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千三百一話 削り、燃やす
「…………」
自身の頭部に向けて放たれた槍を避けるのではなく、そのままつかみ取ったディーナ。
そして……ブローズたちに視線を送った後、軽く跳躍。
(あそこ、だな)
ビガルと同じく完成された劇薬を使用して暴れている強者の足元に標準を定め、全身全霊でぶん投げた。
当然……彼女の切り札である修羅金剛を使用した本気の投擲。
強敵は既に他の騎士や冒険者が戦っているため、彼らの戦闘を邪魔しない速さで投擲する必要があった。
結果、ディーナが投擲した槍は敵の脚の甲に突き刺さり、一時的ではあるがその場に縫い留めることが出来た。
「よし」
「お見事、なんだよね?」
「あぁ、上手く当てられた……さて」
まだ戦いは終わっていない。
まだ……もっと、斬り裂かなければならない。
敵がいる方へ踏み出そうとするディーナに、クラートは待ったをかけた。
「……どうした、クラート」
「他の戦場に行きたい気持ちも、行こうとする理由も解る。けど、まずはしっかりと回復しよう」
「っ、しかし」
「まだ戦えるのも解るけど、万全な状態とは言えないよね」
「…………」
的確に痛いところを突かれ、何も返せなくなってしまうディーナ。
戦いが始まってしまった以上、直ぐに万全な状態に戻るのは非常に難しい。
しかし、傷を癒して魔力を回復しなければ、勝てた戦いを取りこぼしてしまう可能性が大いにある。
(……そうだ……どうして、忘れていたんだ)
確かにディーナは疲労していた。
だが、削れていたのはディーナだけではない。
三日目が始まってから戦い続けていたのはクラートやオルフェン、ブローズも同じ。
クラートやオルフェンは言わずもがな、ブローズも……先日のザルクとレウス、竜騎士のコンビと行った激闘よりも消耗していた。
確かに、クラートの言う通り、ディーナはまだ戦い続けられる。
それでも……全員では戦い続けられない。
無理をすれば、最悪のケースが起こらないとは断言できない。
「すまない。皆と共に戦っていたことを忘れていた」
「大丈夫だよ。その熱さが、あの巨人族を仕留めたはずだから」
「世の中、それを認めて謝れる人間の方が少ないんだ。気にする必要はない」
「ガルルルゥ」
一旦後方へ下がり、体力の回復に努める。
背を向ける……そんな瞬間を狙い、ビガルがくるまでは前線にいた兵士、騎士たちが戻ってきていた。
「ふっ!!!!!!」
「「「「「「「「「「っっっ!!!!!! ……」」」」」」」」」」
無意味であった。
油断大敵を乗り越えた。
そう思ったところでの強襲。
悪くない判断ではあったものの、今の研ぎ澄まされたディーナには意味の無い強襲であり、最後の最後で再び十人以上が……覇鬼の斬撃により、胴や首とおさらばすることとなった。
「はぁ、はぁ……っ、チッッ!!!!!」
「おいおい、そんな嫌そうな、顔、しないでくれよぉおおおおおおおおおお!!! ギーラスちゃんよおおお!!」
場所は変わり、ギーラスたちが活動している戦場。
三日目の戦争が始まり、初日や二日目と比べて激しさが増していた。
それでも……戦況はこれまでと同じく、ギーラスたちが優位に進めていた。
三日目はギーラスたちの部隊にガルアたちも合流。
ギーラスたちと同世代の騎士たちと比べても、二人の実力は劣ってないため、ガルアとルリナが足を引っ張ることもなかった。
だが、その好調をぶち込ますように素の状態でもギーラスに負けない強さを持つ騎士が現れた。
そして……その男はビガルと同じく、完成された劇薬を服用。
身体能力の大幅向上、痛覚の麻痺に再生。
単純な強さでギーラスを上回り、討伐するためにはどうしても戦力をそちらに集中しなければならない。
(困ったわね……一撃で消し飛ばしたいところだけど、そうするとギーラス君たちが……それに、この距離だと……ギリギリ反応されそうなのよね)
その戦場には後方で指揮を執っていた魔術師の一人が前に出ており、劇薬を使用した強者たちの対処に人を奪われた結果、手薄になりそうな戦場の補完まで行っていた。
多くの局面を補佐するとなると、必要なのは強力な一撃ではなく、砲台として前衛たちをサポートし続けるだけの維持力。
(普通の丸薬では考えられないほどの上昇に加えて、再生力と痛覚の麻痺…………言葉は喋れているけど、あの表情…………麻薬の成分が混合されてる? それに…………あれほどの力を得るためとなると…………ッッ、えぐいことをするわね)
女性魔術師は錬金術師としての一面を持ち合わせており、ゴリディア帝国の強者たちが服用したであろう劇薬の正体を……ある程度把握できていた。
強者たちが強化、得た内容を薬で得られるようにするためには……最高級の薬草やモンスターの素材が必要となる。
ただ……それは、リスクなしで効果を得るため。
複数の雄叫びから、劇薬を使用した強者たちは複数いることが考えられる。
それだけの数で……他の戦場でも使用している強者がいることを考慮すると、素材の用意は非常に困難を極める。
しかし、リスクを無視して設計する場合……薬の素材は最高級の薬草やモンスターの素材でなくとも構わない。
その代わりに、彼らは己の命を削り、燃やすことになる。
自身の頭部に向けて放たれた槍を避けるのではなく、そのままつかみ取ったディーナ。
そして……ブローズたちに視線を送った後、軽く跳躍。
(あそこ、だな)
ビガルと同じく完成された劇薬を使用して暴れている強者の足元に標準を定め、全身全霊でぶん投げた。
当然……彼女の切り札である修羅金剛を使用した本気の投擲。
強敵は既に他の騎士や冒険者が戦っているため、彼らの戦闘を邪魔しない速さで投擲する必要があった。
結果、ディーナが投擲した槍は敵の脚の甲に突き刺さり、一時的ではあるがその場に縫い留めることが出来た。
「よし」
「お見事、なんだよね?」
「あぁ、上手く当てられた……さて」
まだ戦いは終わっていない。
まだ……もっと、斬り裂かなければならない。
敵がいる方へ踏み出そうとするディーナに、クラートは待ったをかけた。
「……どうした、クラート」
「他の戦場に行きたい気持ちも、行こうとする理由も解る。けど、まずはしっかりと回復しよう」
「っ、しかし」
「まだ戦えるのも解るけど、万全な状態とは言えないよね」
「…………」
的確に痛いところを突かれ、何も返せなくなってしまうディーナ。
戦いが始まってしまった以上、直ぐに万全な状態に戻るのは非常に難しい。
しかし、傷を癒して魔力を回復しなければ、勝てた戦いを取りこぼしてしまう可能性が大いにある。
(……そうだ……どうして、忘れていたんだ)
確かにディーナは疲労していた。
だが、削れていたのはディーナだけではない。
三日目が始まってから戦い続けていたのはクラートやオルフェン、ブローズも同じ。
クラートやオルフェンは言わずもがな、ブローズも……先日のザルクとレウス、竜騎士のコンビと行った激闘よりも消耗していた。
確かに、クラートの言う通り、ディーナはまだ戦い続けられる。
それでも……全員では戦い続けられない。
無理をすれば、最悪のケースが起こらないとは断言できない。
「すまない。皆と共に戦っていたことを忘れていた」
「大丈夫だよ。その熱さが、あの巨人族を仕留めたはずだから」
「世の中、それを認めて謝れる人間の方が少ないんだ。気にする必要はない」
「ガルルルゥ」
一旦後方へ下がり、体力の回復に努める。
背を向ける……そんな瞬間を狙い、ビガルがくるまでは前線にいた兵士、騎士たちが戻ってきていた。
「ふっ!!!!!!」
「「「「「「「「「「っっっ!!!!!! ……」」」」」」」」」」
無意味であった。
油断大敵を乗り越えた。
そう思ったところでの強襲。
悪くない判断ではあったものの、今の研ぎ澄まされたディーナには意味の無い強襲であり、最後の最後で再び十人以上が……覇鬼の斬撃により、胴や首とおさらばすることとなった。
「はぁ、はぁ……っ、チッッ!!!!!」
「おいおい、そんな嫌そうな、顔、しないでくれよぉおおおおおおおおおお!!! ギーラスちゃんよおおお!!」
場所は変わり、ギーラスたちが活動している戦場。
三日目の戦争が始まり、初日や二日目と比べて激しさが増していた。
それでも……戦況はこれまでと同じく、ギーラスたちが優位に進めていた。
三日目はギーラスたちの部隊にガルアたちも合流。
ギーラスたちと同世代の騎士たちと比べても、二人の実力は劣ってないため、ガルアとルリナが足を引っ張ることもなかった。
だが、その好調をぶち込ますように素の状態でもギーラスに負けない強さを持つ騎士が現れた。
そして……その男はビガルと同じく、完成された劇薬を服用。
身体能力の大幅向上、痛覚の麻痺に再生。
単純な強さでギーラスを上回り、討伐するためにはどうしても戦力をそちらに集中しなければならない。
(困ったわね……一撃で消し飛ばしたいところだけど、そうするとギーラス君たちが……それに、この距離だと……ギリギリ反応されそうなのよね)
その戦場には後方で指揮を執っていた魔術師の一人が前に出ており、劇薬を使用した強者たちの対処に人を奪われた結果、手薄になりそうな戦場の補完まで行っていた。
多くの局面を補佐するとなると、必要なのは強力な一撃ではなく、砲台として前衛たちをサポートし続けるだけの維持力。
(普通の丸薬では考えられないほどの上昇に加えて、再生力と痛覚の麻痺…………言葉は喋れているけど、あの表情…………麻薬の成分が混合されてる? それに…………あれほどの力を得るためとなると…………ッッ、えぐいことをするわね)
女性魔術師は錬金術師としての一面を持ち合わせており、ゴリディア帝国の強者たちが服用したであろう劇薬の正体を……ある程度把握できていた。
強者たちが強化、得た内容を薬で得られるようにするためには……最高級の薬草やモンスターの素材が必要となる。
ただ……それは、リスクなしで効果を得るため。
複数の雄叫びから、劇薬を使用した強者たちは複数いることが考えられる。
それだけの数で……他の戦場でも使用している強者がいることを考慮すると、素材の用意は非常に困難を極める。
しかし、リスクを無視して設計する場合……薬の素材は最高級の薬草やモンスターの素材でなくとも構わない。
その代わりに、彼らは己の命を削り、燃やすことになる。
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