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四十七話 その差を補うために

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アラッドにブラックウルフを従魔にした方法を尋ね、別れた後……ドラングは真っ先にフールの執務室に向かった。

「随分と真剣な表情だね。何か頼み事でもあるのかい?」

「…………はい」

いつもより真剣な表情をしている。
親子なので、直ぐにそれは見抜いた。

(どんな頼みかな……もしかして新しい剣を勝ってほしいとかかな? 毎日頑張って鍛錬を続けてるし、それぐらいなら良いかな)

アラッドの様な効果が付与されている剣はまだ早いが、一般的な真剣であれば買ってあげても良いかなと思ったフールだが、ドラングからの頼みごとは予想していた内容よりも遥か上だった。

「父さん……ドラゴンの卵が欲しいです」

「…………すまない、ドラング。ちょっと疲れてるみたいだ。もう一度言ってくれないか」

「分かりました。父さん、ドラゴンの卵が欲しいです」

あまりにも真剣な表情でぶっ飛んだ頼み事をされ、フールは思わず上を向いて目を閉じてしまった。

(聞き間違えでは無かったね。確かにドラゴンの卵が欲しいと言った……えっ、なんで?)

突然の申し出にフールの思考はまともに機能しなくなった。

(ドラングの目標って竜騎士になることだっけ? 確かアラッドに一対一の勝負て勝つことだったよね……あっ、そういうことか)

アラッドに勝つ。そのワードでドラングが何故ドラゴンの卵が欲しいと言い出したのか解かった。
解ったが……さすがにそんなほいほい用意できる物ではない。

「ドラング、ドラゴンのランクは基本的にB以上だ。卵が置かれている巣にはだいたい雌のドラゴンが卵を纏っている。暴力に身を任せて暴れるドラゴンも恐ろしいけど、子を守るために戦うドラゴンを恐ろしいんだ」

「……属性のドラゴンとは言いません。ワイバーンの卵でも良いです」

「はぁーーーーー……仮にCランクのワイバーンであっても、逆鱗に触れたドラゴンは本当に恐ろしいんだ。容易に兵や騎士を使って取って来ることは出来ない」

「なら、冒険者ギルドに依頼を出せば」

「かなりの金額が必要になる。冒険者は依頼を受けて生き残ってこそ意味がある。ドラゴンの卵を回収して届ける……ワイバーンの卵であっても、途中で孵化してしまう可能性等を考えれば、受けようと思う冒険者は少ない」

高ランクの冒険者であっても、ドラゴンの巣から卵を取ってきて欲しい。
そんな依頼を簡単に受けようとはしない。

内容が卵を取ってきて欲しいという内容であれば、フールの言う通り届けるまでに孵化させる訳にはいかない。
届けるまで他のモンスターに襲われて卵を駄目にするわけにはもいない。

その他の可能性も考えると、白金貨単位で報酬を出しても受けようとしてくれるパーティーやクランは少ない。

「でも、大金を出せば受けるパーティーは絶対にある筈です!!!」

「……大金を出せば、確かに受けるパーティーはいるかもしれない。だが、そんなお金をドラングに出せるのか?」

「うっ……こ、これから十年はその……誕生日プレゼントは、いりません。だから、お願い致します!!」

アラッドは己の力でブラックウルフを従魔にした。
単体ですら劣っているのに、新たな力を義理の兄は手に入れたのだ。

その差を補うためには単純明快、ドラゴンを従魔にすればいい。
そんな浅はかな考えに至ってしまった。

「さ、最近パーシブル家に入って来る収入が上がったと聞きます。だから、お願いします!!!」

「どこからそんな情報を得たのか……」

確かにパーシブル家はここ半年で懐に入って来る金は多くなった。
だが、それに関しては明確な理由があり……身内にその幸運をもたらした人物がいる。

(ドラゴンの卵……ワイバーンの卵を取って来るぐらいの依頼なら、確かに依頼金として問題なく出せるぐらい収入は増えている)

ただ……それは全てリバーシを作ったアラッドのお陰。
それを一人の私利私欲の為に使うわけにはいかず……いや、少しなら使っても構わない。

だが、ドラゴンの卵を取って来るという内容の依頼を冒険者ギルドに頼むには、それなりの報酬金額を用意しないければならない。

しかし、フールがドラングの頼みを受けようと思わないのは他にも理由があった。
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