スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千三百五十一話 素直に喜べない

「それよりアラッド、アッシュはっ!?」

礼に関する話を切り上げ、アッシュの話を聞こうとした瞬間、リエラを押しのけ……ラディアの得物である精霊剣、ウィルビアがアラッドの前に浮かびながら移動。

「…………」

(これは……眺めてる、のか?)

ウィルビアはアラッドの周りをうろちょろ移動しながら眺め、最後にフローレンスの方へ移動し、アラッドと同じく全身を眺め始めた。

「?????」

フローレンスはアラッドが精霊剣から選ばれた光景を覚えており、アラッドに近づいたことに関しては特に驚かなかったが、自分まで近づかれ、眺められるのは完全に予想外だった。

「…………っ!!!」

「……なぁ、リディア嬢。この精霊剣は……怒ってる、のか?」

「みたいだね。アラッド、この数日間で精霊と契約したり……もしくは、一時的に力を借りたりした?」

「…………したな」

バリバリしていた。
なんなら、がっつり精霊と関わっていたアラッド。

「ふむ? 先ほど、ウィルビアはフローレンスを見ていたが…………となると、フローレンスが契約している精霊と関わったのか?」

「鋭いな、ライホルト。色々とあってな」

色々とあった、だけで納得されることはなく、アラッドはどういった流れで何が起こったのかを細かく話した。

「とんでもない力を使って倒れた、って話までは聞いてたけど、そんな事になってたのね……というか、そんなこと、出来るものなの?」

リエラはそこまで精霊に詳しいわけではない。

それでも、他の人間と契約を交わしている精霊が一方的に、少しだけ力を貸すだけならまだしも、精霊同化した話など、噂レベルでも聞いたことがない。

「半分だけだがな」

結果として、アラッドとウィリスが行ったのは半強制精霊同化。

完全な精霊同化ではなかった……が、そこに関してはウィリスの契約者であるフローレンスが付け加えたかった。

「ウィリスと半精霊同化をしたアラッドは、彼女が持つ光以外の力を……闇も纏っていました。加えて、あの時再度狂化を発動していたのを考えると、引き出した力は完全な精霊同化以上のものかと」

「…………そうなのかも、しれないな」

そこに関しては外から見ていた、ウィリスの本来同化する相手の意見ということもあり、アラッドとしては否定できなかった。

「ねぇ……そんな無茶をして、大丈夫……だったの?」

大丈夫じゃなかったからぶっ倒れた。
それはラディアも解っている。
解っているが……武器に封じ込められた状態とはいえ、精霊と共に過ごし、戦っているからこそ解ることがある。

契約者以外が精霊同化を行えば、ただ倒れる、重症を負うだけでは済まないと。

「いくらばかりか、寿命を削ったらしい」

「「「ーーーっっ!!!」」」

リエラとライホルトは心底驚き、椅子から立ち上がる。
ラディアも予想していたとはいえ、それでも本人の口から聞くと、衝撃を受けずにはいられない。

「落ち着いてくれ。いくらばかりかと言った通り、もうあと余命何年とか、そういう話ではないんだ。削れた方が数年、多くて五年程度という話だ」

「け、けど……それは…………」

はは、それなら良かったわね、とは到底言えない。

「もう既にスティームたちには伝えたが数年、多くて五年か……十年に満たないほどの寿命を削るだけであの強者を倒し、仲間を守れたんだ。俺にとっては安いものだ」

「……………………そうね」

「っ、ラディア?」

「私も、リエラやライホルトを守れるなら、それぐらい安いものよ」

「ふふ、そうか……気が合うな、ラディア嬢」

「……そう、ね」

はにかむアラッドに少し驚きながらも、嬉しそうに微笑み返した。

「う、う~~~~ん……ま、まぁそういう気持ちというか、心構えは解らなくもないけど……アラッド、フローレンスさんたちは全く納得してないみたいよ」

「うん、まぁ……そうだな」

不機嫌、といったオーラを零してはいない。

フローレンスたちもいざとなればそれぐらいは安いものだと思える。
ただ、三人にとってアラッドという人物は、自分たちに多くのものを与えてくれ、教えてくれた存在でもある。

ラディアには少々失礼ではあるが、関係値が違った。

そのため、リエラやライホルトの様に素直に喜べない。

「しかし、そういった奇手と呼ぶべき手を使わなければ、アラッドが……お前たちが敵わなかった敵か……いったい誰と戦ったのだ?」

「……イゼリオ・ガノーバという、竜人族の騎士だった」

「っっっ、他の戦場にいるのかと思っていたが、本殿を守っていたのか…………むむむ」

「? どうした、ライホルト」

「……ラディアを倒した時のあの姿、今では自由に扱えるのだろう」

「あぁ、そうだな」

「実際にイゼリオ殿にお会いしたことはないが…………アラッドの方が勝率は上だと思ってな」

ライホルトは決してイゼリオ・ガノーバとう騎士を嘗めているわけではない。

加えて、アラッドのことを過大評価しているわけではなかった。

「…………他の戦場でも、ある薬を服用することで急激に力を増した者たちがいたと聞いた」

「っ、確かにそのような者たちがいたが……まさか、イゼリオ殿もその薬を」

「あぁ……謝罪の言葉を口にしながらな」

「……そうだったか」

ライホルトはイゼリオの武勇、人格を人伝ではあるが何度も聞いたことがあるからこそ、何とも言えない表情を浮かべるのだった。
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