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千二百七十七話 成長ではなく進化
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SIDE 上層部
「…………驚きましたね」
「なんだ、良い事でもあったか?」
戦況を見渡せる人物の声が震えていないことから、ロードスは悪い驚きではないと察した。
「えぇ……良いことだと思いますよ。ブローズ……虎竜という非常に特殊なモンスターを従魔に従える冒険者、ディーナさんの仲間に、クラートという冒険者がいました」
「確かに三人でパーティーを組んでるんだったな」
現状、知名度で言うと姿が殆ど確認されていなかった虎竜を従魔に従えて活動しているディーナの方が高い。
クラートとオルフェンに関しては、弱くはないが彼女と同等の実力を有する者ではないという認識を持たれていた。
「まず、クラートさんの動きがやや鈍くなりました」
「戦闘によるダメージの影響ではなく、か」
「えぇ、そうです。対峙する相手からの気迫に押されたか……それとも、今回の様な戦いに関して答えのない疑問を抱いてしまったか」
「……やはり、そういった者が表れ始めたか」
ロードスや他の上の人間たちも、今回の戦争は……国に仕える騎士たちであればまだしも、貴族に仕える騎士や兵士に魔術師、自由を求めて活動する冒険者たちからすれば、どうしてもモチベーション維持が難しい。
今回のように、何かを守るための戦いではない……本人の気質から我武者羅に功績を求めるタイプでないと、初日のテンションを維持し続けるのが困難となるケースは珍しくない。
「そこで、パーティーメンバーであるオルフェンさんがサポートメインの行動から、前に出て獣の様な動きで積極的に仕留める戦闘スタイルに変わりました」
「オルフェン…………? 俺の記憶が正しければ、その冒険者は人族だったと思うんだが……獣人族の動きを真似ることが出来るタイプということか?」
「私が視る限り、真似することが出来る、といった次元は越えているかと。これは噂ですが、オルフェンは過去に獣心の開放を行ったことがあるようです」
観察者であるエルフの言葉に、ロードス以外の者の表情が揺れる。
「それは……本当か?」
「あくまで、噂と捉えてもらえると助かります」
観察者エルフは冒険者であり、Aランク冒険者の一人。
同業者の情報収取などを欠かさないタイプであり、ディーナたちの存在を知ってから集められる範囲で情報を集めていた。
「ですが、ひとまずあの動きは真似で出来る動きではないと伝えておきます」
「解った。それで、オルフェンの動きで戦場は持ち直したと」
「事前に周囲の人物と交流を行ってたのでしょうね。陣形に乱れが起こることもありませんでした」
「そうか…………それで、まだ終わりではないだろう」
人族が獣心の開放を行った過去があるという話には多少驚かされたものの、現在それを行っていないのであれば、それほど驚く内容ではない。
「えぇ。心を乱したであろうクラートさんですが、その後見事に持ち直しました」
「ほぅ……下がらず、誰かから言葉を授かり、受け取らずに、か……」
ロードスは脳筋的な部分はあるものの、心の強さというのを軽視していなかった。
寧ろ、そこが折れない人物こそ、一番強い……あるいは恐ろしいとすら思っていた。
だからこそ、相手の怒気や殺気からくる圧に押されるか、理不尽な状況に心が潰されそうになるも、そこから自力で這い上がることができた人物を高く評価する。
「いえ、持ち直したというのは表現が正しくないですね」
「? どういうことだ」
「クラートさんは明らかに成長……進化したと呼べるレベルで、戦い方に変化が訪れました」
「新たなスキルを手に入れたということですね」
宮廷魔術師と呼べる女性が直ぐにクラートの身に何が起こったのかを把握した。
彼女は魔術師ではあるが、スキルに理解があった。
「精神が崩されかけた人が立ち直ったということは、精神耐性に関するスキルを手に入れたのでしょう」
「…………どうやら、そういったレベルではないようです」
「? どういうことでしょうか」
「先ほど申し上げた通り、クラートさんの戦い方が成長どころではなく、進化と呼べるほど変化しています」
「進化、ですか………………もしや、そのクラートという冒険者は、明鏡止水を手に入れたのではなくて?」
「「「「「「っ!!!!????」」」」」」
女性宮廷魔術師の言葉に、男女関係なく……接近戦用の武器を用いて戦う者たちの顔色が変わる。
「その冗談は、あんまり面白くねぇな~~~」
「同感だ。崩れかけた自身の精神を持ち直したという事実は、素直に素晴らしいものだと認めよう。そこにスキルの発現が関わっているかもしれないという考えも理解できる。だが、それはあり得ない」
「申し訳ないが、私も彼らと同意見だ」
この場にいる剣士や、その他の武器を扱う者たちの中に、明鏡止水を持つ者は一人もいない。
たとえ剣士でなくとも、接近戦タイプの者であれば明鏡止水を持つ者に一定の敬意を抱く。
上に登れば登るほど、明鏡止水を持つという認識が変わっていき、その敬意も大きくなる。
「けれど、ただ持ち直しただけじゃなくて、戦い方が成長を越えて進化するなんて、他のスキルではあり得るの?」
女性宮廷魔術師の言葉に、直ぐに返せる者はロードスを含めて一人もいなかった。
「…………驚きましたね」
「なんだ、良い事でもあったか?」
戦況を見渡せる人物の声が震えていないことから、ロードスは悪い驚きではないと察した。
「えぇ……良いことだと思いますよ。ブローズ……虎竜という非常に特殊なモンスターを従魔に従える冒険者、ディーナさんの仲間に、クラートという冒険者がいました」
「確かに三人でパーティーを組んでるんだったな」
現状、知名度で言うと姿が殆ど確認されていなかった虎竜を従魔に従えて活動しているディーナの方が高い。
クラートとオルフェンに関しては、弱くはないが彼女と同等の実力を有する者ではないという認識を持たれていた。
「まず、クラートさんの動きがやや鈍くなりました」
「戦闘によるダメージの影響ではなく、か」
「えぇ、そうです。対峙する相手からの気迫に押されたか……それとも、今回の様な戦いに関して答えのない疑問を抱いてしまったか」
「……やはり、そういった者が表れ始めたか」
ロードスや他の上の人間たちも、今回の戦争は……国に仕える騎士たちであればまだしも、貴族に仕える騎士や兵士に魔術師、自由を求めて活動する冒険者たちからすれば、どうしてもモチベーション維持が難しい。
今回のように、何かを守るための戦いではない……本人の気質から我武者羅に功績を求めるタイプでないと、初日のテンションを維持し続けるのが困難となるケースは珍しくない。
「そこで、パーティーメンバーであるオルフェンさんがサポートメインの行動から、前に出て獣の様な動きで積極的に仕留める戦闘スタイルに変わりました」
「オルフェン…………? 俺の記憶が正しければ、その冒険者は人族だったと思うんだが……獣人族の動きを真似ることが出来るタイプということか?」
「私が視る限り、真似することが出来る、といった次元は越えているかと。これは噂ですが、オルフェンは過去に獣心の開放を行ったことがあるようです」
観察者であるエルフの言葉に、ロードス以外の者の表情が揺れる。
「それは……本当か?」
「あくまで、噂と捉えてもらえると助かります」
観察者エルフは冒険者であり、Aランク冒険者の一人。
同業者の情報収取などを欠かさないタイプであり、ディーナたちの存在を知ってから集められる範囲で情報を集めていた。
「ですが、ひとまずあの動きは真似で出来る動きではないと伝えておきます」
「解った。それで、オルフェンの動きで戦場は持ち直したと」
「事前に周囲の人物と交流を行ってたのでしょうね。陣形に乱れが起こることもありませんでした」
「そうか…………それで、まだ終わりではないだろう」
人族が獣心の開放を行った過去があるという話には多少驚かされたものの、現在それを行っていないのであれば、それほど驚く内容ではない。
「えぇ。心を乱したであろうクラートさんですが、その後見事に持ち直しました」
「ほぅ……下がらず、誰かから言葉を授かり、受け取らずに、か……」
ロードスは脳筋的な部分はあるものの、心の強さというのを軽視していなかった。
寧ろ、そこが折れない人物こそ、一番強い……あるいは恐ろしいとすら思っていた。
だからこそ、相手の怒気や殺気からくる圧に押されるか、理不尽な状況に心が潰されそうになるも、そこから自力で這い上がることができた人物を高く評価する。
「いえ、持ち直したというのは表現が正しくないですね」
「? どういうことだ」
「クラートさんは明らかに成長……進化したと呼べるレベルで、戦い方に変化が訪れました」
「新たなスキルを手に入れたということですね」
宮廷魔術師と呼べる女性が直ぐにクラートの身に何が起こったのかを把握した。
彼女は魔術師ではあるが、スキルに理解があった。
「精神が崩されかけた人が立ち直ったということは、精神耐性に関するスキルを手に入れたのでしょう」
「…………どうやら、そういったレベルではないようです」
「? どういうことでしょうか」
「先ほど申し上げた通り、クラートさんの戦い方が成長どころではなく、進化と呼べるほど変化しています」
「進化、ですか………………もしや、そのクラートという冒険者は、明鏡止水を手に入れたのではなくて?」
「「「「「「っ!!!!????」」」」」」
女性宮廷魔術師の言葉に、男女関係なく……接近戦用の武器を用いて戦う者たちの顔色が変わる。
「その冗談は、あんまり面白くねぇな~~~」
「同感だ。崩れかけた自身の精神を持ち直したという事実は、素直に素晴らしいものだと認めよう。そこにスキルの発現が関わっているかもしれないという考えも理解できる。だが、それはあり得ない」
「申し訳ないが、私も彼らと同意見だ」
この場にいる剣士や、その他の武器を扱う者たちの中に、明鏡止水を持つ者は一人もいない。
たとえ剣士でなくとも、接近戦タイプの者であれば明鏡止水を持つ者に一定の敬意を抱く。
上に登れば登るほど、明鏡止水を持つという認識が変わっていき、その敬意も大きくなる。
「けれど、ただ持ち直しただけじゃなくて、戦い方が成長を越えて進化するなんて、他のスキルではあり得るの?」
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