スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
79 / 1,361

七十九話 意識していなければ分からない

しおりを挟む
「よっと」

一切止まることなく連撃を続けていたアラッドだが、ここでステップバック。
モーナと大きく距離を取った。

「さ、さすがにスタミナ切れ……って感じじゃなさそうですね」

「えぇ、まだスタミナはあります。ただ……せっかくの模擬戦で攻めてばかりいるのもあれだと思ったんで、是非そっちから攻めてもらおうかと思って」

先程からモーナは一切攻めることなく、アラッドの攻撃を受けるか躱し続けた。
そしてここで露骨な対応の変化。

何かあるのかもしれない。そう考えるのが普通だ。

(あれだけ動けるから、相手の攻撃に合わせてカウンターを決めるのも余裕で出来そうですけど……だからといって、騎士である私が逃げるわけにはいきませんね)

アラッドが十分に強いのは身を持って理解した。
本人は正真正銘の七歳児だと断言しているが、まだ実はもっと年齢が上なのではと若干疑っている。

しかしそれでも自分が騎士。
子供が考える策一つぐらい乗り越えられず、騎士を名乗ることなんて出来ない。

「ふふ、良いでしょう。その案、受け入れます!!」

アラッドがどんな策を用意しようとも、絶対に打ち破ると誓って駆け出す。
だが、そんな思いを七歳の少年はあっさりと打ち砕いた。

「えっ、ふぶっ!!??」

自身とモーナの距離が半分ほどに縮まった瞬間を狙い、糸で脚を引っかけた。
相手はおそらくカウンター狙いで自分に一撃を与えてくると予想していたモーナはバランスを崩すと、そのまま地面に顔が激突した。

「はい、これで俺の勝ちですよね」

「……えっ!?」

顔面をそのまま地面に激突させたが、直ぐに起き上がろうとする。
しかしその直後、目の前にアラッドの脚が見えた。

そ~っと顔を上げると、そこにはモーナの頭に剣先を突き付けるアラッドが立っていた。

「えっと……模擬戦なんで、この状況は俺の勝ちになりますよね?」

「あぁ、そうだな。これは本気の決闘ではなく、模擬戦だ。急所の頭に剣先を突き付けた時点でアラッド君の勝ちだ。モーナ、それは認められるな」

「は、はい。そうですね……私の、負けです」

何故自分があそこで転んだのか。
脚に何かが引っ掛かったような感触はあった。

もしかしたらアラッドが何か仕掛けたのかもしれない。

(でも、アラッド君から全く目を離していない。何かを仕掛けた様には思えなかった……)

ただただ自分が攻撃するのを構えて待っていた。
自分が距離を縮めようと動いている間に動きはなかった。

にも拘わらず、自分は気付いたら顔を地面にぶつけて倒れていた。

「アラッド君、見事な戦いぶりだった……正直、最後何を行ったのかは分からなかったが」

「はは、まぁ……奥の手ってやつですね」

ディーネレベルの騎士であれば、糸の存在に気付ける。
モーナであっても意識すれば気付けるのだが、二人とも足元に意識が向いておらず、糸の存在に気付けなかった。

(今回の一件で足元に何か仕掛けられる可能性があるってのは分かっただろうから、次からは上手くいかないだろうな)

糸には他にも技があるが、今ここで大胆に使おうとは思っていなかったので、アリサから命じられた規制は寧ろ有難かった。

「そうか。奥の手が上手く決まったからということもあるが、君の歳でモーナに勝てる人物はいない。本当に強いな、君は」

「ありがとうございます」

「……騎士団に入るつもりは、ないんだな」

アリサから軽く話は聞いている。
フールからも期待されているが、進む道は冒険者としての道。

子供が何を目標にしてこれからの人生を歩むのか、それは子供たちの自由。
それはディーネも分かっているが、やはり惜しいと思ってしまう。

(七歳であそこまで動けるのだ。そして日々鍛錬を積み、モンスターと戦って着実にレベルを上げている……特例中の特例として試験を受け、最年少で騎士になるのも夢ではない……本当に、惜しいな)

現在騎士に任命された者の最年少は十五歳。
本来は十八歳になってから試験を受けられるのだが、過去に公爵家の人間が特例で合格し、最年少で騎士となった。

だが、ディーネはそんな天才騎士を超える可能性がアラッドにはあると確信した。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...