532 / 1,361
五百三十一話 それだけではない
しおりを挟む
「ぜ、全然見えなかった」
「ガルシアさん……結構本気、だったよな」
「俺たちが眼で追えない動きをしてたってことは、多分そうだと思う」
孤児院の将来戦闘職を希望している子供たちは日頃から眼を養っており、同性代の子供と比べて圧倒的に視る力や追う力が優れている。
そんな子供たちが、たった数秒間の間ではあるものの、目の前の戦闘光景を全く眼で追えなかった。
当然のことながら、ガルシアも模擬戦が始まった瞬間に強化系スキルを使用。
加えてアラッドの助言から警戒心を高めてはいたが……それだけでは足りなかった。
たった数秒間の間に数十手行われた攻防の内容は、先程までの模擬戦とは逆。
完全にガルシアが押されていた。
「ったく、あんまり油断するなって言っただろ」
「ッ! 申し訳ありません」
「そういうのはいいって言ってるだろ。ほら、さっさと立て」
自身の前で膝を地面に付き、頭を深く下げるガルシアへ立つように促す。
ガルシアは渋々といった表情で立つものの、顔には未だ公開の色が浮かんでいた。
「スティーム、反動はどうだ?」
「ん~~~~……四秒手前で止めたから、割と大丈夫だね」
「そうか……さて、お前らはこれで満足出来たか?」
エリナたちが何を考えていたのか本当に解からない程、主人は鈍感ではなかった。
「いえ、私たちの眼が節穴でした。スティーム様、無礼の視線を向けてしまい、大変申し訳ありませんでした」
奴隷たちの中でもリーダー的存在であるエリナが頭を下げた事で、他にもスティームがアラッドの隣に立っていることに対して不満を持っている者たちが一斉に頭を下げ始める。
「す、すいませんでした!!!」
「「「「「「「「「「すいませんでした!!!」」」」」」」」」」
何故エリナたちがスティームに対して頭を下げたのか、あまり深くは理解していない。
それでも、自分たちがエリナたちと同じ視線をスティームに向けているという自覚はしていたため、子供たちも揃ってスティームに頭を下げた。
「あ、頭を上げてください。全然気にしてないんで。あの本当に……俺なんて、赤雷を纏わなければまだまだ取り柄がないというか、本当に弱いんで」
「…………」
実際に赤雷を纏ったスティームと模擬戦を行ったガルシアはその謙虚な言葉を……直ぐには飲み込めなかった。
(確かに赤雷……それを纏った身体能力の向上には驚かされた。ただ、それだけじゃない……二回目の模擬戦が始まる瞬間、確かにスティーム様の何かが変わった……雰囲気が一変した、というべきか?)
戦闘時間はたった数秒ではあったが、その間に数十回の攻防が繰り返されたのだが、ガルシアは自身の動きの大半を読まれている様に感じた。
「スティームの説明だけだと納得がいかなさそうだな、ガルシア」
「い、いえ。そういう訳では…………申し訳ありません。正直なところ、心に大きな隙がありはしたが、それでも結果は完敗と言える内容だった。その要因が、赤雷だけだとは思えず」
「そうだろうな。多分だけど、さっきのスティームは俺とトーナメントの決勝で戦った時と近い感じになってたと思う。簡単に言うと、とんでもなく集中していた」
「確かに……そういう類の寒気だった」
「ってことはだ、一気にあの時に近い状態まで瞬時に集中力を高められる。それがスティームの強味の一つなのかもしれないな」
「そ、そうなのかな? あまり自覚はないんだけど」
謙遜しているわけではなく、本当にスティームはそこまで集中力の切り替えが上手いと思っておらず、無自覚的なものだった。
「何はともあれ、スティームが強いってのが分かったことで……次、スティームと戦りたい奴はいるか?」
「はい!! はいはいはい!!! 私が戦ります!!!」
真っ先に手を上げたのはガルシアの妹であるレオナ。
二度目の模擬戦では瞬殺されてしまった兄の仇を取ろう……という気などサラサラなく、ただただ純粋にスティームの強さを体感したかった。
「二人とも、模擬戦ってのを忘れない程度にしてくれよ」
それだけ言い残し、アラッドはアラッドで元気が有り余っている子供たちの相手を始める。
「はぁ、はぁ……あ、アラッド兄ちゃん。やっぱり強いよ~」
「はっはっは!! そりゃこれから伸び盛りに入るからな。お前らにはまだまだ負けられねぇよ」
戦闘職希望の子供たちを連続で相手をしながら一切汗をかかず、良い笑顔を浮かべる。
先日の冒険譚でアラッドがソロでは成体の雷獣を倒せる可能性は低い……そう発言していたのはしっかりと覚えているが、やはり子供たちの中で最強はアラッドであった。
「……なぁ、マスター。俺の気のせいだったらあれなんだけどよ、もしかして大人になったか?」
「っ!!??」
孤児院の子供たちの相手をする奴隷の中には、ガルシアたち以外にも優れた戦闘力を持つ奴隷がいる。
当然、男の奴隷たちは男性的な意味合いで大人になるという体験をした者ばかり。
昨日から聞きたくてうずうずしていたため、周囲に子供たちもいるため意味が解らない様に尋ねた。
結果……ビンゴだった。
「ガルシアさん……結構本気、だったよな」
「俺たちが眼で追えない動きをしてたってことは、多分そうだと思う」
孤児院の将来戦闘職を希望している子供たちは日頃から眼を養っており、同性代の子供と比べて圧倒的に視る力や追う力が優れている。
そんな子供たちが、たった数秒間の間ではあるものの、目の前の戦闘光景を全く眼で追えなかった。
当然のことながら、ガルシアも模擬戦が始まった瞬間に強化系スキルを使用。
加えてアラッドの助言から警戒心を高めてはいたが……それだけでは足りなかった。
たった数秒間の間に数十手行われた攻防の内容は、先程までの模擬戦とは逆。
完全にガルシアが押されていた。
「ったく、あんまり油断するなって言っただろ」
「ッ! 申し訳ありません」
「そういうのはいいって言ってるだろ。ほら、さっさと立て」
自身の前で膝を地面に付き、頭を深く下げるガルシアへ立つように促す。
ガルシアは渋々といった表情で立つものの、顔には未だ公開の色が浮かんでいた。
「スティーム、反動はどうだ?」
「ん~~~~……四秒手前で止めたから、割と大丈夫だね」
「そうか……さて、お前らはこれで満足出来たか?」
エリナたちが何を考えていたのか本当に解からない程、主人は鈍感ではなかった。
「いえ、私たちの眼が節穴でした。スティーム様、無礼の視線を向けてしまい、大変申し訳ありませんでした」
奴隷たちの中でもリーダー的存在であるエリナが頭を下げた事で、他にもスティームがアラッドの隣に立っていることに対して不満を持っている者たちが一斉に頭を下げ始める。
「す、すいませんでした!!!」
「「「「「「「「「「すいませんでした!!!」」」」」」」」」」
何故エリナたちがスティームに対して頭を下げたのか、あまり深くは理解していない。
それでも、自分たちがエリナたちと同じ視線をスティームに向けているという自覚はしていたため、子供たちも揃ってスティームに頭を下げた。
「あ、頭を上げてください。全然気にしてないんで。あの本当に……俺なんて、赤雷を纏わなければまだまだ取り柄がないというか、本当に弱いんで」
「…………」
実際に赤雷を纏ったスティームと模擬戦を行ったガルシアはその謙虚な言葉を……直ぐには飲み込めなかった。
(確かに赤雷……それを纏った身体能力の向上には驚かされた。ただ、それだけじゃない……二回目の模擬戦が始まる瞬間、確かにスティーム様の何かが変わった……雰囲気が一変した、というべきか?)
戦闘時間はたった数秒ではあったが、その間に数十回の攻防が繰り返されたのだが、ガルシアは自身の動きの大半を読まれている様に感じた。
「スティームの説明だけだと納得がいかなさそうだな、ガルシア」
「い、いえ。そういう訳では…………申し訳ありません。正直なところ、心に大きな隙がありはしたが、それでも結果は完敗と言える内容だった。その要因が、赤雷だけだとは思えず」
「そうだろうな。多分だけど、さっきのスティームは俺とトーナメントの決勝で戦った時と近い感じになってたと思う。簡単に言うと、とんでもなく集中していた」
「確かに……そういう類の寒気だった」
「ってことはだ、一気にあの時に近い状態まで瞬時に集中力を高められる。それがスティームの強味の一つなのかもしれないな」
「そ、そうなのかな? あまり自覚はないんだけど」
謙遜しているわけではなく、本当にスティームはそこまで集中力の切り替えが上手いと思っておらず、無自覚的なものだった。
「何はともあれ、スティームが強いってのが分かったことで……次、スティームと戦りたい奴はいるか?」
「はい!! はいはいはい!!! 私が戦ります!!!」
真っ先に手を上げたのはガルシアの妹であるレオナ。
二度目の模擬戦では瞬殺されてしまった兄の仇を取ろう……という気などサラサラなく、ただただ純粋にスティームの強さを体感したかった。
「二人とも、模擬戦ってのを忘れない程度にしてくれよ」
それだけ言い残し、アラッドはアラッドで元気が有り余っている子供たちの相手を始める。
「はぁ、はぁ……あ、アラッド兄ちゃん。やっぱり強いよ~」
「はっはっは!! そりゃこれから伸び盛りに入るからな。お前らにはまだまだ負けられねぇよ」
戦闘職希望の子供たちを連続で相手をしながら一切汗をかかず、良い笑顔を浮かべる。
先日の冒険譚でアラッドがソロでは成体の雷獣を倒せる可能性は低い……そう発言していたのはしっかりと覚えているが、やはり子供たちの中で最強はアラッドであった。
「……なぁ、マスター。俺の気のせいだったらあれなんだけどよ、もしかして大人になったか?」
「っ!!??」
孤児院の子供たちの相手をする奴隷の中には、ガルシアたち以外にも優れた戦闘力を持つ奴隷がいる。
当然、男の奴隷たちは男性的な意味合いで大人になるという体験をした者ばかり。
昨日から聞きたくてうずうずしていたため、周囲に子供たちもいるため意味が解らない様に尋ねた。
結果……ビンゴだった。
219
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる