転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十話 入らない

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水龍の、討伐。
この報告を受けた冒険者ギルドは……嬉しかった。
非常に……非常に、嬉しかった。

先日、クラン蒼天が赤龍を討伐することに成功したが、決して犠牲は少なくなかった。
生き残ったメンバーの証言からも、とある冒険者たちが対応してくれなければ逃がしてしまっていた可能性があるため……仮に逃がしてしまった場合、ドラゴニックバレー以外の場所に龍が向かってしまうという最悪の事態を迎えてしまう。

そのため、冒険者ギルドはソウスケから水龍の討伐報告を聞き、全員がガッツポーズを浮かべた。

その後、ソウスケは当然のように龍の解体を頼み、ギルドもそれを快く受け入れる。
ただ、ギルドはあまりにもテンションが上がり過ぎていて、あることを忘れていた。

それは……ギルドが有している解体倉庫では、中に水龍の体が入りきらないこと。

「……ヤバそうな感じ、ですかね」

「そ、そうですね……や、ヤバいかもしれません」

まず、ソウスケは水龍の頭を取り出した。
受付嬢、解体士たちから感嘆の声が零れる中……一人の解体師が、ポツリと零した。

頭がこれだけ大きいと、胴体が入りきれないんじゃないか? と。

ドラゴニックバレーが最寄りにあるということで、冒険者ギルドはドラゴンの死体が運ばれてきても問題無いように、解体倉庫を非常に大きく造っていた。

だが、それほど大きな解体倉庫でも、水龍の死体は入らない。
つい最近赤龍の死体でも同じようなやり取りがあったのだが、赤龍の時以上に冒険者たちに……最悪の場合、外に出て更に大きな被害を生み出すかもしれないと予想していた存在が倒されたということもあり、冒険者ギルドはすっかり忘れていた。

「では、街の外で解体いたしましょう」

倉庫ではなく、街の外での解体。

平和な場所ではなく、モンスターが襲撃される可能性もあるが……そこはレイウルの冒険者ギルド。
元冒険者の受付嬢、男性職員が他のギルドに比べて多く、現役冒険者たちに頼らずともモンスターの襲撃に備えることは出来る。

「そうですね。よろしくお願いします」

幸いにも人手は足りているため、直ぐに適当な場所へ移動。

水龍の頭部、胴体部を取り出し、早速解体スタート。
とはいえ、最初に行わなければならない血抜きに関しては、ミレアナの水の魔力操作の応用で行う血抜きが一番手っ取り早いため、そこだけはミレアナが担当する。

「「「「「「「………………」」」」」」」

解体が始まってから……というより、水龍の死体を取り出されてから、ノックスたちは完全に固まってしまっていた。

ドラゴンの死体は見たことがある。
なんなら、ソウスケたちの臨時教え子になってから何度も見るようになった。

学園の解体授業でもBランクドラゴンの死体を見ており、まだ学生でありながら……ジャバたちにとって、ドラゴンの死体というのは、既に見慣れつつある物だった。

だが……水龍の死体は大きさも存在感も、全てがこれまで見てきたドラゴンの死体と違うと感じさせられた。

(これが、竜を越えた……龍)

(超でけぇのは、なんとなく解ってたけどよぉ…………こんなにも、でけぇのか)

(これほどまでに大きく、圧倒的な……死してなお強烈な存在感を放つ存在を一人で…………本当に凄まじい方だ)

(…………無茶なのは、解ってる。でも、いつこういったドラゴンが、民間人に危害を加えるか解らない……早く、龍とまではいかずとも、Aランクのドラゴンを倒せるように、なりたい)

ネイトの考えは、本人も理解している通り、中々に無茶で生意気な考えと捉えられてもおかしくない。

最近、ようやく仲間たちと共にBランクドラゴンを討伐出来るようになったものの、決して楽に……安全に倒せるようになったわけではない。

毎回毎回死の危機を感じており、現段階ではAランクドラゴンを倒そうなど、夢のまた夢。

それは、ネイト自身も理解している。
理解した上で……それでも、早く上へ駆け登ろうという思いが湧き上がる。

そして、その思いは確実に仲間たちに伝播していた。
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