転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百五十三話 本能で見下す

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「……ザハーク、邪魔は入ると思いますか」

「邪魔? …………ソウスケさんだけでも十分戦えているのに、邪魔をしようと考えるか?」

まだ本格的には始まっていないものの、ソウスケはソロで水龍と渡り合えている。
現段階で手助けをしようとするのは、獲物を横取りしようとする邪魔な行動としか思えない。

「あまり詳しくは知らないが、ソウスケさんは他の冒険者たちともそれなりに上手くやれてるのだろう」

「えぇ、そうですね。実際に関わった者たちの中では……ジブラという人物の様な方の方が珍しいでしょう」

「それなら、あまり心配しなくても良いのですか?」

「そちらではなく、ドラゴンたちの方です」

「……あぁ、なるほど。そちらか……………………さぁ、どうなのだろうな」

ザハークもモンスターではあるが、ドラゴンではない。
そのため、ミレアナの質問に対してある程度こうじゃないか、と思える答えはなかった。

「あなたでも、解りませんか」

「あぁ。ミレアナは、他のドラゴンたちが加勢するんじゃないかと思っている訳か」

「可能性の一つとして、あり得なくはないでしょう」

「ふむ…………おい、お前ら」

「は、はい!」

急に声を掛けられ、びくりと体を震わせるノックスたち。

「学園での……授業とやらで、そういった事は教わらないのか」

「わ、ワイバーンに関しては、個で戦わないケースは珍しくないかと。ただ、属性持ちのBランク以上のドラゴンになると……同種の固体でもない限り、あまりそういった例は確認されていないようです」

「そうか……」

ネイトからの説明を聞き、一応納得は出来るザハークとミレアナ。
ただ、水龍はそこら辺の属性ドラゴンとは訳が違う個体。

「……ミレアナは、あの水龍が……一部のドラゴンたちにとっては、王と捉えられているのではないか、と思っているのだな」

「その通りです。竜よりも上の存在、龍。下の竜からすれば、本能的に助けようとするものではないかと」

「…………あり得ない話ではない、のか?」

「……考えられない、例ではないかと」

ザハークからの振りに答えたのはノックスであった。

「一部のドラゴンたちは、人間という存在を完全に見下しています」

「ドラゴンたちが持つ力、暴力性を考えれば、寧ろそれが当たり前なのかもしれませんね」

「ミレアナさんの言う通りかと。そして、そういった考えを持つからこそ、龍という存在が人間に討たれるという事は、自分たちも同時に負けたのだと……生きてはいるが、負けたことに変わりないのではないと……判断するかもしれません」

「見下すという感覚が染みついているからこその判断、ですか」

なんとも傲慢が考え。

だが、ミレアナは今しがた言葉にした通り、ドラゴンという存在は……大抵はそういった存在であると解っていた。

(であれば、やはり……)

感知が居ないのであればと、魔力を消費して感知範囲を広げる。

「…………どうやら、何体か見ているようですね」

「なっ!? ほ、本当ですか」

「えぇ。水竜かどうかは解りませんが、人間ではなくドラゴンがソウスケさんと水龍との戦いを見ています」

「……どうする。今のうちに潰しておくか?」

ただただ、潰して殺す。
それだけであれば、時間を掛けずに討伐することが可能であるザハーク。

「………………今は、放置しておきましょう」

「そうか……まぁ、ミレアナがそう言うのなら構わない」

ザハークは自分がリーダー寄りの、長の様な素質があるとは思っていない。
だからこそ、リーダーであるソウスケがいない今、判断はミレアナに任せる。

「だが、本当に放置しておいていいのか?」

「まだ確定はしていません。下手な動きを見せれば頼みますが、そうでない場合はこの場から動かない方が良いでしょう……どのタイミングで、イレギュラーが起こるか解りませんので」

「……解った」

相変わらず自身の実力を過小評価してると思いつつも、ザハークは告げることなく離れた場所から見ているドラゴンたちの動向に意識を向けた。
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