転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百十九話 もし漏れれば

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「ソウスケさん。ドラゴンを逆鱗状態にする方法などはあるか」

「………………」

二体の風竜との戦闘が終わってから約一時間後、現在ノックスたちは土竜と戦闘中。

火竜や風竜と比べってスピードは遅いため、七人の攻撃はよく当たっている。
だが、頑強さは二体よりも間違いなく上。
そのため、中々戦況を動かすダメージを与えられず……逆に一発で戦況をひっくり返されるかもしれない攻撃を警戒しながら戦っていた。

そんな中、ザハークは一切躊躇うことなく、ドラゴンを逆鱗状態にする方法はないかと……頭イカれてんのかとツッコまれる内容の質問を主に問うた。

「ザハーク、あなた何を質問してるのか解ってるの?」

「ドラゴンを逆鱗状態にさせる方法に関してだ」

「………………」

問うた内容をそのまま答えるザハークを見て、ミレアナはやや呆れた表情を浮かべた。

知性のあるモンスターらしく、時折とても理に適った事を口にするザハークだが、今は完全に脳が筋肉と戦闘欲に支配されていた。

「ソウスケさんなら、何か解るのではないか?」

「……はぁ~~~~~。ドラゴンを逆鱗状態にする方法、ねぇ…………ん~~~~~~~~~~~」

従魔からの、仲間からの質問ということもあり、一応その方法はあるのかと考える。

しかし、パッとこれといった内容は思い浮かばない。

「逆鱗状態は、ただ怒っているだけじゃないからな。挑発すれば良いって簡単な話ではないと思う」

「であれば、先程の風竜のように同族を殺された時か?」

「それはどうだろう。ドラゴンとドラゴンと親愛や絆、友情といった感情がないとは思わないけど、それがトリガー
になる可能性は低いと思う」

「むぅ……では、確定的な要因はないと」

「そうだね。あまりにも情報が足りな過ぎるというのはあるけど、個人的にただ怒ってるのと、逆鱗状態になるのは
訳が違うから、ただ怒らせれば良いっていうのは断言出来るかな」

「そうか」

具体的な内容は知れなかった。
それでも、ザハークとしては有意義な情報であった。

「ザハーク。あなた、本当にその方法に関して一定以上の可能性で実行出来る内容を思い付いても、他人に伝えてはなりませんよ」

「どうしてだ?」

「実力が足りない者が実行して大きな被害が出る。他にも、それを利用して潰したい村や街にけしかける者が現れるかもしれません」

「……なるほど。それは知られると良くないな…………今、土竜と戦っているあいつらにもか」

「………………そうですね。彼らにも教えない方がよろしいでしょう」

まだ出会ってから一か月も経っていないことを考えれば、立場も違うためせいぜい知人という関係性。

ネイトたちからすれば、是非ともレポートに記したい内容ではあるが、その内容がどこから誰に伝わるか解らない。
レイヤーズ学園から零れることはなくとも、レイヤーズ学園を卒業した者が悪の道に染まる可能性も否定出来ない。

(ソウスケさんがパッと思い付かないとなれば、そう簡単に他の者たちが思い付くことはないでしょう。後は……ソウスケさんがポロっと思い付いてしまった時、それをつい零してしまわないか)

ミレアナはソウスケのことを尊敬している。
敬意を持っているが、一欠片も欠点がないほど完璧な人間だとは思っていない。

(ドラゴンを逆鱗状態にする方法、か…………怒りが、殺意に変わる? 我を忘れる? それとも……単純な怒りや殺意以外の感情が混ざる?)

ソウスケもミレアナと同じく、もしその情報が悪人に伝わったらどうするんだという思いはあるものの、興味深い内容ではあるため、つい考えこみ始めてしまった。

(そういった感情をドラゴンに持たせるためには……さっきそんな簡単じゃないって言ったけど、やっぱり挑発? でもただの挑発じゃ…………感情を抉る挑発?)

どっぷり考え込んでしまうソウスケだが、きっちり周囲の警戒は続けていた。
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