381 / 1,361
三百八十一話 憧れのあの人の前では
しおりを挟む
マジリストンに到着してから二日目。
目的は墓荒しの黒幕を捕まえることだが、冒険者という職業上……長期間の間、依頼を受けないのはよろしくない。
という訳で、アラッドは朝食を食べ終えてから直ぐに冒険者ギルドへ向かい、適当な依頼を探した。
(ダッシュボアの肉の納品依頼……これにするか)
比較的簡単に達成出来そうな依頼書を手にし、受付嬢の元へ向かおうとする。
「なぁ、それってダッシュボアを倒さなきゃダメな依頼だろ。一人で受けるんだったら、俺たちと一緒に受けないか? 一人で受けるより、断然安全だと思うぜ」
「…………」
いきなり、知らない人物から話しかけられた。
それは冒険者をしていれば珍しくないが、だとしても……アラッドからすれば、話しかけてきたそう歳が変わらない男が、自分に掛けた言葉の内容について、直ぐに理解出来なかった。
(なんでだ? なんでこいつは、自分たちと受けることが、俺のメリットになると思ってるんだ?)
アラッドからすれば、話しかけてきた男やその男のメンバーたちと一緒に依頼を受けることに対し、メリットは一ミリも感じられなかった。
確かにDランクモンスターをソロで倒すのは、ルーキーには重い仕事ではある。
しかし、アラッドは普通ではない。
仮にDランクモンスター百体と遭遇したところで、危険な場面に遭遇することはまずない。
それがアラッドを深く知っている人物からの評価であり、自己評価でもある。
(あのマジット姐さんが声を掛けた野郎……いったいどれほどの実力があるのか、確かめておきてぇ)
当然、声を掛けてきた男の目的は、アラッドが一人でDランクモンスターを倒す必要がある依頼を受けようとすることに対しての心配ではなく、マジットという自分たちの姉御に気に掛けられている野郎の調査だった。
マジットは基本的に誰にでも公平に接する。
一定のラインを超えなければ、酔っ払い冒険者も軽くあしらって終わらせる。
ルーキーたちと顔を合わせれば、自分たちを心配するように最近の様子を尋ね、アドバイスをしてくれる。
そんなルーキーたちは男女問わず、マジットに惚れることが多い。
そんなマジットとアラッドは二人で飯を食べた、という情報をゲットしている。
いったいどんな理由があって、あのマジットと二人っきりで飯を食べたのか……無理矢理理由を付け、その辺りを探ろうとした。
「いや、遠慮しておく。昨日戦ったモンスターよりも弱い個体だからな」
「っ! そ、そうか……気を付けろよ」
「あぁ、死角には気を付けるよ」
あっさりと自分の提案を丁寧に最もな理由を付けて断られた。
その対応に怒りを感じずにはいられなかったが、現在勤務中のマジットが働いている。
今問題を起こせば、マジットが仲裁にやって来ることは間違いない。
自分たちが無理矢理アラッドに関わろうとしている自覚はあるため、男は意外にもあっさりと引き下がった。
(……随分とあっさり引き下がるな)
死角には気を付けるという言葉を返したため、下手に街の外で襲い掛かってくることはない……と思いたいところ。
「受注、お願いします」
「かしこまりました」
アラッドが先日、DランクからCランクモンスターの素材を一度に買取カウンターに出した話が広まっており、受付嬢はアラッドが一人で依頼を受けようとするのを止めなかった。
(とりあえず、ささっとダッシュボアを倒して解体して、今日も昨日の続きだな)
街を出た後、アラッドは一時間も経たずに依頼の対象であるダッシュボアを発見し、即討伐。
素材を無駄にすることなく糸で倒し終えた、解体。
そこからは先日と同じく、クロのスタミナと脚力、嗅覚を頼って怪しい場所がないか捜索を進めるが、中々足跡となる何かは見つからない。
「ワゥ!!!」
「っ! 何か見つけたか」
許可を出し、クロが異変を感じた場所へ向かう。
(こいつはオーガだな。にしては、ちょっと力が強い気がするが……ん?)
先客の邪魔をしない様にモンスターを観察していると、アラッドはクロが感じたかもしれない異変に気付いた。
目的は墓荒しの黒幕を捕まえることだが、冒険者という職業上……長期間の間、依頼を受けないのはよろしくない。
という訳で、アラッドは朝食を食べ終えてから直ぐに冒険者ギルドへ向かい、適当な依頼を探した。
(ダッシュボアの肉の納品依頼……これにするか)
比較的簡単に達成出来そうな依頼書を手にし、受付嬢の元へ向かおうとする。
「なぁ、それってダッシュボアを倒さなきゃダメな依頼だろ。一人で受けるんだったら、俺たちと一緒に受けないか? 一人で受けるより、断然安全だと思うぜ」
「…………」
いきなり、知らない人物から話しかけられた。
それは冒険者をしていれば珍しくないが、だとしても……アラッドからすれば、話しかけてきたそう歳が変わらない男が、自分に掛けた言葉の内容について、直ぐに理解出来なかった。
(なんでだ? なんでこいつは、自分たちと受けることが、俺のメリットになると思ってるんだ?)
アラッドからすれば、話しかけてきた男やその男のメンバーたちと一緒に依頼を受けることに対し、メリットは一ミリも感じられなかった。
確かにDランクモンスターをソロで倒すのは、ルーキーには重い仕事ではある。
しかし、アラッドは普通ではない。
仮にDランクモンスター百体と遭遇したところで、危険な場面に遭遇することはまずない。
それがアラッドを深く知っている人物からの評価であり、自己評価でもある。
(あのマジット姐さんが声を掛けた野郎……いったいどれほどの実力があるのか、確かめておきてぇ)
当然、声を掛けてきた男の目的は、アラッドが一人でDランクモンスターを倒す必要がある依頼を受けようとすることに対しての心配ではなく、マジットという自分たちの姉御に気に掛けられている野郎の調査だった。
マジットは基本的に誰にでも公平に接する。
一定のラインを超えなければ、酔っ払い冒険者も軽くあしらって終わらせる。
ルーキーたちと顔を合わせれば、自分たちを心配するように最近の様子を尋ね、アドバイスをしてくれる。
そんなルーキーたちは男女問わず、マジットに惚れることが多い。
そんなマジットとアラッドは二人で飯を食べた、という情報をゲットしている。
いったいどんな理由があって、あのマジットと二人っきりで飯を食べたのか……無理矢理理由を付け、その辺りを探ろうとした。
「いや、遠慮しておく。昨日戦ったモンスターよりも弱い個体だからな」
「っ! そ、そうか……気を付けろよ」
「あぁ、死角には気を付けるよ」
あっさりと自分の提案を丁寧に最もな理由を付けて断られた。
その対応に怒りを感じずにはいられなかったが、現在勤務中のマジットが働いている。
今問題を起こせば、マジットが仲裁にやって来ることは間違いない。
自分たちが無理矢理アラッドに関わろうとしている自覚はあるため、男は意外にもあっさりと引き下がった。
(……随分とあっさり引き下がるな)
死角には気を付けるという言葉を返したため、下手に街の外で襲い掛かってくることはない……と思いたいところ。
「受注、お願いします」
「かしこまりました」
アラッドが先日、DランクからCランクモンスターの素材を一度に買取カウンターに出した話が広まっており、受付嬢はアラッドが一人で依頼を受けようとするのを止めなかった。
(とりあえず、ささっとダッシュボアを倒して解体して、今日も昨日の続きだな)
街を出た後、アラッドは一時間も経たずに依頼の対象であるダッシュボアを発見し、即討伐。
素材を無駄にすることなく糸で倒し終えた、解体。
そこからは先日と同じく、クロのスタミナと脚力、嗅覚を頼って怪しい場所がないか捜索を進めるが、中々足跡となる何かは見つからない。
「ワゥ!!!」
「っ! 何か見つけたか」
許可を出し、クロが異変を感じた場所へ向かう。
(こいつはオーガだな。にしては、ちょっと力が強い気がするが……ん?)
先客の邪魔をしない様にモンスターを観察していると、アラッドはクロが感じたかもしれない異変に気付いた。
316
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる