転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百話 非礼を認める

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「…………」

「ソウスケさん、どうかしま…………なるほど」

何故、急にソウスケが足を止め、ある方向に視線を向けているのか、ミレアナは直ぐに把握。

「二人共、どうかしたか?」

「耳をすませば、一際大きな戦闘音が聞こえますよ」

「ふむ………………なるほど。確かに聞こえるな。だが、予想以上に……闘争心がこみ上げてくる声も、するな」

具体的には、Bランクドラゴン以上の戦闘力を持っているであろうモンスターの声。

三人は速足で……しかし、なるべく足音や気配を隠しながら戦闘が観える場所へと向かった。

「……っ…………なる、ほど。あれが……赤龍、か」

ドラゴンにも、冒険者たちにも気付かれないであろう場所でストップ。
視線の先には一体の大きなドラゴンと、多数の実力派の冒険者たちがいた。

そんな中、アラッドは冒険者たちと戦っているドラゴンが、わざわざ視ずとも噂の赤龍であると、確信した。

「あれが……なるほど。大手クランの上位メンバーを殺すだけの存在だと、良く解りますね」

赤龍は、灼熱竜などと同じく、火竜に分類されるドラゴン。
赤龍が放ったであろう日のブレスや、地面や岩柱に着弾すれば、即座に消えることはなく水魔法が使える魔法使いがわざわざ消さなければ、消えずに燃え続ける。

(非常に温度が高い……っていう訳じゃあ、ないのかな? そういう性質の炎、って可能性もあるか)

ドラゴニックバレーは、ダンジョンではない。

ダンジョン探索を行うのであれば、事前に冒険者ギルドが有している情報を購入すれば、生息しているモンスターの情報なども解る。
だが、ソウスケたちはダンジョンではないということで、ドラゴニックバレーの情報をわざわざ購入してはいない。

「……あれは、蒼天というクランか?」

「さぁ、どうでしょうか。私もクランに関してはあまり詳しくないので」

「そうか…………赤龍から発せられる圧や攻撃力、火力を考えれば数十秒も経てば人数が減ると思っていたが、意外にも減らないな」

ザハークから視て、赤龍は自身が本気を出して戦うに値る真の強敵だと認識していた。
そんなAランクドラゴンと互角に戦っている者たちがいる。

「ザハーク、あなたは人間を……というより、他の冒険者たちの事を嘗め過ぎよ」

「ふむ………………そうだな。非礼だったと、認めるしかないな」

現在赤龍と戦っているのは、ザハークの言う通り大手クランであり、先日赤龍に上位メンバーを殺された蒼天。

結果、彼らは自分たちだけで討伐することを決めた。
当然ながら、龍という強大過ぎる存在と戦うのが、どれほどの対価を支払わなければならないのか理解している。

この先、クランの経営がしばらく火の車になる。
今後のことを考えれば、赤龍の素材を全て売却することは敵わないため、今後更に活動を頑張らなければならない。

そして……なにより、クランの金を奮発して放出し、万全の状態で赤龍に挑んだとしても……絶対に死なないという
保証はない。
それでも、彼らはギリギリ赤龍との戦いで動ける、役立つ人材を選別し、赤龍戦に臨んだ。

「……ソウスケさんは、どう見る」

「そうだね…………今のところ、あの同業者たちの方が、僅かに有利かな。まだ、全力を出してるわけじゃなさそうだし」

「赤龍が本気を出した時のために、温存しているということか?」

「……単純に、本当に攻撃を当てられる、狙いたい時に狙える時しか、切り札といえる攻撃を放たないようにしてるんじゃないかな」

蒼天のメンバーたちは、万全の準備を期して赤龍戦に臨んだ。

だが、傷も癒せて魔力を回復出来るとしても、無駄に消費はしたくない。

「復讐の標的を目の前にしても、冷静に戦えているということか」

「彼等もプロでしょう……Aランクという怪物の強さを、龍という存在に関しては私たちよりも詳しい筈です」

じっと……冷静に赤龍対クラン蒼天の戦いを眺める三人。
だが、それを許してくれるほど、ドラゴニックバレーという場所は甘くなかった。
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