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千九十七話 遠い記憶
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「こうして共に夕食を食べるのは久しぶりだね」
「そうですね」
グロードの店からの帰り道、久しぶりに会ったクラン深紅のメンバーであり、以前隻眼のヴァレードタイガーから助けてもらったバラスタと出会い、そのまま共に夕食を食べることになった。
「そういえば、ジブラを完膚なきまでに叩き潰したんだったな」
「あぁ、そんな事もありましたね」
約一か月前、ソウスケは若手の中でも有望株であるジブラというBランク冒険者に勝負を挑まれ、狩り勝負を行うことになった。
ただ威勢が良いだけではなく、Bランク冒険者に相応しい実力を発揮し、見事短期間の間にBランクドラゴンを三体もソロで討伐した。
しかし……ソウスケにとって、Bランクドラゴンは大して必死にならずとも討伐出来る相手。
そのため、狩り勝負はソウスケが圧倒的な差を付けて勝利を収めた。
「噂では、Aランクのドラゴンを討伐したと聞いたが、どんなドラゴンを討伐したんだ?」
「Bランクのドラゴンに関しては、本当に色んな属性のドラゴンを討伐しましたね。Aランクドラゴンに関しては灼熱竜という個体と戦いました」
「灼熱竜だったか。Aランクの中でも好戦的なドラゴンと聞いているが、実際のところどうだった」
「その通りでしたね。正直、普通に冷や汗かいたり、物凄く焦りを感じる場面もありましたし」
特に隠すことでもないため、アラッドは灼熱竜との戦闘に関して事細かく話した。
(誤情報だとは思っていなかったが、やはり本当だったか……しかし、話を聞く限り……灼熱竜との戦闘で怪我を負わなかったみたいだな)
灼熱竜がどれほど強いのか、ブレスの強さは、爪撃の範囲は、反応速度は……ソウスケは本当に細かく教えてくれた。
だが、その分析の中に、実際食らって感じた強さというのはなかった。
つまり、ソウスケはAランクドラゴンという怪物と戦いながら、傷一つ負わずに勝利を収めたということになる。
その事実に多少の驚きを感じるものの、バラスタはソウスケならばやってのけるだろうという思いがあり、そこに関して疑うことはなった。
「そういえば、バラスタさんが所属してるクラン、深紅では赤龍をどうこうしようという話は出てないんですか?」
「その話か…………一部の者たちは、せっかくのチャンスだと、討伐すべきだと声を上げる者はいる」
「……バラスタさんとしては、反対なんですね」
表情から見破られてしまったことに、バラスタは苦笑いを浮かべながら答える。
「あぁ、そうだな……俺は、深紅だけで赤龍に挑むことは反対だ」
「……もしかしたらですが、バラスタさんはかつて龍と対峙したことがあるのですか?」
「あぁ……もうかなり昔の話だが、まだ俺がドラゴニックバレーに入れるようになったばかりの頃にな。ただ、対峙したわけではなく、離れた場所から眺めたことがあるだけだ」
バラスタも、同世代の者たちの中では、一歩先を行く有望株だった。
ジブラと同じく、若くしてドラゴニックバレーに足を踏み入れることが出来た。
その際に……見てしまった。
本当に離れていた……遠く、遠い場所で戦っていたため、肉眼でも薄っすらとしか見えなかった。
その龍と戦っていたのは、バラスタが所属している深紅ではなかった。
だが、レイウルの中でもトップクラスのクランが戦っていた。
「本当に距離が離れたいたからこそ、その戦いに巻き込まれることも、狙われることもなかった……にもかかわらず、心底震えたよ」
当然、それは武者震いからくる震えではなく、恐怖心からくる震えだった。
有望株だったバラスタとはいえ、そこに辿り着くまで何度も恐怖を感じたことがある。
だが……その時感じた恐怖心は、これまで感じてきた恐怖が、本当は恐怖とはいえない程度の恐れだったのではないかと錯覚するほど、バラスタの心に……魂に刻まれた。
「本当に討伐するなら、トップクラスのクランの実力者を集めて挑むべきだ。それが一番被害を最小限に抑え、討伐出来る」
まぁ、多分無理だけどな、と口にしながらバラスタはリザードのステーキを口に運んだ。
「そうですね」
グロードの店からの帰り道、久しぶりに会ったクラン深紅のメンバーであり、以前隻眼のヴァレードタイガーから助けてもらったバラスタと出会い、そのまま共に夕食を食べることになった。
「そういえば、ジブラを完膚なきまでに叩き潰したんだったな」
「あぁ、そんな事もありましたね」
約一か月前、ソウスケは若手の中でも有望株であるジブラというBランク冒険者に勝負を挑まれ、狩り勝負を行うことになった。
ただ威勢が良いだけではなく、Bランク冒険者に相応しい実力を発揮し、見事短期間の間にBランクドラゴンを三体もソロで討伐した。
しかし……ソウスケにとって、Bランクドラゴンは大して必死にならずとも討伐出来る相手。
そのため、狩り勝負はソウスケが圧倒的な差を付けて勝利を収めた。
「噂では、Aランクのドラゴンを討伐したと聞いたが、どんなドラゴンを討伐したんだ?」
「Bランクのドラゴンに関しては、本当に色んな属性のドラゴンを討伐しましたね。Aランクドラゴンに関しては灼熱竜という個体と戦いました」
「灼熱竜だったか。Aランクの中でも好戦的なドラゴンと聞いているが、実際のところどうだった」
「その通りでしたね。正直、普通に冷や汗かいたり、物凄く焦りを感じる場面もありましたし」
特に隠すことでもないため、アラッドは灼熱竜との戦闘に関して事細かく話した。
(誤情報だとは思っていなかったが、やはり本当だったか……しかし、話を聞く限り……灼熱竜との戦闘で怪我を負わなかったみたいだな)
灼熱竜がどれほど強いのか、ブレスの強さは、爪撃の範囲は、反応速度は……ソウスケは本当に細かく教えてくれた。
だが、その分析の中に、実際食らって感じた強さというのはなかった。
つまり、ソウスケはAランクドラゴンという怪物と戦いながら、傷一つ負わずに勝利を収めたということになる。
その事実に多少の驚きを感じるものの、バラスタはソウスケならばやってのけるだろうという思いがあり、そこに関して疑うことはなった。
「そういえば、バラスタさんが所属してるクラン、深紅では赤龍をどうこうしようという話は出てないんですか?」
「その話か…………一部の者たちは、せっかくのチャンスだと、討伐すべきだと声を上げる者はいる」
「……バラスタさんとしては、反対なんですね」
表情から見破られてしまったことに、バラスタは苦笑いを浮かべながら答える。
「あぁ、そうだな……俺は、深紅だけで赤龍に挑むことは反対だ」
「……もしかしたらですが、バラスタさんはかつて龍と対峙したことがあるのですか?」
「あぁ……もうかなり昔の話だが、まだ俺がドラゴニックバレーに入れるようになったばかりの頃にな。ただ、対峙したわけではなく、離れた場所から眺めたことがあるだけだ」
バラスタも、同世代の者たちの中では、一歩先を行く有望株だった。
ジブラと同じく、若くしてドラゴニックバレーに足を踏み入れることが出来た。
その際に……見てしまった。
本当に離れていた……遠く、遠い場所で戦っていたため、肉眼でも薄っすらとしか見えなかった。
その龍と戦っていたのは、バラスタが所属している深紅ではなかった。
だが、レイウルの中でもトップクラスのクランが戦っていた。
「本当に距離が離れたいたからこそ、その戦いに巻き込まれることも、狙われることもなかった……にもかかわらず、心底震えたよ」
当然、それは武者震いからくる震えではなく、恐怖心からくる震えだった。
有望株だったバラスタとはいえ、そこに辿り着くまで何度も恐怖を感じたことがある。
だが……その時感じた恐怖心は、これまで感じてきた恐怖が、本当は恐怖とはいえない程度の恐れだったのではないかと錯覚するほど、バラスタの心に……魂に刻まれた。
「本当に討伐するなら、トップクラスのクランの実力者を集めて挑むべきだ。それが一番被害を最小限に抑え、討伐出来る」
まぁ、多分無理だけどな、と口にしながらバラスタはリザードのステーキを口に運んだ。
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