転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百六十八話 似たり寄ったり?

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疲れている。
何もする気力は起きない。

それでも……紅茶を飲み終え、朝食を食べ終えたソウスケはミレアナ、ザハークと共に宿から出て街中を散策していた。

布団で二度寝三度寝するという選択もあるにはあったが、それはそれでそうする気にならなかった。

「ソウスケさん、何処に行くんだ?」

「……何も考えてない」

「そうか」

ザハークとしては武器屋巡りでも行うのかと思っていたが、偶には特に目的もなくのんびり散策するのも悪くはなかった。

「…………ザハークはさ、さっさと水龍の素材を使ってみたいか?」

「ふむ、昨日の話の続きか……正直なところ、使ってみたいというのが本音だ。勿論、討伐したのはソウスケさんなのだから、図々しい思いであることは理解している。ただ、鍛冶をする者としては、使ってみたいと思ってしまう」

「そっか……強いな、ザハーク」

「そうか?」

あまり理解せず首を傾げるザハーク。

「あぁ、そうだよ」

「そうか…………とはいえ、やはり今すぐ使うのはな」

「別に俺に遠慮する必要はないぞ」

「……偶にソウスケさんが似た様な事を言っていると思うが、それはそれで無理というものだ」

是非とも使ってみたい!!!!!! という熱い製作者としての思いはある。

ただ、先程口にした通り、水龍に関してはソウスケが一人で討伐したモンスター。
それを同じパーティーの仲間だからといって、気軽に使わせてくれとは言えない。

「せめて、俺もAランクのドラゴンを討伐し、ソウスケさんやミレアナと共有出来なければな」

素晴らしい心がけである。

ミレアナがザハークの考えに感心していると、ふと疑問が浮かぶ。

「……待ってください、ザハーク。何故、そこに私がカウントされてるのですか」

「何故って、ミレアナも水龍の素材を使うだろう」

「…………何を言ってるのですか」

彼女としては、全く考えていなかった事。

これに関しては、ミレアナが錬金術を行えると知っている者であれば、ザハークと同じく何故? と首を捻るだろう。

しかし、ミレアナとしては自身の実力、腕を冷静に振り返った上で……今の自分が扱って良い素材ではないと思っていた。

「ザハーク、私は三人の中で製作に関しては一番下です。そのため、絶対に使ってはなりません」

「そうか? 俺は問題無いと思うが」

「…………」

本当に気にしていないのか、何も考えていないのか……先程までの理知的な考え、思いが吹っ飛んだのかは解らない。

それでも、ミレアナはザハークの言葉に眉をしかめるしかなかった。

「ゆっくりとではありますけど、成長しているでしょう。ですが、今の私が使ったところで、ゴミが生まれてしまうだけです」

卑下しているのではない。
ミレアナは、純然たる事実を口にしているだけであった。

「……だが、敢えて格上の素材を使う事で、慣れていくのではないか?」

「…………それに関しては、完全に否定はしません。ですが、それでも限度があります」

彼女としては、逆鱗状態となった風竜の素材でなんとか……以前ソウスケがジブラという冒険者との対決の際に討伐した灼熱竜でギリのギリ。

(本来であれば、灼熱竜の素材も使用するのがはばかれる最高ランクの素材。大きく背伸びするという意味では、あれで本当にギリギリのギリギリ……龍の素材など、ありえません)

製作者としての気持ちとしては、なんだかんだで彼女も杖や弓、マジックアイテムを造るのは嫌いではない。

いつか挑戦してみたいという気持ちはあれど、間違いなく今ではないことだけは断言出来る。

「まぁ、そこまで言うなら無理にとは言わんが」

「理解があるようで何よりです………………ん?」

せめて、俺もAランクのドラゴンを討伐し、ソウスケさんやミレアナと共有出来なければな、というザハークの言葉を思い出したミレアナ。

(……もしや)

ここでミレアナは超重要な事に気付いた。
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