転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千九十八話 やっぱり……

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(赤龍、か)

今、ソウスケはまだまだ余っているBランクドラゴンの素材を使い、短刀を造っていた。

だが……製作中に頭の中に思い浮かぶは、ここ最近レイウルの冒険者たちの間でホットな話題となっているAランクドラゴン、赤龍の存在。

今のところ、ソウスケは自分たちから赤龍を討伐しようとするつもりはない。
ただ、何処に行ってもその話を耳にするため、どうしても頭の中に残ってしまう。

それは、武器を造る上で邪魔な考えになるのではないかと思われるかもしれないが……ソウスケの場合は違った。

(こいつなら、どうなるだろうな)

これまで色々と話を聞いた限り、赤龍は以前ソウスケが単独で討伐したAランクドラゴン、灼熱竜よりも強い。
であれば……そんな凡人を戦わずして屍に変えそうな怪物との戦いでも通じる得物にしたい。
そんな思いを燃え滾らせながら、鎚を振るう。

堅いであろう鱗を裂き、強靭であろう剛爪を逸らせるだけの短刀を……その一心で制作作業を続けていく。

「……ふ、ふふふ。悪く、ないかな」

出来上がった風属性の短刀のランクは五。

Bランクモンスターの素材を使えば、もう一つ上のランクの武器が出来上がることもある。
だが……ソウスケは目の前の風刀の出来に、心底満足していた。

「これは、短刀か」

「そうだよ」

「………………いつも以上に、鋭さと強靭さが同居しているな」

「ふふ。そう言ってくれると、自信を持てるよ」

ザハークの感想に嬉しそうな笑みを浮かべながら、ソウスケもザハークが先程完成させた雷槍に目を向ける。

「……ザハークの槍も良いね、盾も鱗も貫いて、薙いでぶっ叩いても大丈夫な安心感があるね」

「そうか…………ソウスケさんは、この短刀……どういう意図で、造ったんだ」

「どういう意図? ん~~~~……あれだね。まだ実際に見たことはないけど、赤龍にも通じるように、かな」

倒す気はない。
そう言いながらも意識はしていると公言したため、少し恥ずかしさを感じるソウスケ。

だが、実際のところザハークも同じことを考えていた。

「奇遇だな。俺も、強い強いと、とんでもなく強いと言われている龍に、どうすれば通じるかと……そういった事を考えながら造った」

「……はっはっは!!! そうだったんだね……正直な話、ちょっとは意識し続けてるんだよね」

先程ぶっちゃけたこともあり、ソウスケは赤龍に対する実際の気持ちを零した。

「そうだろうな。ソウスケさん程の強さがあれば、意識して当然だと思うが」

「そうか?」

「あぁ。ソウスケさんであれば、使える者を全て使えば、赤龍を討伐出来る……ぞの自信があるのだろ」

ザハークの言葉をもう少し細かく読み解くと、ソウスケは一人で赤龍を討伐出来る自信があると考えていた。

「……全部を使えば、な」

今二人が行っている会話を同業者たちが聞けば、大半の者が爆笑する。
そして、一部の者たちは……何を嘗めたことを言っているのだと、怒りを抱く。

それほどまでに、龍を一人で討伐するのは困難を極める。

レイウルで活動する上位の冒険者たちの中には、龍を討伐してこそ真のドラゴンスレイヤーだと語る者もいる。

「だからこそ、意識してしまうのが当然だと俺は思う」

「なるほどな……ん~~~~、でも自分からどうこうしようと思わないって気持ちも、嘘じゃないんだよな」

「解っている。ソウスケさんは、あの……あの女性冒険者のベルダだったか。あぁいった冒険者に絡まれるのが面倒なのであろう」

「ま、まぁそういう気持ちもある」

復讐対象を横取りするのは良くないという気持ちと、もしうっかり殺ってしまった場合に発生するめんどう臭い事態だけはどうにかして回避したい。

「俺はそれで良いと思っている。俺は人間ではないが、ソウスケさんやミレアナといった仲間はいる」

だからこそ、復讐したい者の気持ちも理解出来る。

そんなザハークの気持ちを聞けて、ソウスケは思わず笑みが零れた。
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