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千二百八十一話 生き様
「……ガルア。確か、お前たちがこの人は強いって言ってた冒険者は……鬼人族の女だったか?」
「ディーナさんのことか? あぁ、確かに彼女は鬼人族だけど、それがどうかしたか?」
「その人とパーティーが組んでるメンツに、風を使う剣士っているか?」
「クラートのことか、確かにいるけど……っ、もしかしてクラートに何かあったのかっ!?」
共に過ごした時間は長くない。
それでも、立場は違えどガルアはクラートのことを友人だと思っていた。
友のピンチとなれば、まだ完全に回復はしていなくともそこに向かいたい。
そう思うのは、当たり前の感情だった。
しかし、状況はガルアが想像した内容と異なる。
「何かあったと言えば、何かあったのかもしれないな。ただ安心しろ。死んだとか致命傷を負ったわけじゃない」
「そ、そうか……けど、それなら何があったんだ?」
「……俺はそのクラートって奴を詳しく知らないんだが、達人って呼ばれるような奴なのか?」
「達人? そういうタイプじゃなかったと思うけど」
クラートとは何度も模擬戦を行っており、勝った負けたを繰り返していた。
対人戦の技術はガルアたちの方が上だが、ここぞという時の攻めの嗅覚は冒険者であるクラートの方が上回っている。
そういったバランスもあって勝率はやや二人の方が上だが、負けることは何度もあった。
「そうなのか……それじゃあ、何かを掴んだのかもしれないな」
「……口ぶりから察するに、動きが変わったのか?」
「…………化けた、って言い方が正しいのかもしれないな。今、クラートやディーナって冒険者たちがいる戦地は、クラートってやつが流れを引き寄せ、中核になってる」
「「っっ……」」
同僚からの報告に二人は驚きを隠せなかった。
彼が平民でありながらも鍛錬と実践を積み重ね、自分たちに負けない実力を手に入れたことは認めており、理解している。
そのため、彼が気合を入れ、真っすぐ戦ってその背中に他の者たちが感化され、流れを引き寄せる……といった内容であれば、まだ理解の範疇ではある。
だが、彼がそのままその戦場の中核となり、達人の様な動きで戦っている、というのは理解できない。
「それは、達人の様な動きと関係があるのか?」
「ある……と思うぞ。繊細な動きだけじゃなく……視野が広くなっている、のか? 後衛職との連携も上手い……というか、完璧なのではないか?」
騎士とは、基本的に集団で戦う者。
一人で戦う機会は冒険者よりも少ない。
そのため、目の前の敵だけを見るのではなく、多くの敵や味方の位置を正確に把握する力が求められる。
(動きが変わっただけじゃなく、後衛職との連携も上手くなって、寧ろ完璧で………………何かしらのスキルを得た? 動きにまで……いや、スキルじゃなく本人のこれまでの蓄積が形になる場合も…………けど、本当にスキルを手に入れての変化だったら…………そういう、事なのか?)
ガルアはスキルオタクではなく、剣士でもない。
だが、そのスキルの存在は知っていた。
「……クラートの奴、明鏡止水を手に入れたのかもしれないな」
「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」
ルリナだけではなく同じ部隊の騎士や魔術師、先輩たちは大なり小なり差はあるが、全員面白い顔になっていた。
「が、ガルア……あなた、自分が何を口にしたのか、ちゃんと理解してるの?」
「あぁ、理解してるぞ…………多分な」
口に出してしまってから、ほんの少し自信が薄れていく。
ただ、ガルアの中に他の答えが浮かんでこなかった。
「た、多分って」
「…………なぁ、ルリナ。別に良い事じゃねぇか。クラートが明鏡止水を手に入れたってことは、俺たちの戦力が増したってことだ。なぁ、実際にそっちの戦地じゃあ、アルバース王国側が優勢になってるんだろ」
「あ、あぁ。そうだな………………今でも、こっち側が優勢の戦況だと思う」
「そりゃ良かった……うん。だったら、何もこう……悲観したりすることじゃねぇ」
ガルアが何故こんな事を語り始めたのか、ルリナたちはなんとなく解る。
ただ、それでもガルアが口にした内容が事実であれば、彼らにとって……接近戦をメインに戦う者たちにとって、明確に一歩先に行かれたという事が確定する。
ルリナは特にクラートをライバル視はしておらず、なんなら他の者たちはクラートと対面したことすらない。
ただそれでも……あり得ない出来事と、明確に一歩先に……何十歩と先に行かれたという感覚に、感情がごちゃごちゃになりそうだった。
「っっっ……ふぅーーーーーーーーーーー…………ねぇ、ガルア。なんであんたは、そんな冷静でいられるの」
一旦深呼吸をし、ルリナはガルアに何故そこまで冷静でいられるのかを訪ねた。
クラートが明鏡止水を会得したかもしれないという事にも驚きを隠せないが、そうかもしれないと思ったクラート自身が何故そこまで冷静でいられるのかが解らなかった。
「ん~~~~…………ガルアが、俺たちと違うから、じゃねぇかな」
ガルアはクラートの生き様を、しっかりと覚えていた。
「ディーナさんのことか? あぁ、確かに彼女は鬼人族だけど、それがどうかしたか?」
「その人とパーティーが組んでるメンツに、風を使う剣士っているか?」
「クラートのことか、確かにいるけど……っ、もしかしてクラートに何かあったのかっ!?」
共に過ごした時間は長くない。
それでも、立場は違えどガルアはクラートのことを友人だと思っていた。
友のピンチとなれば、まだ完全に回復はしていなくともそこに向かいたい。
そう思うのは、当たり前の感情だった。
しかし、状況はガルアが想像した内容と異なる。
「何かあったと言えば、何かあったのかもしれないな。ただ安心しろ。死んだとか致命傷を負ったわけじゃない」
「そ、そうか……けど、それなら何があったんだ?」
「……俺はそのクラートって奴を詳しく知らないんだが、達人って呼ばれるような奴なのか?」
「達人? そういうタイプじゃなかったと思うけど」
クラートとは何度も模擬戦を行っており、勝った負けたを繰り返していた。
対人戦の技術はガルアたちの方が上だが、ここぞという時の攻めの嗅覚は冒険者であるクラートの方が上回っている。
そういったバランスもあって勝率はやや二人の方が上だが、負けることは何度もあった。
「そうなのか……それじゃあ、何かを掴んだのかもしれないな」
「……口ぶりから察するに、動きが変わったのか?」
「…………化けた、って言い方が正しいのかもしれないな。今、クラートやディーナって冒険者たちがいる戦地は、クラートってやつが流れを引き寄せ、中核になってる」
「「っっ……」」
同僚からの報告に二人は驚きを隠せなかった。
彼が平民でありながらも鍛錬と実践を積み重ね、自分たちに負けない実力を手に入れたことは認めており、理解している。
そのため、彼が気合を入れ、真っすぐ戦ってその背中に他の者たちが感化され、流れを引き寄せる……といった内容であれば、まだ理解の範疇ではある。
だが、彼がそのままその戦場の中核となり、達人の様な動きで戦っている、というのは理解できない。
「それは、達人の様な動きと関係があるのか?」
「ある……と思うぞ。繊細な動きだけじゃなく……視野が広くなっている、のか? 後衛職との連携も上手い……というか、完璧なのではないか?」
騎士とは、基本的に集団で戦う者。
一人で戦う機会は冒険者よりも少ない。
そのため、目の前の敵だけを見るのではなく、多くの敵や味方の位置を正確に把握する力が求められる。
(動きが変わっただけじゃなく、後衛職との連携も上手くなって、寧ろ完璧で………………何かしらのスキルを得た? 動きにまで……いや、スキルじゃなく本人のこれまでの蓄積が形になる場合も…………けど、本当にスキルを手に入れての変化だったら…………そういう、事なのか?)
ガルアはスキルオタクではなく、剣士でもない。
だが、そのスキルの存在は知っていた。
「……クラートの奴、明鏡止水を手に入れたのかもしれないな」
「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」
ルリナだけではなく同じ部隊の騎士や魔術師、先輩たちは大なり小なり差はあるが、全員面白い顔になっていた。
「が、ガルア……あなた、自分が何を口にしたのか、ちゃんと理解してるの?」
「あぁ、理解してるぞ…………多分な」
口に出してしまってから、ほんの少し自信が薄れていく。
ただ、ガルアの中に他の答えが浮かんでこなかった。
「た、多分って」
「…………なぁ、ルリナ。別に良い事じゃねぇか。クラートが明鏡止水を手に入れたってことは、俺たちの戦力が増したってことだ。なぁ、実際にそっちの戦地じゃあ、アルバース王国側が優勢になってるんだろ」
「あ、あぁ。そうだな………………今でも、こっち側が優勢の戦況だと思う」
「そりゃ良かった……うん。だったら、何もこう……悲観したりすることじゃねぇ」
ガルアが何故こんな事を語り始めたのか、ルリナたちはなんとなく解る。
ただ、それでもガルアが口にした内容が事実であれば、彼らにとって……接近戦をメインに戦う者たちにとって、明確に一歩先に行かれたという事が確定する。
ルリナは特にクラートをライバル視はしておらず、なんなら他の者たちはクラートと対面したことすらない。
ただそれでも……あり得ない出来事と、明確に一歩先に……何十歩と先に行かれたという感覚に、感情がごちゃごちゃになりそうだった。
「っっっ……ふぅーーーーーーーーーーー…………ねぇ、ガルア。なんであんたは、そんな冷静でいられるの」
一旦深呼吸をし、ルリナはガルアに何故そこまで冷静でいられるのかを訪ねた。
クラートが明鏡止水を会得したかもしれないという事にも驚きを隠せないが、そうかもしれないと思ったクラート自身が何故そこまで冷静でいられるのかが解らなかった。
「ん~~~~…………ガルアが、俺たちと違うから、じゃねぇかな」
ガルアはクラートの生き様を、しっかりと覚えていた。
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