転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十四話 どう動くか

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「…………」

「どうしたんだ、ノックス。もう食わねぇのか?」

ソウスケたちの臨時の教え子ということもあって、ノックスたちもただ飯を食べることができていた。

道中までは彼らもBランクドラゴンと戦ていたため、十分腹は減っている。
ジャバだけではなくハリアル、ナディーやヨルカもがっつり食べていた。

そんな中、普段からそれなりに食べるタイプであるノックスは一旦食事の手を止め、ある方向を眺めていた。

「いや、食べるよ。ただ…………」

「ん? あぁ……まぁ~~~、あれだ。なんとなく、気持ちは解る」

視線の先にいる人物は、多くの冒険者たちに囲まれるソウスケ。

水龍という怪物中の怪物である存在を、一人でうち破った冒険者。

「凄い、という言葉じゃ表せない人よね」

ネイトの言葉に、アスレアたちは何度も頷く。

彼らが在籍している学園、レイヤーズ学園には一人でBランクドラゴンを討伐出来る教師が多く存在する。
中には、Aランクドラゴンであってもソロで討伐出来る規格外な実力を有する教師もいるが……Aランクドラゴンの中でも更に特別な存在、龍を一人で討伐出来る教師は……長い歴史の中でも、数えるほどしか存在しない。

「優秀な武器やマジックアイテムを使ったからと言っていたが……おそらく、ソウスケさんのことだ。冒険の最中に手に入れたのだろう」

「あり得そう」

「というか、無茶苦茶実戦経験を積んでないと、あんなスピードで動けないしね~~~」

強力な武器を使えば、確かに敵を楽に倒せる可能性は上がる。

ただ、それでも本当の強敵と相対した際、武器に見合う技術や身体能力を有していなければ、あっさりと死んでしまうこともある。

「…………英雄、なんだろな」

元々ソウスケはエイリスト王国で英雄と呼ばれる存在ではあった。

純粋に冒険者として活躍し、冒険者としての功績を積み重ねるだけではなく、他国との戦争の際に常に最前線で戦い続け、エイリスト王国を勝利に導いた。

といった話はノックスたちも事前に聞いてはいたが、やはり英雄の年齢が年齢であったため、本当なのかと疑問に思ってしまった。

しかし、その実力は本物中の本物。

逆鱗状態となった風竜をあっさり倒すだけではなく、龍というノックスたちにとって天地が何度ひっくり返っても倒せない存在をソロで討伐。

決して、ハリアルたちはソウスケに救われた訳ではない。
それでも彼らの価値観からすれば……ソウスケは、自分たちにとっても英雄と呼ぶに相応しい存在となった。

「だな。そりゃAランクドラゴンを倒せるんだろうなとは思ってたけど……まさか龍まで一人で倒すんだからな」

「……学園はどう動くでしょうか」

アスレアの言葉を聞き、全員動きが止まってしまう。

「………………とりあえず、勧誘はしそう」

「そうだな。どう考えても、しない理由がない」

「だよね~~~~~。寧ろ、とりあえずしないって考えを口にしたら、バカかこいつって思われそうだし」

優秀な人材はスカウトしたい。

それは教育機関であれば当たり前の事である。
ソウスケたちはただ圧倒的な実力を持っているだけではなく、何かを教える力も有している。

名選手、名監督に非ずという言葉には当てはまらない人材であり、レイヤーズ学園ではなくとも複数の組織からオファーが来て当然の流れ。

だが、実際にソウスケという人間と接したからこそ、ノックスたちに解ることがある。
ソウスケという人間は、特定の組織に属することは好まないと。

「……でも、ソウスケさんが素直に勧誘を受けるイメージは湧かない」

「同意見だ……なんなら、生涯現役として活動し続けそうなまである」

そういった人生を歩む!!! という目標ではなく、ソウスケであれば当然といった表情で六十、七十……八十になっても冒険を続ける姿がイメージ出来てしまう七人だった。
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