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千三百四十五話 手札は切らずとも
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「それじゃ、次は私たちだね!!!!」
「えぇ、戦りましょうか。ガルーレ」
アラッドとスティームの次に行われるのは、ガルーレとフローレンスの試合。
「時間は同じく三分だ。それじゃ、始め」
軽く……本当に軽く開始の合図が行われた。
「はぁああああああああーーーーーーッッ!!!!」
開幕から距離を詰めるのはガルーレ。
徒手格闘が得物を相手にする際は、リーチの差に十分気を付けて近づかなければならないものだが、ガルーレからすればそんなのはクソ喰らえである。
「ッ、フッッッ!!!!」
「へ、へっへっへ!!! 疾ッッ!!!!!」
あくまで試合ではあるが、それでもガルーレは勝ちにこだわる。
実はフローレンスに小さくない恨み、妬みがある……なんてまさかの事実はない。
ただ、行うからには勝ちたい。
(やはり、ガルーレは、ガルーレ、ですねっ!!)
知っている。
フローレンスは知っている。
熱く、まるで猪の様に猛進するガルーレ。
しかし、決して思考力を失ってしまうことはない。
今回の戦いは、あくまで試合。
画家の男に自分たちの強さを教えてあげる為の戦い。
だからこそ……試合の範疇に納めなければならない。
そのため、ガルーレは傷を負わないように、細心の注意を払いながら戦っていた。
理由はただ一つ。
自身のスキル、ペイズ・サーベルスを発動させないため。
「……ねぇ、アラッド」
「あぁ、そうだな……いつもより、キレてる」
傷を負ってはならない。
けど、試合である以上、負けたくない。
そんな二つの思いが重なった結果、ガルーレは普段以上の集中力を発揮。
超至近距離であってもフローレンスの光剣を避け、拳打を叩き込んでいく。
「ただ、それはフローレンスも同じか」
叩き込まれたと思った拳打。
しかし、ガルーレの拳に残る感触は、打ち抜けた時のそれではなかった。
「フローレンス、さん!! それ、なに!!!!」
「ただ、和らげた、だけですよ。ガルーレ、さんッ!!!」
フローレンスの左手はガルーレの拳打を阻むのに間に合わなかった。
フローレンスと言えど、筋肉聖女へと至っていない状態であれば、内外問わずダメージを負ってしまう。
ガルーレの拳には、負わせた感触は殆どなかった。
(押し返された!? 魔力操作で!!?? やっぱり、フローレンスさんは、凄い、ねッッ!!!!)
(今更な、話ですが。私の剣を、前にして、ここまで、楽々と入り込むなんて、本当に……凄いわッ!!!!)
互いが互いに褒め合う二人の美女。
筋肉聖女は咄嗟に纏っていた魔力で拳打が叩き込まれる箇所から、槌を放った。
それでいて、自分は身を引いて後ろに飛んだ。
理屈はなんとなく解ったガルーレだが、同じことを瞬時に出来るかと言われれば、出来ないと満面の笑みを浮かべて断言する。
対して、フローレンスはフローレンスで徒手格闘のガルーレがここまで容易にクロスレンジの内側に入ってくることに、改めて恐ろしさを感じ、無意識に口端を上げていた。
ガルーレが強さを画家に伝えるためとはいえ、この試合に本気で勝ちにいってるように、フローレンスも……友人だからこそ、共に戦った戦友だからこそ、負けてたまるかと闘争心が雄叫びを上げていた。
「ね、ねぇ。アラッド。あの二人……大丈夫、だよね?」
「大丈夫だとは思うけど………………うん、まぁ大丈夫だろ」
「アラッド!!?」
友人のあまり信頼できない「大丈夫だろう」に慌てるスティーム。
(思った以上に……なんなら、俺たちと比べて使ってる手札こそ少ないけど、勝利への意識が……ガルーレだけじゃなく、フローレンスも強い…………なんかあったのか?)
実際のところ、なにもない。
強いてあげるとすれば、仲が……絆が深まったから。
「大丈夫だ。いったとしても、腕や足が斬り飛んだり、内臓が損傷したり粉砕骨折する程度だ」
「………………アラッド様、基本的にそれは大丈夫の範囲を越えてると思うのですが」
誰かが怪我を負った時に治すために呼ばれた治癒師は、恐る恐るといった表情でアラッドにそれが違うのでは? と告げた。
「命を奪う訳でもなく、どちらかが一方的にいたぶるわけでもない。であれば、それは大丈夫な試合の範疇ですよ……貴女なら、それぐらいの傷は治せるでしょう」
「勿論、全身全霊で治癒しますが」
アラッドの言う通り、それぐらいの傷であれば治し、接合することもできる。
とはいえ、軽い内傷や切傷までならともかく、騎士たちが行う模擬戦や試合でも、そこまでのダメージを負う者は殆どいない。
「っと、時間だな。そこまでっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
「「っ!!!!????」」
獣様な獰猛な笑みを浮かべるガルーレに、珍しくそれに釣られていたフローレンスだったが、意識外から訓練場を震わせるような声量で静止を伝えられ、うっかり転びそうになった二人。
「あ、アラッド……そ、そんな大きな声じゃなくても聞こえるって~~」
「ガルーレの言う通りですよ、アラッド」
「嘘つけ。過ぎたことだから賭けにならないが、さっきの様に声を張らなければ、止まらなかったのに金貨数十枚は賭けられるぞ。なぁ、スティーム」
「う、うん……そう、だね。多分、普通の声だと、二人に届いてなかったと思う」
「「っっ!!!」」
パーティーの一の常識人に肯定されると、なにも言い返せなくなる二人だった。
「えぇ、戦りましょうか。ガルーレ」
アラッドとスティームの次に行われるのは、ガルーレとフローレンスの試合。
「時間は同じく三分だ。それじゃ、始め」
軽く……本当に軽く開始の合図が行われた。
「はぁああああああああーーーーーーッッ!!!!」
開幕から距離を詰めるのはガルーレ。
徒手格闘が得物を相手にする際は、リーチの差に十分気を付けて近づかなければならないものだが、ガルーレからすればそんなのはクソ喰らえである。
「ッ、フッッッ!!!!」
「へ、へっへっへ!!! 疾ッッ!!!!!」
あくまで試合ではあるが、それでもガルーレは勝ちにこだわる。
実はフローレンスに小さくない恨み、妬みがある……なんてまさかの事実はない。
ただ、行うからには勝ちたい。
(やはり、ガルーレは、ガルーレ、ですねっ!!)
知っている。
フローレンスは知っている。
熱く、まるで猪の様に猛進するガルーレ。
しかし、決して思考力を失ってしまうことはない。
今回の戦いは、あくまで試合。
画家の男に自分たちの強さを教えてあげる為の戦い。
だからこそ……試合の範疇に納めなければならない。
そのため、ガルーレは傷を負わないように、細心の注意を払いながら戦っていた。
理由はただ一つ。
自身のスキル、ペイズ・サーベルスを発動させないため。
「……ねぇ、アラッド」
「あぁ、そうだな……いつもより、キレてる」
傷を負ってはならない。
けど、試合である以上、負けたくない。
そんな二つの思いが重なった結果、ガルーレは普段以上の集中力を発揮。
超至近距離であってもフローレンスの光剣を避け、拳打を叩き込んでいく。
「ただ、それはフローレンスも同じか」
叩き込まれたと思った拳打。
しかし、ガルーレの拳に残る感触は、打ち抜けた時のそれではなかった。
「フローレンス、さん!! それ、なに!!!!」
「ただ、和らげた、だけですよ。ガルーレ、さんッ!!!」
フローレンスの左手はガルーレの拳打を阻むのに間に合わなかった。
フローレンスと言えど、筋肉聖女へと至っていない状態であれば、内外問わずダメージを負ってしまう。
ガルーレの拳には、負わせた感触は殆どなかった。
(押し返された!? 魔力操作で!!?? やっぱり、フローレンスさんは、凄い、ねッッ!!!!)
(今更な、話ですが。私の剣を、前にして、ここまで、楽々と入り込むなんて、本当に……凄いわッ!!!!)
互いが互いに褒め合う二人の美女。
筋肉聖女は咄嗟に纏っていた魔力で拳打が叩き込まれる箇所から、槌を放った。
それでいて、自分は身を引いて後ろに飛んだ。
理屈はなんとなく解ったガルーレだが、同じことを瞬時に出来るかと言われれば、出来ないと満面の笑みを浮かべて断言する。
対して、フローレンスはフローレンスで徒手格闘のガルーレがここまで容易にクロスレンジの内側に入ってくることに、改めて恐ろしさを感じ、無意識に口端を上げていた。
ガルーレが強さを画家に伝えるためとはいえ、この試合に本気で勝ちにいってるように、フローレンスも……友人だからこそ、共に戦った戦友だからこそ、負けてたまるかと闘争心が雄叫びを上げていた。
「ね、ねぇ。アラッド。あの二人……大丈夫、だよね?」
「大丈夫だとは思うけど………………うん、まぁ大丈夫だろ」
「アラッド!!?」
友人のあまり信頼できない「大丈夫だろう」に慌てるスティーム。
(思った以上に……なんなら、俺たちと比べて使ってる手札こそ少ないけど、勝利への意識が……ガルーレだけじゃなく、フローレンスも強い…………なんかあったのか?)
実際のところ、なにもない。
強いてあげるとすれば、仲が……絆が深まったから。
「大丈夫だ。いったとしても、腕や足が斬り飛んだり、内臓が損傷したり粉砕骨折する程度だ」
「………………アラッド様、基本的にそれは大丈夫の範囲を越えてると思うのですが」
誰かが怪我を負った時に治すために呼ばれた治癒師は、恐る恐るといった表情でアラッドにそれが違うのでは? と告げた。
「命を奪う訳でもなく、どちらかが一方的にいたぶるわけでもない。であれば、それは大丈夫な試合の範疇ですよ……貴女なら、それぐらいの傷は治せるでしょう」
「勿論、全身全霊で治癒しますが」
アラッドの言う通り、それぐらいの傷であれば治し、接合することもできる。
とはいえ、軽い内傷や切傷までならともかく、騎士たちが行う模擬戦や試合でも、そこまでのダメージを負う者は殆どいない。
「っと、時間だな。そこまでっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
「「っ!!!!????」」
獣様な獰猛な笑みを浮かべるガルーレに、珍しくそれに釣られていたフローレンスだったが、意識外から訓練場を震わせるような声量で静止を伝えられ、うっかり転びそうになった二人。
「あ、アラッド……そ、そんな大きな声じゃなくても聞こえるって~~」
「ガルーレの言う通りですよ、アラッド」
「嘘つけ。過ぎたことだから賭けにならないが、さっきの様に声を張らなければ、止まらなかったのに金貨数十枚は賭けられるぞ。なぁ、スティーム」
「う、うん……そう、だね。多分、普通の声だと、二人に届いてなかったと思う」
「「っっ!!!」」
パーティーの一の常識人に肯定されると、なにも言い返せなくなる二人だった。
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