476 / 1,361
四百七十六話 ようやく死に物狂い
しおりを挟む
「本当に申し訳ない!!!!」
「す、済まなかった」
中々に増えた賭け金を回収し終えてから数時間後、アラッドはどう見ても戦えるタイプのギルド職員に声をかけられた。
その隣には若干疲弊している青年……十連戦の五人目の挑戦者である男がいた。
そして屈強なギルド職員に無理矢理頭を下げさせられ、渋々といった表情で男も謝罪の言葉を告げた。
(う~~~ん……これ、絶対に反省してないよね)
スティームは「済まなかった」という男の謝罪に、全く謝意を感じなかった。
実際に戦ったのはアラッドであり、現在謝罪を受けているのもアラッド。
全くもってスティームが口を出す場面ではないのだが……どうも納得出来ない。
「私たちの指導不足で、このバカがとんでもない失礼をしてしまった。本当に、申し訳ない!!!!!」
一応周囲に人はいないため、ドーピング行為を行った青年……トラグスが完全に反則行為を行ったと広まることはない。
「ギルド職員さん、頭を上げてください。俺は別に怒ってませんから」
「いや、しかし」
そういう問題ではない。
ギルド職員にとっては、本当にそういう問題ではないのだ。
確かにアラッドは現在冒険者という組織に身を置いてはいるが、あのフール・パーシブルの息子。
もう一つの立場を考えれば、トラグスが牢屋にぶち込まれても仕方ない。
ただ……アラッドにとっても、全くそういう問題ではなかった。
「本当に大丈夫ですから。だって、俺はあのフール・パーシブルの息子ですよ」
「???」
だからこそ、ギルド職員は猛烈に焦りを感じている。
「幸いなことに強くなるための才はあり、非常に整った環境で十五年間過ごしてきました。だから……それぐらいの手を使ってくることぐらいは想定してました」
「ッ!!!!!!」
不意に怒りの感情が襲ってくるも、恩師が頭を下げた相手。
本能的にその怒りを爆発させてはならないと解っていた。
「あの、だから……そういう問題では」
「俺にとっては想定内の問題ですよ。これは、その……自慢になってしまいますけど、同世代の二位の令息に大きな差を付けてトップに立っていた学生、フローレンス・カルロストとの勝負に勝ちました」
正確にはタイマン勝負ではなく……ギリギリではあるが、絶対無敵のクイーンとのバトルに勝利した。
その結果はアラッドの中で、一つの基準となっていた。
「彼らは俺に対して激しい怒り、殺意に近い感情を抱いていた。俺の立場などを考えれば、そういった想いを抱くのも自然です」
「……故に、こいつらがルール違反を犯してでもあなたに勝とうとするのは、至極当然、と」
「薬などを使っているならまた別問題ですけど、使用したのは強化用のポーションですよね。でしたら、個人的には死に物狂いのうちに入るかと」
アラッドとしては強化ポーションを使用して、ようやくトラグスとの試合は少し面白いと思えた。
そういった目の前の青年がどれだけ寛容な心と絶対的な自信を持ってるのかを感じ……ギルド職員は思わず「あなたの実年齢は、お幾つなんですか」と聞きそうになった。
「そういう訳なんで、特にそいつをどうこうしようとは考えてません。ただ……俺も聖人君主ではなく人なので、試合とかそういった場所以外で面倒なことをされると、骨の一本や二本は覚悟しておいてもらいたいっすね」
アラッドの立場を考えれば半殺しにされても文句は言えない為、これでもまだ優しいと脅しと言える。
(いつか……いつか絶対、公式の場で叩き潰してやる)
一応、ほんの一ミクロン程度は反省の気持ちはあるが心の中は、アラッドを公式の場でどう叩き潰すか……それしかなかった。
まだ頭を下げた状態のトラグスだが……アラッドとスティームは心の内を読んでいた。
(芯のなさは似てないけど、ちょっとだけドラングに似てるか?)
(アラッドを無視して生きた方が良い人生を送れると思うんだけどね……こういう人って、大体未来の自分は絶対に強くなってるって信じてそうだけど、その分アラッドも更に強くなってる可能性が頭に浮かんでないんだろうな)
当たり前過ぎることではあるが、アラッドはまだまだ冒険者になったばかりであり、これから数十年は異世界を旅し続けるつもりだが……三十代に突入するぐらいまでは、今までの様に強敵に挑む日々を繰り返す。
なのでアラッドの特性も相まって成長スピードは子供の頃と比べてやや遅いが、まだまだこれから強くなるのは間違いない。
(三年後ぐらいにまたアラッドに勝負を挑んできそうだけど、その時も強化用ポーションを使わないといけないぐらい差があるのかな……そうなるかもしれないと思うと、なんだかちょっと可哀想な奴に思えてきた)
先程までトラグスに対してそこそこイライラが募っていたスティームだが、ダメな頑固さや頭の悪さを知っていしまい……イライラが静まった代わりに、憐みの気持ちが湧き上がってきた。
顔を上げたトラグスは直ぐにスティームの感情を察し、再び怒りの感情が爆発しかけるも……直ぐ傍に恩師がいることは忘れておらず、運良く不発に終わった。
「す、済まなかった」
中々に増えた賭け金を回収し終えてから数時間後、アラッドはどう見ても戦えるタイプのギルド職員に声をかけられた。
その隣には若干疲弊している青年……十連戦の五人目の挑戦者である男がいた。
そして屈強なギルド職員に無理矢理頭を下げさせられ、渋々といった表情で男も謝罪の言葉を告げた。
(う~~~ん……これ、絶対に反省してないよね)
スティームは「済まなかった」という男の謝罪に、全く謝意を感じなかった。
実際に戦ったのはアラッドであり、現在謝罪を受けているのもアラッド。
全くもってスティームが口を出す場面ではないのだが……どうも納得出来ない。
「私たちの指導不足で、このバカがとんでもない失礼をしてしまった。本当に、申し訳ない!!!!!」
一応周囲に人はいないため、ドーピング行為を行った青年……トラグスが完全に反則行為を行ったと広まることはない。
「ギルド職員さん、頭を上げてください。俺は別に怒ってませんから」
「いや、しかし」
そういう問題ではない。
ギルド職員にとっては、本当にそういう問題ではないのだ。
確かにアラッドは現在冒険者という組織に身を置いてはいるが、あのフール・パーシブルの息子。
もう一つの立場を考えれば、トラグスが牢屋にぶち込まれても仕方ない。
ただ……アラッドにとっても、全くそういう問題ではなかった。
「本当に大丈夫ですから。だって、俺はあのフール・パーシブルの息子ですよ」
「???」
だからこそ、ギルド職員は猛烈に焦りを感じている。
「幸いなことに強くなるための才はあり、非常に整った環境で十五年間過ごしてきました。だから……それぐらいの手を使ってくることぐらいは想定してました」
「ッ!!!!!!」
不意に怒りの感情が襲ってくるも、恩師が頭を下げた相手。
本能的にその怒りを爆発させてはならないと解っていた。
「あの、だから……そういう問題では」
「俺にとっては想定内の問題ですよ。これは、その……自慢になってしまいますけど、同世代の二位の令息に大きな差を付けてトップに立っていた学生、フローレンス・カルロストとの勝負に勝ちました」
正確にはタイマン勝負ではなく……ギリギリではあるが、絶対無敵のクイーンとのバトルに勝利した。
その結果はアラッドの中で、一つの基準となっていた。
「彼らは俺に対して激しい怒り、殺意に近い感情を抱いていた。俺の立場などを考えれば、そういった想いを抱くのも自然です」
「……故に、こいつらがルール違反を犯してでもあなたに勝とうとするのは、至極当然、と」
「薬などを使っているならまた別問題ですけど、使用したのは強化用のポーションですよね。でしたら、個人的には死に物狂いのうちに入るかと」
アラッドとしては強化ポーションを使用して、ようやくトラグスとの試合は少し面白いと思えた。
そういった目の前の青年がどれだけ寛容な心と絶対的な自信を持ってるのかを感じ……ギルド職員は思わず「あなたの実年齢は、お幾つなんですか」と聞きそうになった。
「そういう訳なんで、特にそいつをどうこうしようとは考えてません。ただ……俺も聖人君主ではなく人なので、試合とかそういった場所以外で面倒なことをされると、骨の一本や二本は覚悟しておいてもらいたいっすね」
アラッドの立場を考えれば半殺しにされても文句は言えない為、これでもまだ優しいと脅しと言える。
(いつか……いつか絶対、公式の場で叩き潰してやる)
一応、ほんの一ミクロン程度は反省の気持ちはあるが心の中は、アラッドを公式の場でどう叩き潰すか……それしかなかった。
まだ頭を下げた状態のトラグスだが……アラッドとスティームは心の内を読んでいた。
(芯のなさは似てないけど、ちょっとだけドラングに似てるか?)
(アラッドを無視して生きた方が良い人生を送れると思うんだけどね……こういう人って、大体未来の自分は絶対に強くなってるって信じてそうだけど、その分アラッドも更に強くなってる可能性が頭に浮かんでないんだろうな)
当たり前過ぎることではあるが、アラッドはまだまだ冒険者になったばかりであり、これから数十年は異世界を旅し続けるつもりだが……三十代に突入するぐらいまでは、今までの様に強敵に挑む日々を繰り返す。
なのでアラッドの特性も相まって成長スピードは子供の頃と比べてやや遅いが、まだまだこれから強くなるのは間違いない。
(三年後ぐらいにまたアラッドに勝負を挑んできそうだけど、その時も強化用ポーションを使わないといけないぐらい差があるのかな……そうなるかもしれないと思うと、なんだかちょっと可哀想な奴に思えてきた)
先程までトラグスに対してそこそこイライラが募っていたスティームだが、ダメな頑固さや頭の悪さを知っていしまい……イライラが静まった代わりに、憐みの気持ちが湧き上がってきた。
顔を上げたトラグスは直ぐにスティームの感情を察し、再び怒りの感情が爆発しかけるも……直ぐ傍に恩師がいることは忘れておらず、運良く不発に終わった。
288
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる