転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
1,252 / 1,259

千百七十六話 先を見据えて

しおりを挟む
「…………不十分、ですね」

現在ミレアナの前には、二つの杖と弓があった。

それはアスレア、ネイトの為に造った武器。
どの杖も弓も質は高く、学生である二人が持つには過ぎた武器……と思われてもおかしくないが、それでもミレアナからすればナシであった。

ミレアナとしても、それなりに質の高い杖と弓を造れたとは思う。
しかし、二人の成長を傍で見てきた。
確かに今の二人にとっては、武器の方が上に思われるかもしれない。
それでも、見合う実力者になるのは時間の問題……というのがミレアナの見解だった。

そして、二人であればこれから更に経験を積み重ね、更にその先を行く。

(良い武器が出来た……それでは、いけない。今の私が……全てを出し切ったと言える物でなければ)

ミレアナは、ソウスケとザハークに比べれば、自分の製作者としての腕は劣っていると認識している。

そのため、二人は必ずノックスたちに相応しい武器を造り上げる。
そう断言出来る自信がある……しかし、自分の力量にはアスレアに相応しい弓を、ネイトに相応しい杖を造り上げられるという自信がない。

(あの子たちは、何度も頑張った。何度も乗り越えた……であれば、私も乗り越えなければならない)

呼吸を整え、再度Bランクドラゴンの素材に手を伸ばし、作業に取り掛かった。







「ん~~~~~…………いまいち、だな」

二人は絶対に学生たちに見合う最高の得物を造り上げると信じていたミレアナだが……ソウスケはソウスケで、中々納得のいく物が造れていなかった。

「ふむ。少し視せてもらっても良いか」

「勿論」

「……………………そうだな。少し、足りないと感じるな」

基本的に自分より腕が上だからという理由もあり、ソウスケが造り上げた得物にケチをつけることはない。

だが、ノックスの為に造り上げたロングソードが、未来のノックスが振るうには……やや物足りないと感じた。

「だよな~~~」

二人もミレアナと同じく今の七人ではなく、これから七人が成長しても使い続けられる、頼り続けられる武器を造ろうとしている。

二人のノックスたちが成長したイメージは殆ど共有出来ており、ソウスケは自身も同じ事を感じているため、ザハークの感想にムッとすることはなかった。

「ソウスケさん、俺の大剣も視てほしい」

「おぅ………………ん~~~~……全然悪くない。悪くないんだけど……これだと、パワーに寄り過ぎてるかな」

「ふぅーー、やはりそうか」

ザハークが今回造った大剣は、大剣ではあるが柔軟な戦い方が出来る大剣。

そもそも大剣という武器の性質上、どうなんだと突っ込まれそうだが、ザハークはジャバと色々と話し合った結果……造ると決めた。

パワー寄り……というより、パワーに全振りした大剣はそれはそれで造るため、今回出来上がった大剣はザハーク的にナシだった。

(これ以上ノックスたちを長居させるのはあれだし……俺とザハークも、もう少し緊張感を持たないとな)

一応、ノックスたちはまだ学生であり、長期休みの期間中というわけでもない。
ハリアルたちは逆に絶好の機会だからこそ、もっとレイウルに……ソウスケたちの元に居たいと思っているが、現実問題としてそういう訳にはいかない。

ナディーたちをソウスケたちの元に送り出したのはレイヤーズ学園だが、それはそれとしてあまりレイウルに滞在している期間が長くなると、単位に関わってくる。

単位に関わってくるという事は……最終的に、卒業に関わってくることになる。

(……出来れば、前提は崩したくないからな)

ソウスケは、ヨルカたちが討伐したドラゴンの素材で、彼らの武器を造ると決めている。

併用して使う鉱石に関しては自分たちの裁量で変えられるが、メインとなるモンスターの素材に関しては前提を変えたくない。

というわけで、使用すれば質の問題関して解決出来るAランクモンスターの素材は使いたくない。

ついでに言うと、ザハークはまだAランクモンスターの素材を扱いきれる自信がない。

「……っ!!!!!!! っし……気合れてもう一回造るぞ」

「…………っ!!!!!!!!!!! あぁ、そうだな」

ソウスケの真似をし、両頬を叩いて気合を入れるザハーク。

文字通り気合は入ったが……力の調節を間違え、頬にくっきりと痕が残った。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

処理中です...