スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
1,282 / 1,414

千二百八十話 高過ぎたとしても

SIDE ルリナ、ガルア

「はぁ、はぁ……大丈夫、ガルア」

「あぁ……問題ねぇ。まだまだ戦れるぜ」

「二人とも闘志が十分なのは良いけど、しっかり休むことも重要だ」

二日目の戦争が始まり、既に三時間以上が経過。
そんな中、ルリナとガルアは仲間たちと共に一旦敵の攻撃が届かない後方に下がっていた。

先日と同じく、二人はゴリディア帝国にとって人質として捉えられれば大儲けであり、殺せるだけでも万々歳の標的。

そのため、ディーナたちと同じく先日以上の人数が二人を殺すために向かってきた。
もちろんそう簡単に殺される二人ではなく、逆に何人もの戦闘者たちを返り討ちにした。

アルバース王国もゴリディア帝国が先日と変わらず二人を狙ってくることは読んでいたため、先日と同じく二人や周りの戦闘者たちをサポート、守れる強者たちを派遣していた。

だが……それでも戦場という場所にいる以上、どうしても怪我は避けられない。

致命傷と言える傷ではないものの、二人は決して浅くないダメージを受けていた。
完全に治療するため、ついでに魔力と体力の回復を行うためには、一旦完全に後ろに下がらなければならなかった。

(クソ……長く戦えるように、鍛えてたんだけどな)

(血が流れた影響がないかを確認するためというのも解るけど、それでも何も出来ない時間が、もどかしい!!!)

今すぐにでも前線に戻りたい二人。

だが、二人とも自分たちが敵側に狙われているのだと……格好の獲物として狙われていることを忘れてない。

その狙いを利用して逆に迎え撃つことも出来るが、それは獲物が囮としての役割を果たせて成り立つ戦略。
今の二人は……その役割を果たせるかどうか怪しい状態だった。

「二人とも」

「解ってるっすよ。今の俺らが前に出ても、多分……上手く戦えない」

「防戦一方になれるならまだしも、崩される可能性の方が高い、でしょう。解っています」

「そう、それは良かった……二人の力は、まだまだこれからも必要よ。だから、今はしっかりと体力を回復させて」

二人よりも先輩の騎士は、決して二人を励ますための言葉を口にしている訳ではない。

ルリナとガルアの戦闘力は同世代の騎士たちよりも頭二つか三つ抜けている。
戦力としては申し分ない。
その上で、二人はゴリディア帝国から狙われているものの、その猛攻に耐えるだけの力と技術、冷静な頭を有している。

現状、二人が捉えられるか死なない限り、それを利用して徐々に戦力を削れているアルバース王国の方が優位に進められている。

「…………中々、兄さんみたいに上手くいかないもんだな」

「そうね」

二人の兄であるギーラスはまだ前線でディックスたちと共に戦い続けていた。

ギーラスはギーラスでアラッドの身内ということもあり、狙われやすい人物ではあるものの、既にBランクモンスターをソロで討伐できるだけの力を有する実力者。

黒炎という切り札を隠すことなく使用しており、使うタイミングも絶妙で、無駄に消費することなく迫る敵を殲滅していた。

「……焦りはそう簡単に消えないみたいだね」

「ふふ、仕方ないじゃないっすか。次期当主のギーラス兄さんは強い……順当に強い。時折、父さんが戦う姿を重なることがあるんですよ」

「久しぶりに戦う姿を見た時、確かに感じたわね」

「それに、下にはとんだ怪物がいますからね」

「アラッド君のことだね」

騎士として活動する人物であれば、知らないはずがない人間。

「そうです。怪物って言いましたけど、あいつに恨みなんてありませんよ。まぁ、多少の嫉妬はありますけどね」

「そうねぇ……でも、あそこまで突き抜けてると、私たちは違うんだってハッキリと解って、寧ろ割り切りやすいのよね」

「だな。それに……良い奴なんすよ。だから、普通にこう……兄として、ちゃんと自慢できる存在になりたいっつーか」

二人としては、順当に強く頼れるギーラスが自慢できる弟、妹でありたい。
そして、自分たちとは違う存在だと割り切りつつも、それはそれとしてそんな弟からも自慢できる兄、姉でありたい。

承認欲求が強いと思われるかもしれないが、二人はその目標に向けて本気の努力が出来る人間であった。

「……アラッド君は、家族から愛されてるんだね」

「言った通り、良い奴っすからね。まぁ、俺の弟はこう……バチバチに睨んでるっすけど」

「ふっふっふ。そういう人も、ある意味貴重なんじゃないかな」

ガルアの弟、ドラングもアラッドほどではないが、騎士界隈の中でも有名な存在であった。

フールの息子という理由もあるが、アラッドほどではないにしろドラングはしっかりと実績を残しており、同世代の中では頭二つか三つ抜けた有望株であるのは間違いない。

加えて、あのアラッドに対して強いライバル意識を持っているというのも、一部の騎士たちからは非常に高い評価を得ていた。

普通ならアラッドとの実力差に打ちひしがれ、折れて砕け散ってしまうところ、ドラングは今も打倒アラッドを胸に研鑽を積んでいる。

高過ぎる壁に挑んでも意味はないと思われるかもしれないが、その壁に挑戦し続けられる精神は、明らかに並ではない。
騎士たちの中には、そこを評価する者もいる。

「……かもしれないっすね。ただ、兄としてはもう少しこう……自分の幸せ? 的なものを探してほしいっすけどね」

今も学園で学んであろう弟の事を思い出す中、彼らに一つの朗報が届く。
感想 484

あなたにおすすめの小説

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

姉から全て奪う妹

明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」 可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。 だから私はこう言うのよ。 「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」 *カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

即席異世界転移して薬草師になった

黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん) 秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。 そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。 色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。 秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。