転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百七十五話 強くなる

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「「「「「………」」」」」

二刀流に関する興奮が収まった頃、ノックスたちもミレアナがアスレアとネイトに伝えた話を聞き、同じ様に驚き固まった。

「あの、ソウスケさん。それは……有難いんですが」

「そう思うなら、素直に受け取っとけ。俺達がそうしたいって思って勝手に造るだけなんだから」

本当にその通りであり、ソウスケたちに申し込まれた依頼内容には、土産を持たせてあげてほしいなどの内容は記されていなかった。

「あっ、でも世の中の鍛冶師や錬金術師が俺たちと同じだとは思うなよ。普通は製作費や技術料を貰って当たり前だからな」

モンスターの素材だけで造るのではなく、鉱石なども使用するため、ノックスたちが手に入れた素材だけでは足りない。

それならばと、肉などを売却して手に入れた金で、それらの代金を支払おうとするが、それはいらないと却下する。

「し、しかしだな」

「言ったろ。俺たちがやりたいから、お節介したいだけだからな。その金は、今後必要な物を買う時とか、好きな人が出来た時のデート代とか、プレゼント代に使えば良い。さっ、昼前までにはどういった武器にするのか決めよう」

まだあれこれ言いたい事があるが、時間制限を設けられてしまえば、ハリアルたちとしても真剣に選ぶしかない。







「んじゃ、また晩飯頃に」

ノックスたちからの注文が定まり、ソウスケたちは早速作業に取り掛かっていく。

「「「「「「「…………」」」」」」」

色々と決めてしまった。
終わってから、改めて自分たちがどのような質問をしたのか脳内に蘇る。

「……お、俺たち……無茶な注文、してないよね」

「た、多分、してねぇと、思うが」

「そ、ソウスケさん達は大丈夫って言ってたんだし、だ、大丈夫だよ!!!」

大丈夫だと口にするナディーの顔が一番大丈夫そうではないが、既に注文は終了し、作業も始まってしまった。

もうノックスたちに出来ることはなく、後は完成を待つだけである。

「…………どうして、ソウスケさんたちはここまで、俺たちに良くしてくれるんだろう」

「それは……あれだよ、ほら……俺らは俺らで頑張ってきたから、じゃねぇの?」

「……世の中には、人の世話を焼くのが趣味という人もいるらしいですよ」

実際に、世の中にはそういったタイプの人間……ニート製造機の様な人間も存在する。

しかし、ソウスケがそういった行いにハマるには、あまりにも若過ぎると思われる。

「それにしても、若過ぎませんか?」

「…………そうですね。ですが、そうでないと説明が付かない部分があるかと」

「無茶苦茶嬉しいことに変わりはねぇんだけど、なんかあれだよな……ここまで甘えちまっても良いのかって思うよな」

全員がジャバと同じことを考えていた。

ただ指導を受けるだけではなく、Bランクドラゴンと戦う機会を得られた。
それも一度や二度だけではなく、計十回以上。

Bランクドラゴンとの戦闘経験だけではなく素材、金まで得られて感謝しかない。

それに加えて、それらの素材を使用した武器を造ってもらえるなど……甘え過ぎて、逆に恐ろしさすら感じる。

質り得な感情だと理解しつつも、彼らがそういった思いを持ってしまうのも、致し方なかった。

「…………強く、なろう」

「ノックス?」

「全員で、強くなるんだ。俺たちは……多分、不安なんだ。これほどソウスケさんたちに良くしてもらっているからじゃない。これほど良くしてくれたソウスケさんたちに対する恩義に、応えられるか否かが不安なんだと思う」

「「「「「「っ!!」」」」」」

臨時教師たちに対する恩義に応えられるか否かが恐ろしい。

ドンピシャに自身の胸の内に浮かんでいたモヤモヤの正体を言い当てられ、一気に霧散していく。

「だから、強くなろう。ソウスケさんたちから貰う武器を持ったとしても、それに相応しいドラゴンスレイヤーになれるように」

リーダーの言葉は先程までおろおろしていた友人たちの胸に、確かな炎を宿した。
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