転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十一話 甘えられない

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(なんとも……壮観、だな)

ソウスケは冒険者ギルドの解体士たちが水龍を解体する光景をずっと眺めていた。

血だけはミレアナが対応した方が早いため、彼女が手伝い、大量の瓶に血を移動。
そこからは全て解体士が集中力を最大限にまで高め、解体に取り掛かる。

普段から力を抜いていた訳ではない。
ただ、解体するモンスターがモンスターで、剥ぎ取る素材が素材であるため、普段以上に傷付けてはならない、丁寧な仕事をしなければならないというプレッシャーが圧し掛かる。

そのため、今回の解体は……全員がベテラン以上の解体士たちが取り組んでいる。

本音を言うと、若手にもこういった緊張感、プレッシャーを乗り越える経験をしてほしいという気持ちはある。
しかし、ただのAランクドラゴンではなく、龍となると……まだ、若手たちではプレッシャーに押しつぶされてしまう可能性の方が高い。

ソウスケは……脳や心臓といった素材の中でも超超超超超超超貴重な素材を潰されれば、髪の毛が逆立ってしまうものの、鱗の一つや二つ、多少傷か付いたぐらいで怒鳴り散らし、「どう責任取るつもりだ!!! あぁん!!!」と、詰め寄るつもりもない。

もう何度も冒険者ギルドに解体を頼んでおり、直接の会話は多くないものの、ソウスケがその様なタイプの人間ではないことは理解していた。

だが、そういった人の優しさに寄り掛かり、無意識であっても手を抜いてしまうのは恥ずべき行為。

といった感じでやる気も高まっており、解体は順調に進んでいく。

「あの、ソウスケさん。少しよろしいでしょうか」

「? はい、なんですか」

「水龍と……その、お一人で戦ったと聞きました」

「あ………………そ、そうですね」

今更誤魔化しようがない。

ミレアナとザハークも嬉しそうに頷いており、逃げ場はないため、正直に答えるしかない。

「いったいどの様にして水龍を討伐したのか、お聞きしてもよろしいでしょうか」

「それは構いませんけど……正直なところ、武器やマジックアイテムの性能に頼ったから、というのが一番大きいんですよ」

ここに来て謙虚を貫き通す、という訳ではない。

あれよこれ、ほいほいほいと水龍を挑発していたソウスケだが、水龍の強さが本物であることは十二分に理解している。

だからこそ、ソロで水龍を討伐出来たのは本当に超優秀な武器、マジックアイテムたちのお陰だと思っていた。

「そ、そうです、か……で、では、使用した武器のどういった効果に助けられたでしょうか」

そんな訳ないでしょ!!!!! とは受付嬢も言えない。

しかし、少しでも今後龍に立ち向かわなければならない人たちに有益な情報を残したいため、なんとか聞き出そうと必死である。

「助けられた効果…………ってなると、槍のぶん投げても戻ってくる帰還の効果ですね。水龍のブレスが中々止まらなくて、ズバッと貫けたり切断することは出来なかったんですけど、威力がある槍を何度でもぶん投げて対抗できるっていうのは、結構助かったかと」

「なるほど」

「後は……後は………………単純に、武器の強度に助けられたかと。乱暴に扱ってた訳じゃないですけど、水龍が放つ攻撃の威力を考えれば、欠けたり最悪破損してもおかしくないですから」

ソウスケも受付嬢の意図を察し、なんとか出せる内容を探る。

「武器の頑強さ……では、水龍の攻撃一番恐ろしかったのはなんでしょうか」

「ドラゴンらしく、ブレスでしたね。普通のブレスだけでも十分恐ろしかったんですけど、この水龍……途中で、範囲を狭めたんですよ」

「圧縮して、貫通力を上げたと」

ブレスを扱うモンスターにとっては一つの技術であり、受付嬢もその知識は頭に叩き込まれていた。

「直ぐに使ってこなかったのを考えると、その場で……初めて実行したと思います」

「ソウスケさんの強さが水龍に警告を伝えたのかもしれませんね」

「はは、かもしれませんね。ただ、警告は俺の方にも来ました。本能が体を動かしてくれなければ、絶対に貫かれていました」

水龍は多くの攻撃を繰り返したが、ソウスケが最も食らいたくない攻撃は、間違いなく圧縮した水のブレスであった。
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