スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千二百八十八話 シンクロと融合

「明確な定義、法則はないけど、複数人の攻撃が完全にシンクロした状態で放たれた時、その威力が数倍から数十倍に膨れ上がることがあるんだ」

「……なんですか、それ」

侯爵家の令息として様々な知識、情報を耳にしてきたガルア。

しかし、先輩から語られた内容は今まで一度も聞いたことがなかった。

「体技の練度を高め、属性魔法のスキルを覚えると、竜を放つことは知っているよね」

「はい、それは知ってるっす」

「一部では合体技とかって呼ばれてるけど、それと似たような感じかな」

「合体技、っすか」

「そう。ガルアの刺突とルリナの刺突が合体したことで威力が何倍にも膨れ上がり、破山を打ち破ったんだ」

「……どうして、その合体技……現象に、名前がないんですか」

自分たちの力だけでは狂化状態となった大剣士が放つ破山を打ち破れないことは解っているため、そういった事が起きたというのは受け入れられる。

だが、それならばどうしてそういった現象に名前がないのかという疑問が浮かび上がる。

「再現性がないから、らしいよ」

「っ……つまり、俺とルリナが同じ動きをすることは出来ないと」

「ん~~っとねぇ、そこに関しては解らないんだよね」

「そうなんですか?」

「うん。仲は良いけど血の繋がってない者同士の攻撃で起こったり、逆に仲が悪い人たちの同時攻撃でも同じことが起こったりするらしい」

「……血の繋がりがある者同士だと、逆に何度も起こる可能性があると」

「本当に可能性があるかも、って程度らしいけどね」

先輩騎士も人から聞いた話であるため、殆ど信じていなかった。

しかし、今回目の前で実際にその光景を見た。
となると、信じないわけにはいかなかった。

「でも、血の繋がりがある人物同士でも、同じ武器を使うかは解らないでしょ」

「っすね……それじゃあ、今回起こったのは武器は違うけど、同じ突きの動作だったからってことすか」

「そう仮定出来るね」

「…………けど、それならさすがに武器の違いは良くても、属性は同じじゃなきゃダメだと思うんすけど」

「僕も同じ考えだけど、炎と水、この二つは相性が悪そうでそうでもないところがあるらしい」

「そうでもない部分…………」

戦場に戻ろうとしても大して役に立てないだろうと悟ったからか、ガルアはじっくりと考え込んだ。

「…………っ、確かその二つがぶつかり合う……混ざり合うと、消滅という現象を起こすんでしたっけ」

「らしいね。今回、ただ二人の攻撃が混ざり合っただけではなく、消滅まで発生した」

実際は消滅の一つ前に爆発という現象が起こるのだが、二人のシンクロは飛び越えて消滅を起こしてしまった。

「攻撃の威力が数倍以上に膨れ上がり、そこに消滅が加わった……それなら、自分たちの力だけであの大剣士を倒せたという話にも納得できるかい」

「……そうっすね。一応、なんとか納得出来ました」

納得は出来たが、ガルアのテンションはあまり高くなかった。

「まったく、どうしてそんなに沈むんだい? 騎士は戦果を挙げてなんぼだと思うけど」

戦ったのは先輩騎士を含め、十名以上が狂人大男と戦っていた。

だが、止めを刺したのは、戦いを終わらせたのは間違いなくガルアとルリナである。
狂人大男の実力を考えれば、応援が到着するまでに数十以上の戦闘者が殺されていたかもしれない。

それを考えれば、狂人大男を仕留めた功績は決して小さくない。

とはいえ、ガルアとしては納得できるものではなかった。

「違いますよ。既に確定してるのかは知らないっすけど、あれは先輩の判断があったからこその討伐じゃないっすか」

先輩騎士が話してくれた内容が事実であれば、確かに止めを刺したのは自分たち。

それは良いとして、功績が誰のものになるのかという話に関しては、自分たちではなく先輩騎士のものだというのがガルアの考えだった。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、それでも君たちが仕留めるまで、予想以上に削れていなかった……一緒に攻撃してくれた他の人たちを悪く言うつもりはないけど、それが事実。だから、仕留めた二人の功績だと僕は思うよ」

「~~~~~っっ…………はぁ~~~~。ここで言い争っても不毛なんでしょうね」

「ふふ、そうだね。最終的に決めるのは上の人たちだから」

ガルアは軽くため息を吐き、先輩騎士は苦笑いを浮かべる。

基本的に功績が上の人間の贔屓によって操作されることはない。
ただ、複数人が絡み合っている場合は、最終的に止めを刺した人物の功績になることが多い。

「にしても…………いや、あれっすね。あんな強い敵を倒せただけで有難いことっすよね」

「……何か、思うところがあるのかな」

「贅沢な話なのは解ってますけど、今回の戦いでこう……明確に自分の力だと解るものが増えた訳じゃないんだなって」

同僚たちや先輩たちの前でカッコつけたものの、多少なりともガルアはクラートに嫉妬を感じていた。

だからこそ、本当に自分たちの力で倒せたのなら、新しい力が備わったのではないかと期待してしまう。

「確かに贅沢な悩みだね……でも、案外身に付いてたりするんじゃないかい。僕はガルアじゃないから解らないけどね」

「は、はぁ」

先輩騎士は鑑定系のスキルは持っておらず、持っていたとしても後輩のステータスを勝手に覗くような真似はしない。

ただ、先輩の勘的に……ガルアとルリナの二人が、全く変わっていないとは思えなかった。
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