転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
1,207 / 1,259

千百三十一話 道をつくる

しおりを挟む
「はぁ、はぁ」

「クソがっ!!」

「くっ!!!!」

「「ギィィィアアアアアアアアアアッッ!!!!!!」」

二つの頭を持つ火竜に、ノックスたちは苦戦を強いられていた。

先日、火竜に風竜、土竜、キングワイバーンなどのBランクドラゴンの討伐に成功。
ノックスたちは……間違いなく、自分たちの力だけで、Bランクドラゴンを倒した。

ただ、七人とも数度Bランクドラゴンを討伐したからといって、今後遭遇する全てのBランクドラゴンを討伐出来ると思うほど自惚れてはいない。

(頭が一つ、増えるだけで……これほど、強さが増すとはっ!!!)

ハリアルは双頭の火竜に直接ダメージを与えるのを諦め、羽や顔面、ブレスを吐く際などを狙って攻撃を行う。
メインアタッカーとして戦うというプライドを捨て、直ぐに動きを切り替えたのは見事と言えるだろう。

しかし……それでもこれまで程上手くドラゴンの動きを制限できない。

「ガァアアアアアアッ!!!!!」

「っ!! 本当に、咄嗟に気付きますわね」

自身は付けど、馬鹿正直に真正面から挑むことはなく、基本的には相手の虚を突くように動き、攻撃を行うネイトたち。

しかし、片方の頭に攻撃しようとすれば、もう片方の頭が補完。
それが繰り返されるため、中々頭部や口の中に攻撃がヒットしない。

では、二つの頭……両方に向けて攻撃を行い、ワンテンポずらして別の場所に攻撃したらどうか。

「「っ!!!!!」」

「っ!? くっそ~~~~~!!! 本当にふざけた堅さしてるな!!!」

魔槍に水流を纏い、渾身の水刺を腹に向けて放つが、今日に轟炎を纏った尾に弾かれてしまった。

水と火という相性もあり、全くのノーダメージではなかったものの、戦況を変える切っ掛けとなるほどの傷は与えられていない。

「っ!!! ふぅーーー……ナイト、どうしますの」

少しでもダメージを与えようと、普段以上の旋風を纏った矢を放つも、ギリギリのところで躱されてしまう。

確実にダメージを与えるとなれば、それ相応の魔力を消費しなければならない。
当然ながら、彼女たちが有する魔力は無限ではない。
そのため、アスレアとネイトもいつまでも後方支援が出来る訳ではない。

(頭が二つある。これまで通りの虚を突く形では、ダメージが殆ど通らない。尾を使うのが、上手い。翼も……同じく器用に使うかもしれない)

後衛は、戦場での位置的に指揮官を兼任することがある。
ハリアルやアスレアも出来なくはないが、七人で行動する際はネイトがそれを担っている。

(早く、答えを出さなければ、ジャバたちの体力が…………っ!!!!)

Bランクモンスターと、Bランクドラゴンと戦うのは今回が初めてではない。

だからこそ、これまで学友たちと……仲間たちと乗り越えてきた経験を思い出す。

「ノ「ネイトっ!!」っ!!??」

何かを思い付いたネイトはノックスを呼ぼうとしたが、その前に彼がネイトの元を訪れた。

「僕たちは、これから防御を捨てる」

「っ!!!! ……ふっ、ふふふ……ノックス。私は今、あなたと同じ事を考えてましたわ」

「君にしては珍しいね」

「それほどの相手であるのは間違いない。そして……やはり頼りたくないだけです」

「同感だよ。そういう訳だから、アスレアも頼むよ」

「えぇ、解りましたわ」

防御を捨てる。
それは、文字通りの言葉である。

前衛であるノックス、ジャバ、ハリアル、ナディー、ヨルカ、全員が妨害などのサポート、防御を切り捨て……ただ、渾身の一撃を叩き込むことだけに集中する。

(魔力を使い果たしても、やり切る!!!!)

(全てを……全てを見極めるのよ)

そして、双頭の火竜が前衛たちを潰そうとする動きに対し、後衛のアスレアとネイトが全力でサポートし、渾身の一撃を叩き込む為の道をつくる。

全員が、ここを分水嶺だと判断し……今日の戦いが、ここで終わっても良いと、覚悟の炎を燃やす。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...