スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千三百四十六話 美しい

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「さて、次は俺と……どっちが戦る?」

「んじゃ、私が戦るよ!!!!」

「分かった。けど、ちょっと休んどけ。あと、ちゃんと治してもらってくれ」

「ん~~~……分かった」

ガルーレとしては、直ぐに連戦しても問題ない。

とりあえず傷は治すにしても、体力はそこまで消耗してないというのが、ガルーレ自身の感想。

ただ、アラッドのことをそれなりに理解していたガルーレはひとまず彼の言う通りにした。

(なんでだろう…………もしかして、私が気付てないだけで、結構消耗してた感じ?)

よくある見落とし内容ではあるが……実は正解だった。

狙い通りにペイズ・サーベルスは使わなかったガルーレ。
しかし、使わないためにフローレンスの光剣を食らわないように、触れないようにと慎重に動いていた結果……これまた狙い通り、ガルーレは殆どフローレンスの光剣に触れなかった。

「良い集中力でしたね、ガルーレさん」

その対価として、普段以上の集中力を発揮していたガルーレ。

たった三分の時間ではあれど、その集中力は間違いなくガルーレの体力を消耗させていた。

「でしょでしょ~。良い感じに集中できてたと思うんだよね。けど、もしかしていつもより消耗したのかな」

「高まった集中力は消耗の加速に繋がりますからね。アラッドもそれを見抜いていたのでしょう」

「そういう事だったんだねぇ……さすがアラッド」

ただ圧倒的に強いだけではなく、細かいところまで見抜く眼まで有している。

改めてリーダーの強さを感じたガルーレ……そんなアラッドとこれからぶつかり合うことに、更なる高まりを感じる。

そして約五分後、今度はアラッドとガルーレの試合が行われる。

今回、アラッドはロングソードを使わず、ガルーレと同じく素手で戦う。

「おっ、やっぱりそうくるんだね」

人によっては、メイン武器じゃない武器で戦うなど嘗めていると思うかもしれないが、ガルーレは知っている。

アラッドは……ただ徒手格闘同士で戦いたいから、ロングソードを使わず素手で戦うのだと。

「同じく三分間だよ。それじゃあ、始め」

「「ーーーーッッ!!」」

スティームによって開始の合図が告げられると、二人はまず……ジャブの刺し合いから始めた。

(こ、これは………………ただ、互いに左拳を突き出し続けている光景だというのに……むむむ)

闘技場観戦が趣味の一つである画家の男性。

そんな試合の中でも芸術と同じく、美しいと感じる動きを何度も見てきた。

だが、それらの光景の中でも、目の前の様な拳の刺し合いだけで美しいと感じることはなかった。

「…………」

「? どうしたんですか」

「あっ、いや……あの二人の……読み合い、測り合いなのか。あの動作に美しさを感じてね」

「な、なるほど?」

美しさ、という点にスティームはあまりピンとこなかった。

「アラッドの体技は一つ抜けていると言いますか……いえ、体技のみに限定した技術が一つ抜けているかと」

「っ!!?? フローレンス様、アラッド様のメイン武器はロングソードではないのですか?」

父親であるフール、ついでに母親のアリサもロングソードを使っており、アラッドもロングソードをメイン武器として使用しているという印象が強い。

それは画家ではなく、アラッドという人間を少しでも知っている全ての人たちに共通する認識だった。

「それは間違いありません。ただ……アラッドは、素手で戦うことが好きなんです」

「あぁ~~~、そうですね。アラッドは素手で戦う時の方が若干生き生きしてます」

「……なのに、メイン武器はロングソードなのですね」

既にジャブの刺し合いは終わっていた。

だが、その次に始まった打撃戦は、これまで画家が見てきたものとは……別物だと感じさせる内容だった。

今まで画家が見てきた打撃戦の中にも、美しいと感じる動作自体はあった。
決して派手な動きだけではなく、忠実に基本を極めた動きにも同じ感動を覚えていた。

しかし、目の前で行われている打撃戦は……全てが違う。

「パーティーメンバーの僕が言うのもあれですけど、アラッドは色々と普通じゃありませんからね。普通の人から見て、おかしいと感じるところは多々あるかと」

「ふふ、かもしれませんね。ただ、ガルーレもそれを教えられることで、確実に腕を磨いています……特に脚に向けられる蹴りなど、時に蹴りではなく剣による下段斬りを行っているのではないかと錯覚する時もあります」

「…………ありますね」

スティームも、もし双剣を手元から失った時に戦える武器があった方が良いと、体技の訓練も地道に行っていた。

そのため、ガルーレと素手で模擬戦を行うことがあるが、何度もガルーレの拳が鈍器に、脚が剣のように錯覚したか分からない。

「……あの芸術は、アラッド様がいたからこそ、見られた光景なんですね」

「う、うん? えっと……そうかもしれませんね」

貴族の令息であるのは間違いない。
アラッドよりも貴族の令息という立場がしっくりくるスティーム。

幼少期からアラッド以上には芸術などに触れてきていたが、目の前の芸術家が何を言っているのか……全くもって解らなかった。
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