スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
1,266 / 1,414

千二百六十四話 死ぬわけにはいかない

「「「「「「「「「「ッッッッ!!!!!!」」」」」」」」」」

開戦の音が鳴り響くと同時に、戦士たちの雄叫びが空を割る。

煩い。
それは間違いないが、戦士も魔法使いも騎士も関係なく、そんな事が気にならないほど闘志が熱く燃え上がっていた。

そして……一部の人間たちは、黒く深い炎を灯しながら衝突地点へと駆け出す。

「ぅおらッ!!!!」

「せぇえええええやッ!!!!!!」

「疾ッッッ!!!!!!!」

「死に晒せやッ!!!!!!!」

「死ねやっ!!!!!!」

気合の入った雄叫びから、ドストレートな暴言まで飛び交う戦場の。

「…………」

そんな先日よりも戦意や殺意の密度が高い戦場で、ブローズは冷静に相棒から言われたとおりに動いていた。

先日よりも他の戦闘者たちを助ける範囲を狭め、相棒に何かあった際、直ぐに助けられる範囲で行動する。
ディーナからの頼みを聞いて、ブローズは失望することはなかった。

先日の戦いでほぼ無傷で乗り越えることができたブローズだが、それでも敵側の者たちの中で、自分を殺しうる実力を持つ人間が複数人いることを把握していた。

個の力だけではなくとも、まだ子供であるブローズからすれば、それなりの実力を有している戦闘者たちが数十人規模で集まれば、負ける可能性はあり得る。

「っ!!!! ちょこまかと、逃げてんじゃねぇぞ、クソ虎がッ!!!!」

「…………」

なんとなく人間の言葉は理解できる。
多くの敵意が、殺意が、怒気が自分に向けられる。

そんなことは、母に守られてはいたが、それでも自然の世界で生きていたブローズにとっては珍しいことではない。

ただ、母に守られていた時とは違うこともあった。

「助かったぜ、虎ちゃん!!!!!!」

「ありがとう、ブローズっ!!!!!!」

「ナイス援護、だ。後で、美味しい肉を、あげるぜ」

「援護、感謝する」

相棒であるディーナと共に戦う同士たちを助けると、感謝の言葉を伝えられる。

助ければ、感謝の言葉を貰えるというのは、基本的に当たり前のことではある。
だが、ブローズはその基本が基本と言えない世界で生きていた。

ディーナと共に行動するようになって、少しずつその基本を知るようになったが、ここまで多くの人間たちに感謝されることはなかった。

「…………」

勝つために、相棒と生き残る為にも子供ながらに淡々と仕事をこなすブローズ。
彼は、決して正義のヒーローになりたいわけではない。

それでも、多くの人間たちから感謝の言葉を受け取り……悪い気はしなかった。

とはいえ、彼にとって一番守らなければならないのはブローズ。
援護することに夢中になり、ある程度の範囲から外れるわけにはいかなかった。

「っ、……」

だが、戦場で自身と似たような存在を発見。

それは……竜騎士団。
主な騎竜はワイバーンではあるが、それでも空を飛べない人間たちからすれば、厄介極まりない存在。

そんな存在を人間が操っており、その人間が繰り出す攻撃も侮れない。
ブローズは竜騎士団という存在を詳しくは知らないが、それでも彼らがディーナたちにとって非常に面倒で危険な存在であることは理解できた。

「っっ!!!!」

そこでブローズは……ひとまずディーナの元へと向かった。

「っ!!!???」

「がはっ!!!!????」

「な、なんなんだ!!!!」

「こいつは、昨日の従魔かっ!!??」

「っ!!!!!????? なんて、威力、だ」

ディーナの元に到着して早々、ブローズは邪魔なゴリディア帝国側の人間を力任せに蹴散らした。

「ルルゥ、ガルルァ」

「っ、なるほど」

いきなり現れ、目の前の敵を蹴散らし、声をかけてきた理由を即座に把握したディーナ。

「構わない。他の者たちを、救ってやってくれ」

「ガゥ」

相棒の……主の許可はもらった。

「…………ッッッ!!!!!!!!」

「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」

ブローズはほんの少しだけ悩む素振りを見せ、置き土産としてかなり力を込めた爪撃波を放ってから竜騎士たちがいる場所へと向かった。

(本当に頭が回る子だな……さて)

ブローズが少し暴れ、最後に爪撃波を放っていったが……それでも、ディーナたちと対峙していた戦闘者たちが、全員消えたわけではない。

(範囲外で行動しても構わないと伝えた……それなら、私がやることはただ一つ)

元々先日の活躍の影響で、自分たちの元に質の高い先頭車たちが送られてこないかと懸念し、ブローズに行動範囲を狭めるように伝えた。

その指示を一時的にではあるが、破っても構わないと告げた。

となると、ディーナとしては尚更死ぬわけにはいかなくなった。

「ふんッ!!!!!!」

「っ!!!!! 無、念」

自分が死ねば、ブローズは自分の責任だと思ってしまう。

構わないと……送り出した人物として、相棒にそんな思いをさせるわけにはいかない。

「破ッッッ!!!!!!!!」

「「「「っっ!!!!」」」」

薙刀を握る力が強まる、回転力が上がる。
生き残らなければならないという活力が、生き残る為には殺さなければならないという確固たる意志がより強固になり、猛る闘志が更に燃え上がり、豪炎と化す。

(っ、なん、なんだよ。あの、鬼人族の女はっ!!!)

(なんて、強さなの)

(増援が、こなければ……このままではッ!!!!)

彼女の前では、並みの殺気ですらかき消されてしまう。

戦鬼と化し、更に激しさを増す彼女の存在に……彼女たちの仲間たちも感化され、豪炎は伝播していく。
感想 484

あなたにおすすめの小説

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

姉から全て奪う妹

明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」 可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。 だから私はこう言うのよ。 「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」 *カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

即席異世界転移して薬草師になった

黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん) 秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。 そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。 色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。 秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。