすれば喧嘩を売っていると捉えられてもおかしくない。

とはいえ、ミレアナも言われる側の気持ちは解っている。
しかし……ソウスケの実力を重々理解しているミレアナからすれば、元々ジブラが提案していたタイマン勝負ではなく狩り勝負に変えたところで、ジブラという冒険者がソウスケに勝つとは全く思えない。

贔屓目を抜きにしても、その可能性を欠片も感じ取れない。

故に……勝つ手段があるとすれば、それは不正としか思えなかった。

「どうなんだろうね~~。まぁ……だったらそれはそれで、やりようはあるけどね」

確かに、ティールはグレンゼブル帝国という国では、権力らしい権力を持っておらず、そういった件で頼れる者もいない。

だが……こっそりと、誰にも気付かれずに不届き者に地獄を見せることは出来る。

「それに、実力で黙らせる方法もある」

「…………なるほど。であれば、問題ありませんね」

ソウスケは何も口にしていないが、ミレアナはソウスケが何を言いたいのか理解した。
それならばと、仮にジブラが不正をしようとも確実に黙らせることが出来ると確信を得た。

そして二日後の午前九時、手紙に記されていた通り、ソウスケは一人でギルドに訪れた。

「ソウスケさん、こちらです」

ジブラの契約の件で対応した職員に呼ばると、そこにはジブラ以外にも四人の戦闘者がいた。

「それでは、これから手紙に記していた通り、ギルドが用意した二人と共にこれから七日間、共に行動してもらいます」

ソウスケの監視役として用意された人物は、二人の女性だった。

「シャスティです。よろしくお願いします」

「ロゼアよ。よろしくね~~」

「よろしくお願いします」

金髪巨乳と赤髪巨乳の二人を見て、ソウスケは鼻の下が伸びるのを堪える。

「四人はお二人に手を貸す方ではなく、二人を監視する方々です。そして……四人とも、それを忘れることなく、よろしくお願いします」

ギルド職員の言葉に、四人は軽く頷いて応える。

「っし、逃げるなよ!」

「何からどう逃げるのかは知らないけど、逃げないから安心してくれ」

若干熱くなっているジブラの言葉を適当に受け流し、ソウスケは監視役のシャスティとロゼアの二人と共に街を出て、狩り勝負へと向かった。




(……まぁ、どうしようとソウスケさんの自由ですし、食べることはあっても食べられてしまう事はないでしょう)

こっそりと陰からソウスケが出てくる姿を見ていたミレアナ。

シャスティとロゼアの容姿を見て……強さも含め、ソウスケなら食われてしまうことはないだろうと思い、予定通りザハークと共に制作活動を始めた。
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