転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十六話 静か

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「……面白い光景だな~~~~」

宴会も終わりを迎えた頃、ソウスケのお前に面白い光景が広がっていた。

「はぁ~~、全く。本当に呑み過ぎなんですから」

「まぁ仕方ないわよ」

と言いながら、受付嬢たちが酔い潰れた冒険者たちをなるべく一か所へ集めていく。

宴会に参加していた半分以上の冒険者たちは無事にギルドを出て、自分たちが泊っている場所へと戻って行ったが、三分の一ほどの冒険者たちは……見事に酔い潰れていた。

「大丈夫ですか、ソウスケさん」

「うん……そうだね。大丈夫だよ」

とはいえ、目の前の光景に笑みを零すソウスケも、万全の状態ではない。

何度も何度も祝いのエールを注がれ、呑み続けていた。
ソウスケとしても悪い気分ではなく、呑み慣れてきた飲み物ということもあり、躊躇うことなく呑み続けた。

結果、床に転がっている者たちの様に酔い潰れはしなかったものの、完全に酔いは感じており、少しふらっとすることがある。

「ふふ、呑んだ呑んだ。さて、あいつらは………………まっ、仕方ないか」

ある方向に視線を向けると、そこにはテーブルに突っ伏しっているノックスたちの姿があった。

全員が酔い潰れている訳ではないが、意識はあっても上手く動けない状態。

比較的アルコールには耐性があるのだが、彼らも冒険者たちに何杯もエールを奢られ続けたことで、完全に読容量を越えてしまっていた。

「っし」

三人で手分けして抱え、ノックスたちが泊っていた宿へと送り届ける。




「……静かだな」

「えぇ、そうですね」

自分たちの宿へ戻る道中、ソウスケは妙な静かさに心地良さを感じていた。

「先程まではうるさかったのだがな」

「ふふ。そりゃ宴会中だったからね……けど、向こうからもあまり音がしないね」

ソウスケが指さす方向は……歓楽街。

既に夕食の時間は過ぎている。
ただ、夜の街にとっては、これからが本番と言えなくもない時間帯だが、ソウスケの言う通り歓楽街からも殆ど音がしない。

「多くの……それこそ、街に残っていた殆どの冒険者たちが、先程の宴会に参加していたのかもしれません。そのため、主な客が歓楽街にいないのでしょう」

「なるほど」

歓楽街の主な客は、懐が潤った冒険者達。

勿論、貴族や商人たちもそこそこ訪れるが、主な客はやはり冒険者であるため、本日はミレアナの言う通りその冒険者たちが先程まで行われていた宴会に参加していた。

一部の大手クランに属する者たちは参加していなかったものの、夜の街に繰り出すことはなく……自身のクランハウスであれこれはない合っていた。

既に情報だけは歓楽街にも回っているが、それでも歓楽街の住人たちからすれば、何か大きな問題が起こったのではないかと思ってしまうのも無理はない程、客が少なかった。

「して、ソウスケさん。水龍の素材はどうするのですか」

「…………売りはしないけど、悩みどころだよな」

解体を行ってもらったこともあり、ソウスケは一部だけギルドに売却した。

しかし、大半の素材は手元に……亜空間の中にある。

当然ながら、素材は自分たちの為に使いたい。
ザハークは鍛冶が出来て、ミレアナは錬金術が出来る。
そしてソウスケは鍛冶と錬金術、どちらも出来る。

文字通り、三人は自分たちの為に水龍の素材を使うことが出来る。

とはいえ、素材の品質が品質であった。

「ソウスケさんなら、気にせず使えるのではないか?」

過去、確かにソウスケはAランクモンスターの素材を使い、ランク八の武器を造ったことがある。

「無茶言うな。気にし過ぎるに決まってるだろ」

「そうか?」

「そうだよ。そりゃAランクモンスターの素材は使ったことあるけど……Bランクドラゴンどころか、Aランクドラゴンの中でもトップクラスの存在だぞ」

是非とも使いたいものの、製作者として超高品質な素材を無駄にしたくないという思いもあり、完全な板挟み状態だった。
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