転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百五十一話 スイッチ、オン

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「おい……狩りは終わりだ」

「………………」

ソウスケが放たれる戦意、殺意に……水龍は恐怖を感じることはなかった。

ただ……元々狙っていた獲物たちは、逃がしても構わないと思わせるだけの存在感を感じた。

「人間、そこまで威勢良く吠えるのは構わないが、そこまでして生き恥を晒したいのか」

「人間じゃないのに、随分と人間の言葉が達者だな。もしかして、人間が好きなのか?」

わざとらしく首を傾げるソウスケに対し、ソウスケは有無を言わず再度水槍を放つも、同じ数の風槍によって相殺される。

「答えずに攻撃するって、もしかして図星? だとしたら、ツンデレなのか」

「何を訳の解らないことを言っている」

この世界にツンデレという言葉はない。
そのため、本当に何を言っているのか理解出来ない……理解出来ないが、目の前に小さな人間が自身のことを小バカにしていることは解る。

水槍が水激槍に変わり、鋭さに重きを置いた水刃まで放たれる。
だが、ソウスケは全て風魔法で対応し、今回も完全相殺。

「ツンデレなドラゴン……需要があるのかもしれないけど、個人的に普段からそんな感じで高圧的な態度を取ってるってなると、ツンデレだったとしてもあまり惹かれないんだよな~~~」

「いったい、何の話をしているっっっ!!!!!」

何を言ってるのか、やはり解らない。
ただ、今回もツンデレという訳の解らない言葉を使い、小バカにしていることだけは解る。

水龍は多数の水攻撃魔法を放つだけではなく、ブレスまで放った。

「っっ!!!!! 龍なのに、随分と短気なんだな。いや、モンスターの中でも特に暴力的で高圧的な存在だからこそ、か」

「………………」

溜めは決して長くなかった。
それでも、自身が放ったブレスをあっさりと切断……それでいて、迫る水魔法にも対処し続ける姿に、水龍は目の前の人間の姿に違和感を抱いた。

(この男は、見た目通り人族なのか?)

既に多くの攻撃魔法を放っている。
水龍がこれまでに放った攻撃魔法を全て相殺するとなると、それ相応の魔力量が必要になる。

だが、ソウスケは実際に全て相殺しながらも、疲労している様子は皆無。
魔力量も大して減っていないのが現実。

水龍の記憶では、あれほどの魔力量を有しているのはエルフや一部の獣人族や竜人族。
人族の中にも魔法に特化した者であれば納得出来るものの、目の前の人間は全力ではないとはいえブレスを炎槍で切断できるだけの物理的力量を有している。

「人間、お前はなんだ」

「随分と抽象的な質問だな。竜じゃなく龍だからもっと知性があるのかと思ってたけど、人の言葉を喋れるだけで、知性はあまり感じられないな」

変なスイッチが入ってしまったからか、煽りモードに突入したソウスケ。
これでもかという程煽り言葉が止まらない。

「語らぬなら、殺すまでだ」

本当に人族なのか気になった。
ただそれだけの話であるため、割と煽りが効いてしまってイライラが溜まっている水龍。

答えぬならば、殺すのみ。
尾に水を纏い……振るった。

尾から放たれた水斬波は水魔法、ウォーターカッターを改良した水刃の何倍も鋭く、並のタンクが何人揃おうと豆腐の様に斬り裂いてしまう。

「シッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」

並みの冒険者ではなくとも、放たれた水斬波を見ただけで、自身がこれから死ぬのだと……切断されて体から崩れ落ちる光景が脳内に思い浮かぶ。

しかし、ソウスケは複数の強化系スキルを発動し、タイミングを間違えることなく、特大の水斬波をレヴァルグで粉砕した。

「っっっっ……まさか、これで終わりですか? もしかして最強の一撃? 答えぬなら殺してやろう気分で、放った瞬間に帰ろうとしてましたか? だとしたら、龍と呼ばれる者たちの中にも色々と差があるのかもしれませんね」

相変わらず回る回る。

ただ……特大水斬波を粉砕したソウスケの両腕はやや痺れていた。
口では平然を装っているが、決して……当たり前だが、温い一撃ではなかった。

「人間が……そこまでして苦しみながら死にたいか」

「いいや、全く。あっ、安心してくださいよ。俺はあなたの素材が欲しいですけど、苦しませず殺してから解体しますので」

もう、両者の間にそれ以上の言葉は必要なかった。
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