転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十二話 やはり、ノー

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受付嬢の質問に対してソウスケがなんとか答えられる範囲で答えていく中、ザハークはふと思い出した光景を口にした。

「あの……自身を多い囲む様な特大の水球による防壁は、面倒かもしれないな」

「あぁ~~~~、あれの話か」

ザハークの言葉に、ソウスケは直ぐに何のことかを把握。

首を傾げる受付嬢に、水龍が展開した防御用の水牢に関して説明。

「そういった手段が……つまり、その牢を破ることが出来なければ、回復力が高ければ回復に集中して傷を癒し、逆に溜めが必要な攻撃の時間を稼ぐことも出来ると」

「俺としては、あの水牢の使い道はそうなのではないかと感じた。まぁ、ソウスケさんはあっさりと削ってしまったがな」

「あれも武器のお陰だけどな」

どういった武器なのか、受付嬢としては気になるところ。

だが……彼女の勘が告げる。
そこに関しては、質問してもおそらく答えてくれないだろうと。

(……訊くべきでは、ありませんね)

流れとしては、本当に偶々だった。

同業者が襲われているからこそ、本気で助けようとした。
そして……パーティーで、ではなくソロで討伐していた。

ギルドの方から若干頼んではいたが、討伐に至った切っ掛けは偶々……だが、冒険者ギルドとしては本当に感謝している。

だからこそ、下手に踏み込んだ質問をして、ソウスケたちとの関係を悪い方向へ持っていく訳にはいかない。

「…………個人的には、水龍が水だけではなく、多少なりとも氷まで操れるたのであれば、もう少しソウスケさんが苦戦したかもしれません」

負ける、とは言わない。

ただ、ミレアナは自分視点から分析した結果、水だけではなく氷まで操れていれば、攻略難易度が跳ね上がると思えた。

「氷を……なる、ほど」

水龍であるのに氷? と思われるかもしれないが、水を扱う一部のモンスターは応用で氷まで操れる個体がいる。

逆に氷属性のモンスターが水を扱う場合もあるため、水龍が水だけではなく氷まで扱える可能性は十分にあった。

(氷を使えたとなると、拘束力が高まるし……水牢が氷牢になってたら…………いや、そこはちょっと解らないな。でも、氷のブレスで氷漬けにされたら、一発アウトになるのか?)

どうなるか想像出来ない部分は多いものの、厄介な武器が増えることに間違いはなかった。

「氷か…………氷の鎧? とかを纏われたりしたら、ダメージを与えるのが面倒になるかもしれないですね」

「……もしかしてですが、水龍は水を体に纏う、ということはしていなかったのですか?」

「…………そういえば、してなかったような……魔力は纏っていたと思いますけど、自身の属性魔力は纏っていなかったような」

ちらりとパーティーメンバーたちに視線を向けると、ミレアナとザハークはこくりと頷いた。

「……で、出来なかった、というのでしょうか」

「そうなんですかね……多分、その必要がないと判断されてたのか……炎槍は使ってましたけど、炎の攻撃がメインじゃないので」

「ソウスケさんを甘く視ていた故に、その様な失策を取ったと」

「あくまで想像の域を出ませんけどね」

ブレスと同じく、これまで圧縮したブレスを放たなければならないほどの相手と出会ったことがないのかと一瞬考えたソウスケ。

だが、水龍が赤龍を討伐した蒼天のメンバーに恨みを持っていたことから、赤龍と何かしらの因縁を有していたことが解る。

(赤龍とライバル関係にあったとしたら、さすがに水を纏うって技術は必要になるだろうし……やっぱり俺を見下してたからか、本当に戦略的な意味で必要ないと判断してたのかもしれないな)

その後も水龍の解体が終わるまで問答は繰り返され、無事に終了。

「あの……素材に関してなのですが」

受付嬢は一応……一応、ソウスケたちに素材の売却を行う気はあるかと尋ねた。

その問いに対し、ソウスケは申し訳なさそうな表情を浮かべながら、ノーと答えるのだった。
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