転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十七話 過去に……

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「おはようございます、ソウスケさん」

「…………おはよう、ミレアナ」

先日、大宴会で多くの同業者たちからエールをご馳走されたソウスケ。

その全てを飲み干していたこともあり、当日酔い潰れこそしなかったものの、翌朝……多少の頭痛が残っていた。

「…………」

「大丈夫ですか、ソウスケさん」

「……ミレアナ、暖かい飲み物を貰っても良いかな」

「分かりました。少々お待ちを」

ミレアナは自身のアイテムバッグから紅茶作りに必要な物を取り出し、丁寧に暖かい一杯を作る。

「お待たせしました」

「ありがとう……はぁ~~~、染み渡る~~~~」

紅茶という暖かい飲み物を飲んだからというだけではなく、ミレアナがソウスケの体調を気遣って色々と工夫した一杯。

ミレアナも自身が淹れた一杯を飲みながら、のんびりとした寝起きを過ごす。

「……ミレアナは頭痛かったりしないの?」

「えぇ、問題ありません」

「…………本当に?」

「えぇ、本当に問題ありませんよ」

強がりではない。
実はすでに状態異常回復のポーションで二日酔いによる頭痛を治していた訳ではない。

「そなんだ。俺が見てた限り、そこそこ呑んでたと思うんだけど」

「ソウスケさんほど呑んではいません。それに、殆どがワインでしたので」

「そっか……それなら、大丈夫、かな?」

納得しかけるも、ふと疑問が残る。

エールよりもワインの方が、アルコール度数が高いのではないのかと。

ワインには赤と白があるも、赤であれば間違いなくエールより度数が高い。
お酒に詳しくはないソウスケだが、赤ワインも白ワインも一応飲んだことがあるからこそ、エールより度数が高いと身を持って体験している。

(ミレアナって……もしかしてかなり酒豪?)

ソウスケのイメージでは、エルフは酒にそこまで強くないといイメージがある。

正確にはハイ・エルフなのだが、身体能力や魔力量などの以外の面では、そこまでエルフと差がない。
特にアルコール体制は、ハイ・エルフだからといってそこら辺の酒豪よりも強いということはない。

(……もしかして、過去にドワーフと婚約したハイ・エルフがいたとか?)

「? どうかしましたか、ソウスケさん」

「い、いや、なんでもないよ」

もしかして、ハイ・エルフの祖先にドワーフと結婚した人っている? と、尋ねる事は出来なかった。

ミレアナがドワーフに対して嫌悪感を抱くタイプのハイ・エルフではないことは解っていた。
それは解っていたが、だとしても……気軽に尋ねられる内容ではなかった。

「ところでソウスケさん、先日の話の続きになりますが、水龍の素材はどういった形で使うのですか」

「……………………………………これといって、思い浮かぶ物がないかな」

本気で考えた。
今一度本気で考えたのだが……これといった内容が思い付かなかった。

「そ、そうなんですね」

「意外だった?」

「水龍の素材がどれほど貴重な物なのかは理解していますが、それでもひとまずこういった物を造ってみたいというイメージはあると思っていたので」

「……ロングソードでも短剣でも、刀でも槍でもとりあえず造ってみれば良い話ではあるんだろうけどね」

実際のところ、水龍はそこら辺のBランクドラゴンと比べても圧倒的に大きい。

そのため、挑戦する為に一部の素材を使用したとしても、まだまだ素材は余る。
ザハークも一緒に使用したとしても、直ぐに尽きることはない。

「それでも……うん。とりあえず挑戦してみようって気にならないんだよね」

「……水龍という強敵をソロで討伐した。その出来事に、体が満足している状態だから、ということでしょうか」

「ん~~~……どうなんだろ。そういうのもあるかもしれないね」

根っからの職人という訳ではないものの、決して貴重な素材に挑戦したいという気持ちがゼロという訳ではない。

(燃え尽き症候群ではない……ね)

何はともあれ、ひとまず本日はなにもやる気が起きないソウスケであった。
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