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千二百八十話 高過ぎたとしても
SIDE ルリナ、ガルア
「はぁ、はぁ……大丈夫、ガルア」
「あぁ……問題ねぇ。まだまだ戦れるぜ」
「二人とも闘志が十分なのは良いけど、しっかり休むことも重要だ」
二日目の戦争が始まり、既に三時間以上が経過。
そんな中、ルリナとガルアは仲間たちと共に一旦敵の攻撃が届かない後方に下がっていた。
先日と同じく、二人はゴリディア帝国にとって人質として捉えられれば大儲けであり、殺せるだけでも万々歳の標的。
そのため、ディーナたちと同じく先日以上の人数が二人を殺すために向かってきた。
もちろんそう簡単に殺される二人ではなく、逆に何人もの戦闘者たちを返り討ちにした。
アルバース王国もゴリディア帝国が先日と変わらず二人を狙ってくることは読んでいたため、先日と同じく二人や周りの戦闘者たちをサポート、守れる強者たちを派遣していた。
だが……それでも戦場という場所にいる以上、どうしても怪我は避けられない。
致命傷と言える傷ではないものの、二人は決して浅くないダメージを受けていた。
完全に治療するため、ついでに魔力と体力の回復を行うためには、一旦完全に後ろに下がらなければならなかった。
(クソ……長く戦えるように、鍛えてたんだけどな)
(血が流れた影響がないかを確認するためというのも解るけど、それでも何も出来ない時間が、もどかしい!!!)
今すぐにでも前線に戻りたい二人。
だが、二人とも自分たちが敵側に狙われているのだと……格好の獲物として狙われていることを忘れてない。
その狙いを利用して逆に迎え撃つことも出来るが、それは獲物が囮としての役割を果たせて成り立つ戦略。
今の二人は……その役割を果たせるかどうか怪しい状態だった。
「二人とも」
「解ってるっすよ。今の俺らが前に出ても、多分……上手く戦えない」
「防戦一方になれるならまだしも、崩される可能性の方が高い、でしょう。解っています」
「そう、それは良かった……二人の力は、まだまだこれからも必要よ。だから、今はしっかりと体力を回復させて」
二人よりも先輩の騎士は、決して二人を励ますための言葉を口にしている訳ではない。
ルリナとガルアの戦闘力は同世代の騎士たちよりも頭二つか三つ抜けている。
戦力としては申し分ない。
その上で、二人はゴリディア帝国から狙われているものの、その猛攻に耐えるだけの力と技術、冷静な頭を有している。
現状、二人が捉えられるか死なない限り、それを利用して徐々に戦力を削れているアルバース王国の方が優位に進められている。
「…………中々、兄さんみたいに上手くいかないもんだな」
「そうね」
二人の兄であるギーラスはまだ前線でディックスたちと共に戦い続けていた。
ギーラスはギーラスでアラッドの身内ということもあり、狙われやすい人物ではあるものの、既にBランクモンスターをソロで討伐できるだけの力を有する実力者。
黒炎という切り札を隠すことなく使用しており、使うタイミングも絶妙で、無駄に消費することなく迫る敵を殲滅していた。
「……焦りはそう簡単に消えないみたいだね」
「ふふ、仕方ないじゃないっすか。次期当主のギーラス兄さんは強い……順当に強い。時折、父さんが戦う姿を重なることがあるんですよ」
「久しぶりに戦う姿を見た時、確かに感じたわね」
「それに、下にはとんだ怪物がいますからね」
「アラッド君のことだね」
騎士として活動する人物であれば、知らないはずがない人間。
「そうです。怪物って言いましたけど、あいつに恨みなんてありませんよ。まぁ、多少の嫉妬はありますけどね」
「そうねぇ……でも、あそこまで突き抜けてると、私たちは違うんだってハッキリと解って、寧ろ割り切りやすいのよね」
「だな。それに……良い奴なんすよ。だから、普通にこう……兄として、ちゃんと自慢できる存在になりたいっつーか」
二人としては、順当に強く頼れるギーラスが自慢できる弟、妹でありたい。
そして、自分たちとは違う存在だと割り切りつつも、それはそれとしてそんな弟からも自慢できる兄、姉でありたい。
承認欲求が強いと思われるかもしれないが、二人はその目標に向けて本気の努力が出来る人間であった。
「……アラッド君は、家族から愛されてるんだね」
「言った通り、良い奴っすからね。まぁ、俺の弟はこう……バチバチに睨んでるっすけど」
「ふっふっふ。そういう人も、ある意味貴重なんじゃないかな」
ガルアの弟、ドラングもアラッドほどではないが、騎士界隈の中でも有名な存在であった。
フールの息子という理由もあるが、アラッドほどではないにしろドラングはしっかりと実績を残しており、同世代の中では頭二つか三つ抜けた有望株であるのは間違いない。
加えて、あのアラッドに対して強いライバル意識を持っているというのも、一部の騎士たちからは非常に高い評価を得ていた。
普通ならアラッドとの実力差に打ちひしがれ、折れて砕け散ってしまうところ、ドラングは今も打倒アラッドを胸に研鑽を積んでいる。
高過ぎる壁に挑んでも意味はないと思われるかもしれないが、その壁に挑戦し続けられる精神は、明らかに並ではない。
騎士たちの中には、そこを評価する者もいる。
「……かもしれないっすね。ただ、兄としてはもう少しこう……自分の幸せ? 的なものを探してほしいっすけどね」
今も学園で学んであろう弟の事を思い出す中、彼らに一つの朗報が届く。
「はぁ、はぁ……大丈夫、ガルア」
「あぁ……問題ねぇ。まだまだ戦れるぜ」
「二人とも闘志が十分なのは良いけど、しっかり休むことも重要だ」
二日目の戦争が始まり、既に三時間以上が経過。
そんな中、ルリナとガルアは仲間たちと共に一旦敵の攻撃が届かない後方に下がっていた。
先日と同じく、二人はゴリディア帝国にとって人質として捉えられれば大儲けであり、殺せるだけでも万々歳の標的。
そのため、ディーナたちと同じく先日以上の人数が二人を殺すために向かってきた。
もちろんそう簡単に殺される二人ではなく、逆に何人もの戦闘者たちを返り討ちにした。
アルバース王国もゴリディア帝国が先日と変わらず二人を狙ってくることは読んでいたため、先日と同じく二人や周りの戦闘者たちをサポート、守れる強者たちを派遣していた。
だが……それでも戦場という場所にいる以上、どうしても怪我は避けられない。
致命傷と言える傷ではないものの、二人は決して浅くないダメージを受けていた。
完全に治療するため、ついでに魔力と体力の回復を行うためには、一旦完全に後ろに下がらなければならなかった。
(クソ……長く戦えるように、鍛えてたんだけどな)
(血が流れた影響がないかを確認するためというのも解るけど、それでも何も出来ない時間が、もどかしい!!!)
今すぐにでも前線に戻りたい二人。
だが、二人とも自分たちが敵側に狙われているのだと……格好の獲物として狙われていることを忘れてない。
その狙いを利用して逆に迎え撃つことも出来るが、それは獲物が囮としての役割を果たせて成り立つ戦略。
今の二人は……その役割を果たせるかどうか怪しい状態だった。
「二人とも」
「解ってるっすよ。今の俺らが前に出ても、多分……上手く戦えない」
「防戦一方になれるならまだしも、崩される可能性の方が高い、でしょう。解っています」
「そう、それは良かった……二人の力は、まだまだこれからも必要よ。だから、今はしっかりと体力を回復させて」
二人よりも先輩の騎士は、決して二人を励ますための言葉を口にしている訳ではない。
ルリナとガルアの戦闘力は同世代の騎士たちよりも頭二つか三つ抜けている。
戦力としては申し分ない。
その上で、二人はゴリディア帝国から狙われているものの、その猛攻に耐えるだけの力と技術、冷静な頭を有している。
現状、二人が捉えられるか死なない限り、それを利用して徐々に戦力を削れているアルバース王国の方が優位に進められている。
「…………中々、兄さんみたいに上手くいかないもんだな」
「そうね」
二人の兄であるギーラスはまだ前線でディックスたちと共に戦い続けていた。
ギーラスはギーラスでアラッドの身内ということもあり、狙われやすい人物ではあるものの、既にBランクモンスターをソロで討伐できるだけの力を有する実力者。
黒炎という切り札を隠すことなく使用しており、使うタイミングも絶妙で、無駄に消費することなく迫る敵を殲滅していた。
「……焦りはそう簡単に消えないみたいだね」
「ふふ、仕方ないじゃないっすか。次期当主のギーラス兄さんは強い……順当に強い。時折、父さんが戦う姿を重なることがあるんですよ」
「久しぶりに戦う姿を見た時、確かに感じたわね」
「それに、下にはとんだ怪物がいますからね」
「アラッド君のことだね」
騎士として活動する人物であれば、知らないはずがない人間。
「そうです。怪物って言いましたけど、あいつに恨みなんてありませんよ。まぁ、多少の嫉妬はありますけどね」
「そうねぇ……でも、あそこまで突き抜けてると、私たちは違うんだってハッキリと解って、寧ろ割り切りやすいのよね」
「だな。それに……良い奴なんすよ。だから、普通にこう……兄として、ちゃんと自慢できる存在になりたいっつーか」
二人としては、順当に強く頼れるギーラスが自慢できる弟、妹でありたい。
そして、自分たちとは違う存在だと割り切りつつも、それはそれとしてそんな弟からも自慢できる兄、姉でありたい。
承認欲求が強いと思われるかもしれないが、二人はその目標に向けて本気の努力が出来る人間であった。
「……アラッド君は、家族から愛されてるんだね」
「言った通り、良い奴っすからね。まぁ、俺の弟はこう……バチバチに睨んでるっすけど」
「ふっふっふ。そういう人も、ある意味貴重なんじゃないかな」
ガルアの弟、ドラングもアラッドほどではないが、騎士界隈の中でも有名な存在であった。
フールの息子という理由もあるが、アラッドほどではないにしろドラングはしっかりと実績を残しており、同世代の中では頭二つか三つ抜けた有望株であるのは間違いない。
加えて、あのアラッドに対して強いライバル意識を持っているというのも、一部の騎士たちからは非常に高い評価を得ていた。
普通ならアラッドとの実力差に打ちひしがれ、折れて砕け散ってしまうところ、ドラングは今も打倒アラッドを胸に研鑽を積んでいる。
高過ぎる壁に挑んでも意味はないと思われるかもしれないが、その壁に挑戦し続けられる精神は、明らかに並ではない。
騎士たちの中には、そこを評価する者もいる。
「……かもしれないっすね。ただ、兄としてはもう少しこう……自分の幸せ? 的なものを探してほしいっすけどね」
今も学園で学んであろう弟の事を思い出す中、彼らに一つの朗報が届く。
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