転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十五話 黙ってないはず

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「よぅ、卵たち! なにテンション下がってんだ!!!」

それなりに酒が回ってきている冒険者たちがノックスたちに絡む。
勿論、彼らはノックスたちがソウスケの連れであることは覚えているため、イジメようなどとは一欠片も考えていない。

寧ろ、ドラゴンスレイヤーとして後輩になりそうだからこそ、今の内に多少なりとも関りを持っておこうと思っていた。

「っ……その、所属している学園の教師たちが、どう動くのかなと思って」

「あぁ~~~~、なるほどねぇ~~…………俺ぁ、平民だからそういうのはあんま解らんが、難しいんじゃねぇか」

「そうよね~~。ソウスケ君たちって、元々エイリスト王国で活動してたんでしょ。そっちでも随分活躍してたらしいし……ってなると、向こうで勧誘を受けてそうだしね」

少々服装が大胆な女性冒険者の言う通り、ソウスケは別の国で勧誘自体は受けていた。

ただ、今現在グレンゼブル帝国にいるという事は……そういう事である。

「ですよね。でも、そう簡単に諦めるとは思えなくて」

「まぁ、諦めるには惜しい、惜し過ぎる人材ってやつだろうし……ソウスケが付いてくるなら、ミレアナと従魔のザハークも付いてきそうだしな」

「色んな意味で万々歳な結果になるじゃろうな」

組織がソウスケを勧誘しようとする際、狙いはそこにもあった。

ソウスケのパーティーは、ソウスケだけが特徴的な戦力ではない。
ミレアナ、ザハークも戦力として非常に魅力的である。

加えて、ソウスケたちが特定の組織に属するという事は、育成力の増強だけではなく……有事の際の戦力としても期待出来る。

「ってなると、あれか。ソウスケたちが冒険者を引退したら、来てくれないかって感じの勧誘か?」

「そうなりそうかなとは思ったんですけど、ソウスケさんたちは……死ぬまで冒険者として活動するんじゃないかと思って」

「生涯現役ってやつか? そりゃさすがに…………どうなんだ?」

「どうって言われても……とりあえず、ミレアナさんはエルフな訳だし、付き合い続けられるでしょ」

「オーガであるザハークに関しては解らんところが、希少種であることは長生きしてもなんらおかしくはないのう」

同業者たちとしても、ソウスケにその気があるなら不可能ではないと、ノックスたちとほぼ同じ考えであった。

ただ、まだ酔いがそこまで回っていない冒険者が、ある可能性を口にする。

「仮にソウスケ君たちがそれなりの年齢で引退するとして、学園やそのほかの組織が勧誘するのを、冒険者ギルドが許すだろうか」

「「「「「あっ」」」」」

その組織に所属している者たちが、すっかり忘れてしまっていた。

まず、第一としてソウスケは冒険者ギルドという組織に属している。
様々な街に移動する……国から国へ旅をすることを縛ることはない。

ただ、そんな冒険者ギルドではあるが、決して新しく冒険者として活動を始める者たちの教育を軽視しているわけではない。

ソウスケたちが戦闘だけではなく、教育者という観点から視ても優秀であることは冒険者ギルドも把握済み。

学園などとほぼ同じ理由で、有事の際の戦力としても期待出来る、どころの話ではない。
加えて……冒険者ギルドであれば、基本的に自由を象徴するからこそ、ソウスケの行動をそこまで縛ることもない。

「そりゃそうか。龍を一人でぶっ殺せるような人材、ギルドが易々と手放すわけねぇな」

「ないわね~~~。あれこれ特典を用意して引き留めそ~~~~」

「……そうなってくると、あれじゃな。いったい何を用意すれば、ソウスケの気を惹くことが出来るか。そこが鍵になりそうじゃの~~~」

何を用意すれば、ソウスケという人間の気を惹くことが出来るのか。

冒険者達としても、ノックスたちとしても気になる話題であり、彼らは彼らで最後まで盛り上がり続けるのだった。
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