730 / 1,354
七百二十九話 燃料にはならないぞ
しおりを挟む
「なんだ、付いてきたのか?」
「特にやる事もありませんからね」
「そうか」
アラッドはフローレンスたちが付いてきたことに対して、特に文句を言わなかった。
ただ……一旦落ち着いたと思った二人から面倒な視線を向けられていることに気付き、声を掛けた。
「ソルとルーナだったな」
「「っ!!」」
「また、俺に何か用があるのか?」
声を掛けられた二人は、ぶるりと肩を震わせつつも……その口を開いた。
「なんで、あんたはあんなに強いんだ」
「? それは、俺だけじゃなくてお前らの上司や、俺の弟にも言えることはだろ。なんで、俺に聞くんだ?」
適当に答えて流そうとは思っていない。
ただ、何故自分だけに問うたのか知りたかった。
「っ…………強いと、思ったから」
「ふ~~~ん? まっ、理由はなんでも良いか。俺が強い理由は、強くなることが、自分を鍛えることが楽しかったから。以上」
これまで何度も同じ質問を答えてきたため、要点を纏めて答えたアラッド。
「「……???」」
解る者には解るが、さすがにまとめ過ぎだった。
「アラッド兄さん、さすがに纏め過ぎでは?」
「……それもそうか。つっても、俺はこの二人の師や身内じゃないしな」
過去に、同じ冒険者であり……冒険者歴でいえば、アラッドよりも歳上の人物が教えを乞うてきたことがある。
対価も用意し、真剣に強くなりたいという気持ちが伝わってきたからこそ、アラッドはどうすれば比較的若い世代の中でもトップクラスの者たちに追い付ける方法を伝えた。
だが、ソルとルーナは初対面の時から思いっきりアラッドにダル絡みをしていた。
アラッドからすれば、そこまで親身にする必要がない相手であるのは間違いなかった。
「でも、事実だ。俺は自分を鍛えることを、実戦で戦うことを楽しんでいた。多分、同世代の中の誰よりもな」
「それほどの精神力がないと、ということなのね」
「さぁ、どうだろうな。お前らの上司は俺みたいに楽しんではいなかったんじゃないのか? ちなみに、アッシュはそもそも強くなることに対して興味はない」
軽く話は聞いていた。
ただ、アラッドの言葉にアッシュが同意するように頷いたことで、二人の表情に決して小さくない衝撃が走る。
「どうすれば強くなれるかなんて、最適解は人それぞれだ。というか……俺に思うところがあったとしても、そんな俺に構う必要はないだろ」
「それは、どういう意味?」
「お前たち二人は、俺の腐れ縁やライバルでもない。お前たちが俺に向ける気持ちは、ただの一方通行みたいなものだが……それは、フローレンスに近しく親しい野郎には、おそらく平等に向けられる感情だろ?」
女性に憧れる女性は、その憧れに近づく異性を嫌う傾向にある。
全ての女性がそうではないが、ソルとルーナはそれに見事当て嵌まっていた。
「俺のもう一人の弟は、寧ろそれが燃料になっている。それが幸か不幸かは置いておき、良い燃料になり続けてるらしいが……二人は違うだろ」
「「…………」」
「なら、下手に意識するのはおそらく無意味だ」
それだけ伝えると、アラッドはもう二人の方を向くことはなかった。
そして約二時間後、アラッドたちはナルターク王国の観光を短時間ではあるが楽しみ、先日の様にガルーレとフローレンスがクソ面倒なバカに絡まれ、アラッドが意図してないのに問題を引き起こしてしまうことなく、観光は終了。
「お待ちしておりました」
王城に到着すると、王家に仕える従者たちがアラッドたちを出迎え……とある部屋へ連れて行かれた。
そこには……多数の礼服やドレスが用意されていた。
「アラッド様、お好みのスタイルなどはございますでしょうか」
(クッソ………………このままじゃ、駄目なのかよ)
祝勝会が行われる。
それはアルバース国王から直々に伝えられていたため、しっかりと脳内に残っていた。
だが、もしかしたらと、ほんの僅かに普段着のスタイルで大丈夫なのでは? という期待が残っていたが、それはいとも簡単に粉砕された。
「…………派手な色は好みじゃないです。俺にこういったセンスは皆無なので、できればお任せしたいです」
「かしこまりました」
アラッド、アッシュ、スティームの三人を相手に……オシャレ好きな執事たちは執事フェイスで隠しているものの、内心は目の前の整った人形たちを前に、ニヤニヤしていた。
執事たちに、自分たちの国の代表に対し、わざと似合わない服を着させよう……といった醜く怠い考えはなく、彼らは純粋に整った人形たちに最高の礼服を着させたかった。
スティームはともかく、アラッドとアッシュなど……素材が良いにもかかわらず、オシャレというのに全く興味がないのが、明らかに見て解る。
だからこそ、彼らにピッタリの服を着させたいと燃え上がっていた。
(……なんか、この感覚身に覚えがあるな。なんか……母さんが俺の礼服を選んでる時と、同じ感覚のような……)
アラッドの母、アリサは貴族出身の令嬢ではなく、平民出身の元冒険者。
しかし、息子をドレスアップさせ、カッコ良くさせたい……そういった母親心は、貴族出身の母親たちと変わらなかった。
「特にやる事もありませんからね」
「そうか」
アラッドはフローレンスたちが付いてきたことに対して、特に文句を言わなかった。
ただ……一旦落ち着いたと思った二人から面倒な視線を向けられていることに気付き、声を掛けた。
「ソルとルーナだったな」
「「っ!!」」
「また、俺に何か用があるのか?」
声を掛けられた二人は、ぶるりと肩を震わせつつも……その口を開いた。
「なんで、あんたはあんなに強いんだ」
「? それは、俺だけじゃなくてお前らの上司や、俺の弟にも言えることはだろ。なんで、俺に聞くんだ?」
適当に答えて流そうとは思っていない。
ただ、何故自分だけに問うたのか知りたかった。
「っ…………強いと、思ったから」
「ふ~~~ん? まっ、理由はなんでも良いか。俺が強い理由は、強くなることが、自分を鍛えることが楽しかったから。以上」
これまで何度も同じ質問を答えてきたため、要点を纏めて答えたアラッド。
「「……???」」
解る者には解るが、さすがにまとめ過ぎだった。
「アラッド兄さん、さすがに纏め過ぎでは?」
「……それもそうか。つっても、俺はこの二人の師や身内じゃないしな」
過去に、同じ冒険者であり……冒険者歴でいえば、アラッドよりも歳上の人物が教えを乞うてきたことがある。
対価も用意し、真剣に強くなりたいという気持ちが伝わってきたからこそ、アラッドはどうすれば比較的若い世代の中でもトップクラスの者たちに追い付ける方法を伝えた。
だが、ソルとルーナは初対面の時から思いっきりアラッドにダル絡みをしていた。
アラッドからすれば、そこまで親身にする必要がない相手であるのは間違いなかった。
「でも、事実だ。俺は自分を鍛えることを、実戦で戦うことを楽しんでいた。多分、同世代の中の誰よりもな」
「それほどの精神力がないと、ということなのね」
「さぁ、どうだろうな。お前らの上司は俺みたいに楽しんではいなかったんじゃないのか? ちなみに、アッシュはそもそも強くなることに対して興味はない」
軽く話は聞いていた。
ただ、アラッドの言葉にアッシュが同意するように頷いたことで、二人の表情に決して小さくない衝撃が走る。
「どうすれば強くなれるかなんて、最適解は人それぞれだ。というか……俺に思うところがあったとしても、そんな俺に構う必要はないだろ」
「それは、どういう意味?」
「お前たち二人は、俺の腐れ縁やライバルでもない。お前たちが俺に向ける気持ちは、ただの一方通行みたいなものだが……それは、フローレンスに近しく親しい野郎には、おそらく平等に向けられる感情だろ?」
女性に憧れる女性は、その憧れに近づく異性を嫌う傾向にある。
全ての女性がそうではないが、ソルとルーナはそれに見事当て嵌まっていた。
「俺のもう一人の弟は、寧ろそれが燃料になっている。それが幸か不幸かは置いておき、良い燃料になり続けてるらしいが……二人は違うだろ」
「「…………」」
「なら、下手に意識するのはおそらく無意味だ」
それだけ伝えると、アラッドはもう二人の方を向くことはなかった。
そして約二時間後、アラッドたちはナルターク王国の観光を短時間ではあるが楽しみ、先日の様にガルーレとフローレンスがクソ面倒なバカに絡まれ、アラッドが意図してないのに問題を引き起こしてしまうことなく、観光は終了。
「お待ちしておりました」
王城に到着すると、王家に仕える従者たちがアラッドたちを出迎え……とある部屋へ連れて行かれた。
そこには……多数の礼服やドレスが用意されていた。
「アラッド様、お好みのスタイルなどはございますでしょうか」
(クッソ………………このままじゃ、駄目なのかよ)
祝勝会が行われる。
それはアルバース国王から直々に伝えられていたため、しっかりと脳内に残っていた。
だが、もしかしたらと、ほんの僅かに普段着のスタイルで大丈夫なのでは? という期待が残っていたが、それはいとも簡単に粉砕された。
「…………派手な色は好みじゃないです。俺にこういったセンスは皆無なので、できればお任せしたいです」
「かしこまりました」
アラッド、アッシュ、スティームの三人を相手に……オシャレ好きな執事たちは執事フェイスで隠しているものの、内心は目の前の整った人形たちを前に、ニヤニヤしていた。
執事たちに、自分たちの国の代表に対し、わざと似合わない服を着させよう……といった醜く怠い考えはなく、彼らは純粋に整った人形たちに最高の礼服を着させたかった。
スティームはともかく、アラッドとアッシュなど……素材が良いにもかかわらず、オシャレというのに全く興味がないのが、明らかに見て解る。
だからこそ、彼らにピッタリの服を着させたいと燃え上がっていた。
(……なんか、この感覚身に覚えがあるな。なんか……母さんが俺の礼服を選んでる時と、同じ感覚のような……)
アラッドの母、アリサは貴族出身の令嬢ではなく、平民出身の元冒険者。
しかし、息子をドレスアップさせ、カッコ良くさせたい……そういった母親心は、貴族出身の母親たちと変わらなかった。
192
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
醜悪令息レオンの婚約
オータム
ファンタジー
醜悪な外見ゆえに誰からも恐れられ、避けられてきたレオン。
ある日、彼は自分が前世で遊んでいたシミュレーションRPGの世界に転生しており、
しかも“破滅が確定している悪役令嬢の弟”として生きていることに気付く。
このままでは、姉が理不尽な運命に呑まれてしまう。
怪しまれ、言葉を信じてもらえなくとも、レオンはただ一人、未来を変えるために立ち上がる――。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
君だけの呼び名
章槻雅希
ファンタジー
カリーナは自分は王子様に愛されていると確信していた。だって、彼は私にだけ特別な呼び名をくれたから。
異世界のロシア語と同じような言語形態を持つ国であり、名前には友人や親戚が呼ぶ略称、家族・恋人・主君が呼ぶ愛称がある。更には隠されたもう一つの呼び名もあり、複雑な名前の言語形態はそれを有効活用されているのだった。
『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます
ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。
理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。
……正直、めんどくさい。
政略、責任、義務、期待。
それらすべてから解放された彼女は、
聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。
毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。
何もしない、何も背負わない、静かな日常。
ところが――
彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、
一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが
異様なほど平和になっていく。
祈らない。
詠唱しない。
癒やさない。
それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。
「何もしない」ことを選んだ元聖女と、
彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。
これは、
誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、
いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる