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千三百四十四話 収穫
「時間は……そうだな。三分にしておくか」
「解ったよ」
ガルーレが治癒師を連れてきてから更に準備運動を重ね、ようやく試合が始まる。
最初はアラッドとスティーム。
二人の手には普段から使用しているロングソードと双剣が握られていた。
「それでは、始め!!」
「「ッッ!!!」」
アラッド、スティーム……両者共に様子を伺うような真似はせず、初っ端からぶつかり合う。
(魔力やスキルを使用してない状態で、これか)
画家の男は、戦闘経験が豊富という訳ではないが、多少は戦える。
それでも本当に多少であり、戦闘力は低い。
しかし、二人の動きを十分追うことが出来ている。
元々今回の様に、実際に描く人の戦いっぷりを観てから描くという流れを何度も行っていた。
そして何かしらの刺激を得るため、よく闘技場にも通っているため、ただ物の良し悪しを見分ける眼だけではなく、戦いを観る眼も養われていた。
(さて……そろそろ、上げていくか)
身体強化、疾風を発動。
そして、旋風を身に纏う。
(相手は病み上がり、なんて、言ってられないよね)
スティームも同じく強化スキルを発動していき、雷を身に纏って対抗。
手数ではスティームが勝るも、アラッドは難なく一対二という手数に対応し、逆にスティームを追い詰め……強烈な斬撃を叩き込む。
「っっっ!!!! っ、疾ッッ!!!!」
押し飛ばされて距離が開いた瞬間に多数の疾風斬が飛来するも、全てを雷斬波で撃ち落とす。
落とし終えたタイミングでアラッドの斬撃が迫るが……次は、押し飛ばされることはなかった。
「やるじゃ、ないか、スティーム!!」
「速さだけ、じゃ……いけない、からねッッッ!!!!!!」
数秒ほど拮抗したあと、二人と弾き合いながら距離を取り、再び苛烈な斬撃戦が行われる。
(なるほど……これが、少数精鋭でも問題ないと国が判断した部隊の主力たちか…………ゴリディア帝国が恐れるわけだよ)
戦闘に関わらないだけで、闘技場で行われる試合をよく観ていることもあって、戦闘に関する知識は多少なりとも持っている画家。
彼から視て、アラッドとスティームは……文字通り、頭がおかしいだった。
男はアラッドがフローレンスと激突していた日、惜しくも依頼された仕事の締め切りが迫っていたこともあり、トーナメントの歴史に残る戦いを観れなかった。
そのため、アラッドが強い強いという話は勝手に耳に入ってきていたが、その強さを生で観たことは一度もなかった。
しかし今……噂通りの力を発揮する英雄と、並び立とうとする仲間の強さを観て、感じ取れていた。
「…………ねぇ、フローレンスさん。もしかして……もしかする、かな?」
「そうですね……本気にはなるべく本気で返したいと言っていたので……やるでしょう」
「だよね~~~。まっ、そのための治癒師さんだし、大丈夫だよね」
「「?」」
二人が何を話しているのか解らない画家と治癒師。
その内容は……ラスト十秒になったタイミングで行われた。
「「ーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」」
それは、狂化の発動と赤雷の展開。
(なっ!!!!????)
ただ戦いを観るだけに関しては、そこら辺の冒険者や兵士よりも優れてた眼を持っている画家。
そんな彼の眼を持ってしても、なんとか線を、影を負うだけで精一杯。
(は、ははは……昨日とは、また違う意味で、驚かされた、ね)
最強の少数精鋭であり、多くの強者を打ち破り、戦争を終わらせた者。
その強さを、圧倒的な格の違い……アラッドが彼を一流と感じたように、彼もアラッド……そしてスティームも一流だと本能で思い知らされた。
「っ、そこまで!!!!!!」
「っと。ふぅーーー……まっ、リハビリとしては悪くなかったか?」
「そうだね」
最初から二人とも試合の範疇で本気を出し、最後はアラッドは狂化を、スティームは赤雷を使用したこともあり、両者の体にはいくつかの切傷と火傷が刻まれていた。
「直ぐに治します」
「すいません、ありがとうございます」
「それが仕事ですので。それに……治癒師としてはあまり良い感想ではありませんが、良いものを観させてもらいました。あれほどの試合はそう観れるものではないので」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「アラッドぉ~~~~」
「ん?」
「本気で戦うのは良いとして、最後のあれは……いや、確かにあれが僕とアラッドの本気ではあるけどさ」
文句を言いかけるも、何故最後にアラッドは狂化を発動し、自分に赤雷を使うように促したのかを把握し、文句を飲み込んでしまった。
「はは、解ってくれてありがとな」
「もぅ……それで、実際はどうだったの」
「……七割ぐらい、か? ちゃんと回復はしてるけど、まだ万全じゃないな」
「やっぱりそうだよね」
スティームは赤雷を使用した。
しかし、アラッドも狂化を使った。
全力の狂化ではなかったものの、それでも切り札の一つを切った状態でぶつかり合った。
その中でスティームは幾つかの雷斬で切り裂くことに成功した。
ただ、それが仮初の結果であることは、なんとなく解っていた。
(確認出来て良かった……まだ、まだまだこれからだ)
友の背に触れてはいない。
それが確認できただけ、スティームにとっては収穫と言える試合だった。
「解ったよ」
ガルーレが治癒師を連れてきてから更に準備運動を重ね、ようやく試合が始まる。
最初はアラッドとスティーム。
二人の手には普段から使用しているロングソードと双剣が握られていた。
「それでは、始め!!」
「「ッッ!!!」」
アラッド、スティーム……両者共に様子を伺うような真似はせず、初っ端からぶつかり合う。
(魔力やスキルを使用してない状態で、これか)
画家の男は、戦闘経験が豊富という訳ではないが、多少は戦える。
それでも本当に多少であり、戦闘力は低い。
しかし、二人の動きを十分追うことが出来ている。
元々今回の様に、実際に描く人の戦いっぷりを観てから描くという流れを何度も行っていた。
そして何かしらの刺激を得るため、よく闘技場にも通っているため、ただ物の良し悪しを見分ける眼だけではなく、戦いを観る眼も養われていた。
(さて……そろそろ、上げていくか)
身体強化、疾風を発動。
そして、旋風を身に纏う。
(相手は病み上がり、なんて、言ってられないよね)
スティームも同じく強化スキルを発動していき、雷を身に纏って対抗。
手数ではスティームが勝るも、アラッドは難なく一対二という手数に対応し、逆にスティームを追い詰め……強烈な斬撃を叩き込む。
「っっっ!!!! っ、疾ッッ!!!!」
押し飛ばされて距離が開いた瞬間に多数の疾風斬が飛来するも、全てを雷斬波で撃ち落とす。
落とし終えたタイミングでアラッドの斬撃が迫るが……次は、押し飛ばされることはなかった。
「やるじゃ、ないか、スティーム!!」
「速さだけ、じゃ……いけない、からねッッッ!!!!!!」
数秒ほど拮抗したあと、二人と弾き合いながら距離を取り、再び苛烈な斬撃戦が行われる。
(なるほど……これが、少数精鋭でも問題ないと国が判断した部隊の主力たちか…………ゴリディア帝国が恐れるわけだよ)
戦闘に関わらないだけで、闘技場で行われる試合をよく観ていることもあって、戦闘に関する知識は多少なりとも持っている画家。
彼から視て、アラッドとスティームは……文字通り、頭がおかしいだった。
男はアラッドがフローレンスと激突していた日、惜しくも依頼された仕事の締め切りが迫っていたこともあり、トーナメントの歴史に残る戦いを観れなかった。
そのため、アラッドが強い強いという話は勝手に耳に入ってきていたが、その強さを生で観たことは一度もなかった。
しかし今……噂通りの力を発揮する英雄と、並び立とうとする仲間の強さを観て、感じ取れていた。
「…………ねぇ、フローレンスさん。もしかして……もしかする、かな?」
「そうですね……本気にはなるべく本気で返したいと言っていたので……やるでしょう」
「だよね~~~。まっ、そのための治癒師さんだし、大丈夫だよね」
「「?」」
二人が何を話しているのか解らない画家と治癒師。
その内容は……ラスト十秒になったタイミングで行われた。
「「ーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」」
それは、狂化の発動と赤雷の展開。
(なっ!!!!????)
ただ戦いを観るだけに関しては、そこら辺の冒険者や兵士よりも優れてた眼を持っている画家。
そんな彼の眼を持ってしても、なんとか線を、影を負うだけで精一杯。
(は、ははは……昨日とは、また違う意味で、驚かされた、ね)
最強の少数精鋭であり、多くの強者を打ち破り、戦争を終わらせた者。
その強さを、圧倒的な格の違い……アラッドが彼を一流と感じたように、彼もアラッド……そしてスティームも一流だと本能で思い知らされた。
「っ、そこまで!!!!!!」
「っと。ふぅーーー……まっ、リハビリとしては悪くなかったか?」
「そうだね」
最初から二人とも試合の範疇で本気を出し、最後はアラッドは狂化を、スティームは赤雷を使用したこともあり、両者の体にはいくつかの切傷と火傷が刻まれていた。
「直ぐに治します」
「すいません、ありがとうございます」
「それが仕事ですので。それに……治癒師としてはあまり良い感想ではありませんが、良いものを観させてもらいました。あれほどの試合はそう観れるものではないので」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「アラッドぉ~~~~」
「ん?」
「本気で戦うのは良いとして、最後のあれは……いや、確かにあれが僕とアラッドの本気ではあるけどさ」
文句を言いかけるも、何故最後にアラッドは狂化を発動し、自分に赤雷を使うように促したのかを把握し、文句を飲み込んでしまった。
「はは、解ってくれてありがとな」
「もぅ……それで、実際はどうだったの」
「……七割ぐらい、か? ちゃんと回復はしてるけど、まだ万全じゃないな」
「やっぱりそうだよね」
スティームは赤雷を使用した。
しかし、アラッドも狂化を使った。
全力の狂化ではなかったものの、それでも切り札の一つを切った状態でぶつかり合った。
その中でスティームは幾つかの雷斬で切り裂くことに成功した。
ただ、それが仮初の結果であることは、なんとなく解っていた。
(確認出来て良かった……まだ、まだまだこれからだ)
友の背に触れてはいない。
それが確認できただけ、スティームにとっては収穫と言える試合だった。
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