転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百二話 そういう存在だから

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「お疲れ様。それで、さっきの戦いで俺が一応ちゃんと強いってのは解ってくれたかな」

「えぇ、勿論です」

あれほど自分たちの攻撃を完全に防がれては、彼らとしても反論する言葉はない。

倒されてはいない?
確かにソウスケはノックスたちを倒そうと、戦闘不能にしようとはしなかった。

ただ、それに関してはソウスケがそれをする必要がないと判断しただけの話。
あの強さで攻撃に転じられてしまえば、瞬く間に潰されてしまう事は、彼らも理解していた。

「あなたは、紛れもなく僕たちの臨時教師です」

「そうか。そう言ってもらえると嬉しい。ただ……うん、そうだね。先に言っておこう。俺がここまで強いのは、ただ運が良かっただけなんだ」

ソウスケの言葉に対し、色々と質問したい事があるハリアルたち。
しかし、今はひとまずソウスケが言い終えるのを待つ。

「それなりに激闘は越えてきたと思うけど……君たちが考えるほど、壮絶な人生を送ってきて今に至る、とかは違う。だから、そう…………上から目線の言葉になってしまうけど、俺という存在に対して、深く考える必要はない」

非常に悪い方向的な意味で捉えられそうではあるが……彼らはソウスケが嘘を言ってないであろうことが、なんとなく解っていた。

(まぁ……あれか。ぶっちゃけ、意味不明な存在っちゃそういう存在か)

色々と思うところがあり、七人の中では一番短気なジャバだが、先程の模擬戦で自分たちの攻撃が全く……本当に全くと言って良いほど通用しなかったのを思い出し、ソウスケという臨時教師が言いたい事が、なんとなく理解出来る。

「隣のミレアナさんとか、強い従魔のお陰とかじゃなく、強くなったってことですよね」

「ん~~~、正直なところ強い相手と対峙した時、ミレアナやザハークといった強い仲間がいるからこそ、変に緊張せず思いっきり強敵に挑めたというところはあるかな」

その件に関しては、虎人族の女子生徒、ナディーもよく解る。

頼れる仲間が傍にいるといないとでは、戦闘中に深く踏み込める幅が変わってくる。

「それじゃあ、さっきの模擬戦である程度君たちの強さが解ったから、今後の予定を伝えるね」

今後の予定。

否が応でもソウスケの強さ、ただ強い仲間に恵まれただけではないという事が解った。
そのため、生徒たちの間にピリッといた緊張感が走る。

「一日か二日、ドラゴニックバレーの前で体を慣らした後、ドラゴニックバレーで活動しようと思ってる」

「「「「「「「っ!!!!」」」」」」」

もしかしたら、とは思っていた。
いずれ挑むであろう場所に、今回一足先に挑めるのではないかと。

だが、学生たちが思っていたより、その時期が早かった。

「二日後か、三日後には入る、という事ですか」

「うん、そう考えてる。だって、君たちは……多分だけど、既にリザードとかリザードマン、ワイバーンは討伐してるよね」

ソウスケの言葉に、ノックスたちは小さく頷いた。

ギリギリの超ギリギリの戦いの末、ようやく勝つことが出来た……という訳ではない。
勿論、楽な戦いでもなく、全員が既に一人で絶対に勝てるという程ではない。

ただ、ソウスケの想像通り、既にその三種のモンスターとの戦いに関して、彼らは何度も乗り越えていた。

「だから、そいつらで体を動かした後に、直ぐにBランクドラゴンたちがうようよいるドラゴニックバレーに入って、先に色々と経験しておいた方が良いでしょ。それにほら、まだ出会ったばかりだけど、戦いに関しては一応頼れる人が傍にいれば、面倒なことは気にせず戦えるでしょ」

「「「っ」」」

「あっ、どうせならミレアナと、外で待ってるザハークとも一戦やってみとく?」

「………………お願いしても、良いですか」

代表であるノックスの言葉に、ミレアナは小さくを笑みを浮かべながら了承。

彼らには既に疑いの欠片もなく、ただこれから自分たちの臨時教師になる者の強さを知りたい、体験したいという気持ちのみ。

ザハークも学生たちの気構えを察し、了承。

再び訓練場に移動した後……約五分前と似た様な光景が再生されることとなった。
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