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七百七十六話 本能が騒ぐ
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「よし、そこまで。しっかり水分補給しろよ」
宣言通り、おそらくタラテクトに進化してるであろう蜘蛛系モンスターの討伐は顔見知りの冒険者たちに任せ、孤児院の子供たちの模擬戦相手をしていた。
「ふふ、やっぱり引退したら指導者という立場もありだよね」
「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」
声の主の方へ顔を向けると……そこにはパーシブル家の当主、フールの数型があった。
アラッドは驚いており、スティームやガルーレも同じく驚いていた。
そして子供たちはというと………………どう対応するのが正解なのか解らず、本当に解らないため、本能的に下手な事をしまわないようにと、ガチガチに固まった。
「あぁ、楽に……普段通りにしてて良いよ。今の僕はただの気の良いおじさんだから」
無理である、不可能である。
本人がそう言おうとも、フールという人間はドラゴンスレイヤーであり、侯爵家の当主である。
子供たちだけではなく、子供たちの教師である大人達ですら、どうすれば良いか対応に困っていた。
「父さん、それはさすがに無理があるよ」
「そうかい?」
「うん、無理無理、絶対に無理。もう、こぅ…………貴族オーラが隠せてないから」
アラッドもれっきとした侯爵家の人間、貴族ではあるが、孤児院の子供たちからすれば、非常に慣れ親しんだ存在。
物分かりが良い、歳の割には賢い子などは侯爵家の令息であることを正確に認識しているものの、それでも優しいお兄ちゃんとして見る面もある。
だが……フールとは殆ど顔を合わせたことがない。
孤児院の子供たち、そこで働く者たちという立場をことを考えれば、当然のことではあった。
「それで、急にどうしたの? 仕事は?」
「頑張って終わらせたから大丈夫だよ」
(頑張って終わらせたところで、そういう仕事は無限に現れるものじゃないの? ……って、言わない方が良いだろうな)
とにかく頑張って終わらせた、その事実に水を差さぬよう、ぐっと出かかった言葉を飲みこむ。
「……それで、ここには何用で?」
「偶には体を動かそうと思ってさ。そうだね……スティーム君とガルーレさんには息子がお世話になってる様だし……どうかな、僕と一戦」
「「っ!!!!!!!!」」
二人からすれば「僕(私)の方が世話になってます」と、普段なら答えるところ。
しかし、二人の冒険者としての……戦闘者としての本能が騒ぐ。
あのアラッドの父親と戦える。
あの……ドラゴンスレイヤーと戦える。
「はい!!!! ねぇ、スティーム。私が先に戦っても良い?」
「……うん、良いよ」
「やった!!!!!!!」
テンション爆上がり状態となったガルーレの体から嬉しさオーラが溢れ出る。
「もう少し下がっておいた方が良い」
「は、はい」
アラッドが土の魔力を使い、即席のリングを作った。
周囲を糸のドームで覆っており、子供たちに被害が及ぶことはない。
「あれ、素手で戦うんですか?」
「そうだよ。素手でもちゃんと戦えるから、安心して」
「……分かりました!」
一番得意な得物であるロングソードを使わない。
その対応に……ガルーレは決して自分が本当の意味で嘗められているとは思わなかった。
「ねぇ、アラッド。フールさんは、素手でも戦えるの?」
これまで何度も模擬戦をしたことがあるからこそ、スティームはガルーレの強さを身に染みて理解しており、ほんの少しだけ心配を覚えた。
「戦えないと、フェイクだと思うか?」
「え、えっと……なんて言うか、そこまで得意ではないように思えて」
「……まぁ、そういう見た目はしていないのは確かだな。でも、父さんの言う通り……安心して構わない」
安心して構わないと口にするアラッドの表情を見て、直ぐに無駄な心配の気持ちはかき消された。
「二人とも、模擬戦ってことを忘れないでくれよ」
「勿論解ってるよ」
「解ってるよ~!!」
「……それじゃあ構えて…………始め!!!!!!!」
アラッドの開始の合図と共に地面を蹴ったのは……やはりガルーレだった。
気合の乗ったダッシュと重さの乗ったジャブ。
確実にオープニングヒットが決まったと思えた一撃。
「っつ!?」
しかし、接近した筈のガルーレの方が弾かれた。
「技術面に関しては、アラッドから色々と教わったんだ」
オープニングヒットはフール。
放った攻撃はガルーレと同じくジャブであった。
(ちょっと突っ込みすぎたかな? でも、関係ない!!!!!)
再度勢いを付けて接近しようとするが、またしてもガルーレの拳が届くよりも前にフールの拳の方が速く迫る。
「っ!!!」
「やはり、何度も当たってはくれないね」
フールの構えは……ボクシングのデトロイトスタイル。
有名どころで言うと、は〇めの〇歩の間〇了のボクシングスタイル。
アラッドから諸々の内容を教えてもらったフールは……元々徒手格闘が不得手ではなかったこともあり、スポンジの様に教えられたことを吸収した。
(っ……武器を突き付けられてる訳でもないのに、随分と距離が遠く感じる……ふ、ふっふっふ。良いわね、燃えてくるじゃない!!!!!!)
数度接近を阻止されたからといって、諦める様な玉ではない。
ガルーレは喜色満面な笑みを浮かべ、再度地を蹴った。
宣言通り、おそらくタラテクトに進化してるであろう蜘蛛系モンスターの討伐は顔見知りの冒険者たちに任せ、孤児院の子供たちの模擬戦相手をしていた。
「ふふ、やっぱり引退したら指導者という立場もありだよね」
「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」
声の主の方へ顔を向けると……そこにはパーシブル家の当主、フールの数型があった。
アラッドは驚いており、スティームやガルーレも同じく驚いていた。
そして子供たちはというと………………どう対応するのが正解なのか解らず、本当に解らないため、本能的に下手な事をしまわないようにと、ガチガチに固まった。
「あぁ、楽に……普段通りにしてて良いよ。今の僕はただの気の良いおじさんだから」
無理である、不可能である。
本人がそう言おうとも、フールという人間はドラゴンスレイヤーであり、侯爵家の当主である。
子供たちだけではなく、子供たちの教師である大人達ですら、どうすれば良いか対応に困っていた。
「父さん、それはさすがに無理があるよ」
「そうかい?」
「うん、無理無理、絶対に無理。もう、こぅ…………貴族オーラが隠せてないから」
アラッドもれっきとした侯爵家の人間、貴族ではあるが、孤児院の子供たちからすれば、非常に慣れ親しんだ存在。
物分かりが良い、歳の割には賢い子などは侯爵家の令息であることを正確に認識しているものの、それでも優しいお兄ちゃんとして見る面もある。
だが……フールとは殆ど顔を合わせたことがない。
孤児院の子供たち、そこで働く者たちという立場をことを考えれば、当然のことではあった。
「それで、急にどうしたの? 仕事は?」
「頑張って終わらせたから大丈夫だよ」
(頑張って終わらせたところで、そういう仕事は無限に現れるものじゃないの? ……って、言わない方が良いだろうな)
とにかく頑張って終わらせた、その事実に水を差さぬよう、ぐっと出かかった言葉を飲みこむ。
「……それで、ここには何用で?」
「偶には体を動かそうと思ってさ。そうだね……スティーム君とガルーレさんには息子がお世話になってる様だし……どうかな、僕と一戦」
「「っ!!!!!!!!」」
二人からすれば「僕(私)の方が世話になってます」と、普段なら答えるところ。
しかし、二人の冒険者としての……戦闘者としての本能が騒ぐ。
あのアラッドの父親と戦える。
あの……ドラゴンスレイヤーと戦える。
「はい!!!! ねぇ、スティーム。私が先に戦っても良い?」
「……うん、良いよ」
「やった!!!!!!!」
テンション爆上がり状態となったガルーレの体から嬉しさオーラが溢れ出る。
「もう少し下がっておいた方が良い」
「は、はい」
アラッドが土の魔力を使い、即席のリングを作った。
周囲を糸のドームで覆っており、子供たちに被害が及ぶことはない。
「あれ、素手で戦うんですか?」
「そうだよ。素手でもちゃんと戦えるから、安心して」
「……分かりました!」
一番得意な得物であるロングソードを使わない。
その対応に……ガルーレは決して自分が本当の意味で嘗められているとは思わなかった。
「ねぇ、アラッド。フールさんは、素手でも戦えるの?」
これまで何度も模擬戦をしたことがあるからこそ、スティームはガルーレの強さを身に染みて理解しており、ほんの少しだけ心配を覚えた。
「戦えないと、フェイクだと思うか?」
「え、えっと……なんて言うか、そこまで得意ではないように思えて」
「……まぁ、そういう見た目はしていないのは確かだな。でも、父さんの言う通り……安心して構わない」
安心して構わないと口にするアラッドの表情を見て、直ぐに無駄な心配の気持ちはかき消された。
「二人とも、模擬戦ってことを忘れないでくれよ」
「勿論解ってるよ」
「解ってるよ~!!」
「……それじゃあ構えて…………始め!!!!!!!」
アラッドの開始の合図と共に地面を蹴ったのは……やはりガルーレだった。
気合の乗ったダッシュと重さの乗ったジャブ。
確実にオープニングヒットが決まったと思えた一撃。
「っつ!?」
しかし、接近した筈のガルーレの方が弾かれた。
「技術面に関しては、アラッドから色々と教わったんだ」
オープニングヒットはフール。
放った攻撃はガルーレと同じくジャブであった。
(ちょっと突っ込みすぎたかな? でも、関係ない!!!!!)
再度勢いを付けて接近しようとするが、またしてもガルーレの拳が届くよりも前にフールの拳の方が速く迫る。
「っ!!!」
「やはり、何度も当たってはくれないね」
フールの構えは……ボクシングのデトロイトスタイル。
有名どころで言うと、は〇めの〇歩の間〇了のボクシングスタイル。
アラッドから諸々の内容を教えてもらったフールは……元々徒手格闘が不得手ではなかったこともあり、スポンジの様に教えられたことを吸収した。
(っ……武器を突き付けられてる訳でもないのに、随分と距離が遠く感じる……ふ、ふっふっふ。良いわね、燃えてくるじゃない!!!!!!)
数度接近を阻止されたからといって、諦める様な玉ではない。
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