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千二百八十七話 覚えていない?
「……ッッ、ここは」
「医務室だよ」
「っ、先輩!!! つッッッ!!!!????」
意識を失っている間にガルアとルリナは医務室に運ばれていた。
魔法があるため、回復すれば怪我はなんとかなるものの、体力まではどうにもならない。
そして傷が治ったとしても痛みまでは消えないため、血の気が多すぎたり少しでも敵を殲滅しようと正義感が爆発してる患者を収監するために結界が張られている。
「安静にしておくんだ。傷は回復してるし、魔力の方もある程度は回復してる。けど、体力の疲労までは元に戻らないことは理解してるだろう。それと、受けたダメージまでは消えない……いや、二人の場合は自傷に近いかな」
「自傷、ですか?」
「…………その様子だと、あまり覚えてないみたいだね」
二人のお目付け役である先輩騎士は何があったのか語り始めた。
「あの大男は、一度目の破山の後に、狂化を発動したんだ」
「……それは、なんとなく覚えてます」
「それは良かった。そんな大男を相手に、二人は迷わず突っ込んだ。そこも覚えてるかい」
「……………………薄っすらと、記憶に残っているかと」
一部だけ記憶喪失になったわけではなく、本当に自分たちがそういった行動を行ったという記憶はあった。
だが、普通に考えればあり得ない行動というのを理解しているからこそ……何故、自分たちがそんな行動を取ってしまったのかという疑問が浮かぶ。
(そりゃ俺とルリナであの大男をぶっ倒せたらとは思って戦ってた……それは間違いねぇ。けど、あれは…………バカだよな?)
先輩騎士の意図と反し、時間を稼ぐのではなく最後に自分たちの力で倒そうとした。
それはガルアも覚えており、否定もしない。
ただ、あの身体能力、パワーに狂化のバフ効果が加わった状態からの大剣技、破山。
いくら自分が瞬時に最高の一撃をルリナと同時に放ったとしても、突破できるイメージが湧かない。
「あの、俺たちは……誰かに助けられたんすか」
「いいや。あの強敵を倒したのは、君たちだよ」
「…………」
「ふふ、信じられないって顔だね」
「う、うっす……すいません。そこに関しては、本当に記憶が吹っ飛んでて」
「なるほどね。あの段階で既に意識が飛んでたとしたら……どうやって倒したのか覚えてなくても仕方ないか」
先輩騎士としては、絶対に忘れらない光景であった。
これから五年、十年……二十年経っても鮮明に思い出せる光景だと断言できる。
「まず、ガルアは全身に炎を纏って突貫した。そして、ルリナも全身に水を纏って君と一緒に突貫したんだ」
「……ふぅーーーーーーー………………本当に、迷惑を掛けました」
節々の痛みに耐えながら、ガルアは先輩に向けて謝罪の言葉を述べた。
もしかしたら、先輩は自分たちの思いを汲んでいてくれたのかもしれない。
だとしても、状況を考えればまだ立ち向かにしても、真正面から破山を対応しようとするのは、あまりにも愚か過ぎるとしか言いようがない。
「頭を上げて……正直なことを言うと、ミスをしたのは僕だよ。あの時、貫通力を最大限まで高めた刺突を放つ準備は出来ていた。本当は、君たち二人が破山と接触する前に攻撃して、二人の手助けをするつもりだったんだ」
「そ、そうだったんですね」
やはり自分たちの思いがバレていたと解り、恥ずかしさで小さくなるガルア。
「けど、狂化を発動したあの大剣士を前にして立ち向かう二人に、可能性を感じてしまったんだ」
「…………」
「破山を使えるというだけでも、あの大男は大剣士として非常にレベルが高い。その上に、狂化を使えた。しっかりと……援軍が来たとしても、自力で脱出できる手札を隠し持ってたんだ」
「可能性はありそうですよね……狂化………………あっ……~~~~~~~~っっっ」
「ん? 何か思い出したのか?」
「……その、なんであそこで引かずに真正面から挑んだのか、思い出して」
自分なら、自分たちであれば挑んでしまう可能性がある。
それが解るからこそ、恥ずかしさを感じずにはいられず……顔が赤くなってしまう。
「狂化は、弟のアラッドも使ってるスキルなんですよ」
「そういえばそうだったね……あぁ~~~~、そういう事か…………直近まで話してた内容と被りそうだね」
「……そういうことになりますね」
親や兄弟が自慢できる存在になりたい。
だからこそ、本気で強くなろうと前を向き続けている。
そんな二人にとって、狂化を使う相手から……逃げることは出来ない。
寧ろ、だからこそ潰してやると、ぶっ倒してやると闘志が最高潮に燃え上がる。
「だからこそ、あんなに良い笑みを零してたんだね」
「…………本当に、すいません」
冒険者であるアラッドであれば「はは、やっぱり零してましたか? なんかこう、色々と昂っちゃって」と言いそうだが、ガルアは冒険者ではなく騎士である。
そして、今は戦争中。
戦闘に楽しさを感じてる場合ではないことは重々理解している。
だからこそ、再度やってしまったという気持ちがあふれ出す。
「僕は気にしてないよ。気付いてなかったってことは、本能的な問題。そこら辺はどうしようもない部分だよ。さて、話を戻すけど、二人が自身の得意な属性を纏って突貫し、同時に突きを放った。その瞬間、あり得ない衝撃が起きて破山を消し飛ばし、そのまま大男が持つ大剣の一部を削り、脇腹まで削り取ったんだ」
「………………な、なるほど」
どういった状況だったのか、ある程度イメージはできた。
しかし、何故そうなったのかは全くもって解らないガルアだった。
「医務室だよ」
「っ、先輩!!! つッッッ!!!!????」
意識を失っている間にガルアとルリナは医務室に運ばれていた。
魔法があるため、回復すれば怪我はなんとかなるものの、体力まではどうにもならない。
そして傷が治ったとしても痛みまでは消えないため、血の気が多すぎたり少しでも敵を殲滅しようと正義感が爆発してる患者を収監するために結界が張られている。
「安静にしておくんだ。傷は回復してるし、魔力の方もある程度は回復してる。けど、体力の疲労までは元に戻らないことは理解してるだろう。それと、受けたダメージまでは消えない……いや、二人の場合は自傷に近いかな」
「自傷、ですか?」
「…………その様子だと、あまり覚えてないみたいだね」
二人のお目付け役である先輩騎士は何があったのか語り始めた。
「あの大男は、一度目の破山の後に、狂化を発動したんだ」
「……それは、なんとなく覚えてます」
「それは良かった。そんな大男を相手に、二人は迷わず突っ込んだ。そこも覚えてるかい」
「……………………薄っすらと、記憶に残っているかと」
一部だけ記憶喪失になったわけではなく、本当に自分たちがそういった行動を行ったという記憶はあった。
だが、普通に考えればあり得ない行動というのを理解しているからこそ……何故、自分たちがそんな行動を取ってしまったのかという疑問が浮かぶ。
(そりゃ俺とルリナであの大男をぶっ倒せたらとは思って戦ってた……それは間違いねぇ。けど、あれは…………バカだよな?)
先輩騎士の意図と反し、時間を稼ぐのではなく最後に自分たちの力で倒そうとした。
それはガルアも覚えており、否定もしない。
ただ、あの身体能力、パワーに狂化のバフ効果が加わった状態からの大剣技、破山。
いくら自分が瞬時に最高の一撃をルリナと同時に放ったとしても、突破できるイメージが湧かない。
「あの、俺たちは……誰かに助けられたんすか」
「いいや。あの強敵を倒したのは、君たちだよ」
「…………」
「ふふ、信じられないって顔だね」
「う、うっす……すいません。そこに関しては、本当に記憶が吹っ飛んでて」
「なるほどね。あの段階で既に意識が飛んでたとしたら……どうやって倒したのか覚えてなくても仕方ないか」
先輩騎士としては、絶対に忘れらない光景であった。
これから五年、十年……二十年経っても鮮明に思い出せる光景だと断言できる。
「まず、ガルアは全身に炎を纏って突貫した。そして、ルリナも全身に水を纏って君と一緒に突貫したんだ」
「……ふぅーーーーーーー………………本当に、迷惑を掛けました」
節々の痛みに耐えながら、ガルアは先輩に向けて謝罪の言葉を述べた。
もしかしたら、先輩は自分たちの思いを汲んでいてくれたのかもしれない。
だとしても、状況を考えればまだ立ち向かにしても、真正面から破山を対応しようとするのは、あまりにも愚か過ぎるとしか言いようがない。
「頭を上げて……正直なことを言うと、ミスをしたのは僕だよ。あの時、貫通力を最大限まで高めた刺突を放つ準備は出来ていた。本当は、君たち二人が破山と接触する前に攻撃して、二人の手助けをするつもりだったんだ」
「そ、そうだったんですね」
やはり自分たちの思いがバレていたと解り、恥ずかしさで小さくなるガルア。
「けど、狂化を発動したあの大剣士を前にして立ち向かう二人に、可能性を感じてしまったんだ」
「…………」
「破山を使えるというだけでも、あの大男は大剣士として非常にレベルが高い。その上に、狂化を使えた。しっかりと……援軍が来たとしても、自力で脱出できる手札を隠し持ってたんだ」
「可能性はありそうですよね……狂化………………あっ……~~~~~~~~っっっ」
「ん? 何か思い出したのか?」
「……その、なんであそこで引かずに真正面から挑んだのか、思い出して」
自分なら、自分たちであれば挑んでしまう可能性がある。
それが解るからこそ、恥ずかしさを感じずにはいられず……顔が赤くなってしまう。
「狂化は、弟のアラッドも使ってるスキルなんですよ」
「そういえばそうだったね……あぁ~~~~、そういう事か…………直近まで話してた内容と被りそうだね」
「……そういうことになりますね」
親や兄弟が自慢できる存在になりたい。
だからこそ、本気で強くなろうと前を向き続けている。
そんな二人にとって、狂化を使う相手から……逃げることは出来ない。
寧ろ、だからこそ潰してやると、ぶっ倒してやると闘志が最高潮に燃え上がる。
「だからこそ、あんなに良い笑みを零してたんだね」
「…………本当に、すいません」
冒険者であるアラッドであれば「はは、やっぱり零してましたか? なんかこう、色々と昂っちゃって」と言いそうだが、ガルアは冒険者ではなく騎士である。
そして、今は戦争中。
戦闘に楽しさを感じてる場合ではないことは重々理解している。
だからこそ、再度やってしまったという気持ちがあふれ出す。
「僕は気にしてないよ。気付いてなかったってことは、本能的な問題。そこら辺はどうしようもない部分だよ。さて、話を戻すけど、二人が自身の得意な属性を纏って突貫し、同時に突きを放った。その瞬間、あり得ない衝撃が起きて破山を消し飛ばし、そのまま大男が持つ大剣の一部を削り、脇腹まで削り取ったんだ」
「………………な、なるほど」
どういった状況だったのか、ある程度イメージはできた。
しかし、何故そうなったのかは全くもって解らないガルアだった。
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