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四百九十八話 当然、怖いよ
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「朝っぱらから模擬戦か?」
「うん。何と言うか、熱が冷めなくてね」
「ったく……仕方ないな」
仕方ないなと呟くアラッドの眼は……間違いなく笑っていた。
スティームは昨夜、確かにぶっ倒れるまで酒を呑んだ。
珍しく呑んで呑んで呑みまくった。
そして案の定ぶっ倒れ、アラッドが泊っている宿まで運んだ。
翌日は二日酔いでまともに動けないだろう……そんなアラッドの予想に反し、スティームは非常にピンピンしていた。
早々に朝食を食べ終え、アラッドに模擬戦を頼み込む。
「さて……模擬戦を始める前に一応聞いておく。赤雷は使うのか?」
「ん? そうだね……赤雷を自在に操られるようになるのも目標の一つだけ、一番大きな目標……目的は身体能力の強化。だから今回の模擬戦では赤雷を使わないよ」
「そうか、そりゃ良かった」
「もしかして、知っておかないと不味い感じ?」
「あぁ、そりゃ勿論不味いな。首を刎ね飛ばされたり心臓を貫かれたりはしないと思うけど、警戒しておかないと本気で不味いと思ってる」
スティームはからかいのつもりで「知っておかなければ怖いのかい」と軽口を叩いたつもりだった。
だが、返ってきた答えは非常に真剣な内容。
がっつり自身が会得した切り札を褒められ、零れる笑みを堪えるのに必死になる。
「それじゃ、始めるぞ」
「うん、よろしく頼むよ」
二人は街の外で一対一の模擬戦、または二対二のタッグバトル。
そして一対三の変則バトルなどを繰り返しながら昼間で過ごす。
当然のことながら……周囲の木々は殆ど斬り裂かれており、地面もひび割れしている箇所が多い。
「はぁ、はぁ、はぁ、っ……疲れた~~~~」
「俺も、かなり疲れた」
一対三の変則バトルの一側として戦っていたのはスティームだけではない。
スティームとファルだけであれば……まだ楽しむ余裕がある。
だが、そこにクロが入ってくると、それは完全に真面目な……少々命懸けの訓練になる。
タッグバトルでもお互いの従魔を変えたり、主人タッグと従魔タッグでの戦闘も行っていたため、二人は体を欠損こそしていないものの、切傷や打撲の箇所がそれなりにあった。
「丁度良い時間っぽいし、飯でも食べるか」
「賛成だね。でも、その前にポーション飲まないと」
殆ど全てを絞り出すまで模擬戦を繰り返したため、地面に大の字で転がっているスティームは……今の状態だと、自力で起き上がれなかった。
「良い感じに焼けたな」
香辛料を振りかけたミノタウロスの肉を噛みしめるアラッドたち。
とはいえ、まだまだ模擬戦時の感覚が抜けていない二人の会話はもっぱら先程までの反省会。
そんな二人の間に……二人の男女が入ってきた。
「ん、二人は確か……」
「確かアラッドの初戦の相手と、僕が準決勝で戦った騎士だよね」
「みたいだな。なんだ、お二人さん。もしかしてデートの最中か?」
冒険者の男女が一緒に依頼を受ける、もしくは共にモンスターを狩りに行くことを、冒険者たちの間ではデートと呼ばれている。
なんとも血生臭いデートではあるが、冒険者同士であればどこか通じるものがあったり……なかったり。
「デートじゃないよ。この騎士が強いのは認めるけど、私の好みではない」
「はは、彼女の言う通りだよ。一応婚約者がいるから、彼女以外の女性とデートなんてしたら怒られるよ」
「そうだったか……って事はだ、俺が自意識過剰でなければ、二人は俺たちを探しにここまで来たってことか?」
「そういう事だね」
アバックとアラッドが初戦で戦ったナチュラル筋肉娘……エレインの二人は朝からアラッドとスティームが泊っている宿を訪れたが、その時には既に二人は宿を出て……街を出て森の中模擬戦を行っていた。
「まっ、折角来たんだ。食って行けよ」
「良いのかい? それじゃあ、ご馳走になろうかな」
「私もご馳走になるよ」
肉を食べた瞬間、二人はその美味さに唸った。
「こ、この肉……まさか、ミノタウロスの肉、なのかい」
「その通りだ。ちょっと前に偶々戦う機会があってな。その時に倒したミノタウロスの肉だ。状態は新鮮なままだから安心してくれ」
「あ、あぁ」
Bランクモンスターの中でも上位に位置する人型の猛牛、ミノタウロス。
「……あんた一人で、倒したのか?」
「おぅ、そうだな。渦雷を使ってしまったけど……そうだな、一人で倒したと言っても良いだろう」
他人のテンションを上げる、ポジティブな方向に向かせるには特別な武器も、お前自身の武器なのだと力説するであろうアラッドだが……自分には何故か適応しない頑固さがある。
「それは、あのスキルを、狂化を使って倒したのかい」
「いや、渦雷というちょっと特別な武器を使って倒した。俺としては狂化を使わず、渦雷も使わずに倒したかったんだけどな」
「Bランクモンスターを相手に、それはちょっと我儘が過ぎるって話になるんじゃない?」
「はっはっは! それもそうだな。向こうも闇属性の戦斧を持ってたんだし、こっちが魔剣を使ってもなんら問題はないか」
初っ端から大きな衝撃を食らうも、エレインは改めて二人にプライベートで会えて良かったと思い、話を続けた。
「うん。何と言うか、熱が冷めなくてね」
「ったく……仕方ないな」
仕方ないなと呟くアラッドの眼は……間違いなく笑っていた。
スティームは昨夜、確かにぶっ倒れるまで酒を呑んだ。
珍しく呑んで呑んで呑みまくった。
そして案の定ぶっ倒れ、アラッドが泊っている宿まで運んだ。
翌日は二日酔いでまともに動けないだろう……そんなアラッドの予想に反し、スティームは非常にピンピンしていた。
早々に朝食を食べ終え、アラッドに模擬戦を頼み込む。
「さて……模擬戦を始める前に一応聞いておく。赤雷は使うのか?」
「ん? そうだね……赤雷を自在に操られるようになるのも目標の一つだけ、一番大きな目標……目的は身体能力の強化。だから今回の模擬戦では赤雷を使わないよ」
「そうか、そりゃ良かった」
「もしかして、知っておかないと不味い感じ?」
「あぁ、そりゃ勿論不味いな。首を刎ね飛ばされたり心臓を貫かれたりはしないと思うけど、警戒しておかないと本気で不味いと思ってる」
スティームはからかいのつもりで「知っておかなければ怖いのかい」と軽口を叩いたつもりだった。
だが、返ってきた答えは非常に真剣な内容。
がっつり自身が会得した切り札を褒められ、零れる笑みを堪えるのに必死になる。
「それじゃ、始めるぞ」
「うん、よろしく頼むよ」
二人は街の外で一対一の模擬戦、または二対二のタッグバトル。
そして一対三の変則バトルなどを繰り返しながら昼間で過ごす。
当然のことながら……周囲の木々は殆ど斬り裂かれており、地面もひび割れしている箇所が多い。
「はぁ、はぁ、はぁ、っ……疲れた~~~~」
「俺も、かなり疲れた」
一対三の変則バトルの一側として戦っていたのはスティームだけではない。
スティームとファルだけであれば……まだ楽しむ余裕がある。
だが、そこにクロが入ってくると、それは完全に真面目な……少々命懸けの訓練になる。
タッグバトルでもお互いの従魔を変えたり、主人タッグと従魔タッグでの戦闘も行っていたため、二人は体を欠損こそしていないものの、切傷や打撲の箇所がそれなりにあった。
「丁度良い時間っぽいし、飯でも食べるか」
「賛成だね。でも、その前にポーション飲まないと」
殆ど全てを絞り出すまで模擬戦を繰り返したため、地面に大の字で転がっているスティームは……今の状態だと、自力で起き上がれなかった。
「良い感じに焼けたな」
香辛料を振りかけたミノタウロスの肉を噛みしめるアラッドたち。
とはいえ、まだまだ模擬戦時の感覚が抜けていない二人の会話はもっぱら先程までの反省会。
そんな二人の間に……二人の男女が入ってきた。
「ん、二人は確か……」
「確かアラッドの初戦の相手と、僕が準決勝で戦った騎士だよね」
「みたいだな。なんだ、お二人さん。もしかしてデートの最中か?」
冒険者の男女が一緒に依頼を受ける、もしくは共にモンスターを狩りに行くことを、冒険者たちの間ではデートと呼ばれている。
なんとも血生臭いデートではあるが、冒険者同士であればどこか通じるものがあったり……なかったり。
「デートじゃないよ。この騎士が強いのは認めるけど、私の好みではない」
「はは、彼女の言う通りだよ。一応婚約者がいるから、彼女以外の女性とデートなんてしたら怒られるよ」
「そうだったか……って事はだ、俺が自意識過剰でなければ、二人は俺たちを探しにここまで来たってことか?」
「そういう事だね」
アバックとアラッドが初戦で戦ったナチュラル筋肉娘……エレインの二人は朝からアラッドとスティームが泊っている宿を訪れたが、その時には既に二人は宿を出て……街を出て森の中模擬戦を行っていた。
「まっ、折角来たんだ。食って行けよ」
「良いのかい? それじゃあ、ご馳走になろうかな」
「私もご馳走になるよ」
肉を食べた瞬間、二人はその美味さに唸った。
「こ、この肉……まさか、ミノタウロスの肉、なのかい」
「その通りだ。ちょっと前に偶々戦う機会があってな。その時に倒したミノタウロスの肉だ。状態は新鮮なままだから安心してくれ」
「あ、あぁ」
Bランクモンスターの中でも上位に位置する人型の猛牛、ミノタウロス。
「……あんた一人で、倒したのか?」
「おぅ、そうだな。渦雷を使ってしまったけど……そうだな、一人で倒したと言っても良いだろう」
他人のテンションを上げる、ポジティブな方向に向かせるには特別な武器も、お前自身の武器なのだと力説するであろうアラッドだが……自分には何故か適応しない頑固さがある。
「それは、あのスキルを、狂化を使って倒したのかい」
「いや、渦雷というちょっと特別な武器を使って倒した。俺としては狂化を使わず、渦雷も使わずに倒したかったんだけどな」
「Bランクモンスターを相手に、それはちょっと我儘が過ぎるって話になるんじゃない?」
「はっはっは! それもそうだな。向こうも闇属性の戦斧を持ってたんだし、こっちが魔剣を使ってもなんら問題はないか」
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