1,353 / 1,414
千三百五十一話 素直に喜べない
「それよりアラッド、アッシュはっ!?」
礼に関する話を切り上げ、アッシュの話を聞こうとした瞬間、リエラを押しのけ……ラディアの得物である精霊剣、ウィルビアがアラッドの前に浮かびながら移動。
「…………」
(これは……眺めてる、のか?)
ウィルビアはアラッドの周りをうろちょろ移動しながら眺め、最後にフローレンスの方へ移動し、アラッドと同じく全身を眺め始めた。
「?????」
フローレンスはアラッドが精霊剣から選ばれた光景を覚えており、アラッドに近づいたことに関しては特に驚かなかったが、自分まで近づかれ、眺められるのは完全に予想外だった。
「…………っ!!!」
「……なぁ、リディア嬢。この精霊剣は……怒ってる、のか?」
「みたいだね。アラッド、この数日間で精霊と契約したり……もしくは、一時的に力を借りたりした?」
「…………したな」
バリバリしていた。
なんなら、がっつり精霊と関わっていたアラッド。
「ふむ? 先ほど、ウィルビアはフローレンスを見ていたが…………となると、フローレンスが契約している精霊と関わったのか?」
「鋭いな、ライホルト。色々とあってな」
色々とあった、だけで納得されることはなく、アラッドはどういった流れで何が起こったのかを細かく話した。
「とんでもない力を使って倒れた、って話までは聞いてたけど、そんな事になってたのね……というか、そんなこと、出来るものなの?」
リエラはそこまで精霊に詳しいわけではない。
それでも、他の人間と契約を交わしている精霊が一方的に、少しだけ力を貸すだけならまだしも、精霊同化した話など、噂レベルでも聞いたことがない。
「半分だけだがな」
結果として、アラッドとウィリスが行ったのは半強制精霊同化。
完全な精霊同化ではなかった……が、そこに関してはウィリスの契約者であるフローレンスが付け加えたかった。
「ウィリスと半精霊同化をしたアラッドは、彼女が持つ光以外の力を……闇も纏っていました。加えて、あの時再度狂化を発動していたのを考えると、引き出した力は完全な精霊同化以上のものかと」
「…………そうなのかも、しれないな」
そこに関しては外から見ていた、ウィリスの本来同化する相手の意見ということもあり、アラッドとしては否定できなかった。
「ねぇ……そんな無茶をして、大丈夫……だったの?」
大丈夫じゃなかったからぶっ倒れた。
それはラディアも解っている。
解っているが……武器に封じ込められた状態とはいえ、精霊と共に過ごし、戦っているからこそ解ることがある。
契約者以外が精霊同化を行えば、ただ倒れる、重症を負うだけでは済まないと。
「いくらばかりか、寿命を削ったらしい」
「「「ーーーっっ!!!」」」
リエラとライホルトは心底驚き、椅子から立ち上がる。
ラディアも予想していたとはいえ、それでも本人の口から聞くと、衝撃を受けずにはいられない。
「落ち着いてくれ。いくらばかりかと言った通り、もうあと余命何年とか、そういう話ではないんだ。削れた方が数年、多くて五年程度という話だ」
「け、けど……それは…………」
はは、それなら良かったわね、とは到底言えない。
「もう既にスティームたちには伝えたが数年、多くて五年か……十年に満たないほどの寿命を削るだけであの強者を倒し、仲間を守れたんだ。俺にとっては安いものだ」
「……………………そうね」
「っ、ラディア?」
「私も、リエラやライホルトを守れるなら、それぐらい安いものよ」
「ふふ、そうか……気が合うな、ラディア嬢」
「……そう、ね」
はにかむアラッドに少し驚きながらも、嬉しそうに微笑み返した。
「う、う~~~~ん……ま、まぁそういう気持ちというか、心構えは解らなくもないけど……アラッド、フローレンスさんたちは全く納得してないみたいよ」
「うん、まぁ……そうだな」
不機嫌、といったオーラを零してはいない。
フローレンスたちもいざとなればそれぐらいは安いものだと思える。
ただ、三人にとってアラッドという人物は、自分たちに多くのものを与えてくれ、教えてくれた存在でもある。
ラディアには少々失礼ではあるが、関係値が違った。
そのため、リエラやライホルトの様に素直に喜べない。
「しかし、そういった奇手と呼ぶべき手を使わなければ、アラッドが……お前たちが敵わなかった敵か……いったい誰と戦ったのだ?」
「……イゼリオ・ガノーバという、竜人族の騎士だった」
「っっっ、他の戦場にいるのかと思っていたが、本殿を守っていたのか…………むむむ」
「? どうした、ライホルト」
「……ラディアを倒した時のあの姿、今では自由に扱えるのだろう」
「あぁ、そうだな」
「実際にイゼリオ殿にお会いしたことはないが…………アラッドの方が勝率は上だと思ってな」
ライホルトは決してイゼリオ・ガノーバとう騎士を嘗めているわけではない。
加えて、アラッドのことを過大評価しているわけではなかった。
「…………他の戦場でも、ある薬を服用することで急激に力を増した者たちがいたと聞いた」
「っ、確かにそのような者たちがいたが……まさか、イゼリオ殿もその薬を」
「あぁ……謝罪の言葉を口にしながらな」
「……そうだったか」
ライホルトはイゼリオの武勇、人格を人伝ではあるが何度も聞いたことがあるからこそ、何とも言えない表情を浮かべるのだった。
礼に関する話を切り上げ、アッシュの話を聞こうとした瞬間、リエラを押しのけ……ラディアの得物である精霊剣、ウィルビアがアラッドの前に浮かびながら移動。
「…………」
(これは……眺めてる、のか?)
ウィルビアはアラッドの周りをうろちょろ移動しながら眺め、最後にフローレンスの方へ移動し、アラッドと同じく全身を眺め始めた。
「?????」
フローレンスはアラッドが精霊剣から選ばれた光景を覚えており、アラッドに近づいたことに関しては特に驚かなかったが、自分まで近づかれ、眺められるのは完全に予想外だった。
「…………っ!!!」
「……なぁ、リディア嬢。この精霊剣は……怒ってる、のか?」
「みたいだね。アラッド、この数日間で精霊と契約したり……もしくは、一時的に力を借りたりした?」
「…………したな」
バリバリしていた。
なんなら、がっつり精霊と関わっていたアラッド。
「ふむ? 先ほど、ウィルビアはフローレンスを見ていたが…………となると、フローレンスが契約している精霊と関わったのか?」
「鋭いな、ライホルト。色々とあってな」
色々とあった、だけで納得されることはなく、アラッドはどういった流れで何が起こったのかを細かく話した。
「とんでもない力を使って倒れた、って話までは聞いてたけど、そんな事になってたのね……というか、そんなこと、出来るものなの?」
リエラはそこまで精霊に詳しいわけではない。
それでも、他の人間と契約を交わしている精霊が一方的に、少しだけ力を貸すだけならまだしも、精霊同化した話など、噂レベルでも聞いたことがない。
「半分だけだがな」
結果として、アラッドとウィリスが行ったのは半強制精霊同化。
完全な精霊同化ではなかった……が、そこに関してはウィリスの契約者であるフローレンスが付け加えたかった。
「ウィリスと半精霊同化をしたアラッドは、彼女が持つ光以外の力を……闇も纏っていました。加えて、あの時再度狂化を発動していたのを考えると、引き出した力は完全な精霊同化以上のものかと」
「…………そうなのかも、しれないな」
そこに関しては外から見ていた、ウィリスの本来同化する相手の意見ということもあり、アラッドとしては否定できなかった。
「ねぇ……そんな無茶をして、大丈夫……だったの?」
大丈夫じゃなかったからぶっ倒れた。
それはラディアも解っている。
解っているが……武器に封じ込められた状態とはいえ、精霊と共に過ごし、戦っているからこそ解ることがある。
契約者以外が精霊同化を行えば、ただ倒れる、重症を負うだけでは済まないと。
「いくらばかりか、寿命を削ったらしい」
「「「ーーーっっ!!!」」」
リエラとライホルトは心底驚き、椅子から立ち上がる。
ラディアも予想していたとはいえ、それでも本人の口から聞くと、衝撃を受けずにはいられない。
「落ち着いてくれ。いくらばかりかと言った通り、もうあと余命何年とか、そういう話ではないんだ。削れた方が数年、多くて五年程度という話だ」
「け、けど……それは…………」
はは、それなら良かったわね、とは到底言えない。
「もう既にスティームたちには伝えたが数年、多くて五年か……十年に満たないほどの寿命を削るだけであの強者を倒し、仲間を守れたんだ。俺にとっては安いものだ」
「……………………そうね」
「っ、ラディア?」
「私も、リエラやライホルトを守れるなら、それぐらい安いものよ」
「ふふ、そうか……気が合うな、ラディア嬢」
「……そう、ね」
はにかむアラッドに少し驚きながらも、嬉しそうに微笑み返した。
「う、う~~~~ん……ま、まぁそういう気持ちというか、心構えは解らなくもないけど……アラッド、フローレンスさんたちは全く納得してないみたいよ」
「うん、まぁ……そうだな」
不機嫌、といったオーラを零してはいない。
フローレンスたちもいざとなればそれぐらいは安いものだと思える。
ただ、三人にとってアラッドという人物は、自分たちに多くのものを与えてくれ、教えてくれた存在でもある。
ラディアには少々失礼ではあるが、関係値が違った。
そのため、リエラやライホルトの様に素直に喜べない。
「しかし、そういった奇手と呼ぶべき手を使わなければ、アラッドが……お前たちが敵わなかった敵か……いったい誰と戦ったのだ?」
「……イゼリオ・ガノーバという、竜人族の騎士だった」
「っっっ、他の戦場にいるのかと思っていたが、本殿を守っていたのか…………むむむ」
「? どうした、ライホルト」
「……ラディアを倒した時のあの姿、今では自由に扱えるのだろう」
「あぁ、そうだな」
「実際にイゼリオ殿にお会いしたことはないが…………アラッドの方が勝率は上だと思ってな」
ライホルトは決してイゼリオ・ガノーバとう騎士を嘗めているわけではない。
加えて、アラッドのことを過大評価しているわけではなかった。
「…………他の戦場でも、ある薬を服用することで急激に力を増した者たちがいたと聞いた」
「っ、確かにそのような者たちがいたが……まさか、イゼリオ殿もその薬を」
「あぁ……謝罪の言葉を口にしながらな」
「……そうだったか」
ライホルトはイゼリオの武勇、人格を人伝ではあるが何度も聞いたことがあるからこそ、何とも言えない表情を浮かべるのだった。
あなたにおすすめの小説
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
姉から全て奪う妹
明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」
可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。
だから私はこう言うのよ。
「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」
*カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
【完結】名無しの物語
ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』
父が借金の方に娘を売る。
地味で無表情な姉は、21歳
美人で華やかな異母妹は、16歳。
45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。
侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。
甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。
男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。
登場人物に、名前はない。
それでも、彼らは、物語を奏でる。