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八百七十話 強くとも……
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「そういえばというか……今更ではあるが、お前も知ってたんだな」
「既に戦力としてカウントされているという事でしょう」
「それもそうか」
学生時代とはいえ、アラッドと後一歩手前のとこまで戦い続け、最後は気迫の差で決着。
そこまで追い詰めたフローレンスが戦力としてカウントされてない、訳がなかった。
「噂程度に話を聞きましたが、随分と友人たちに優しいのですね」
「? なんの………………あぁ、あれか。確かに俺が知らせて提案したことではあるが、俺がわざわざ提案しなくても、大人達が思い付いて実行してたはずだ」
アラッドは母校や国王に諸々の危険性を伝え、未来の戦力となる学生たちを本人達に気付かれない様に護衛することを提案した。
その中には、レイやヴェーラたちだけではなく、アラッドの家族であるシルフィーやアッシュも含まれている。
「かもしれませんね……しかし、ある種それは彼等の覚悟に対する裏切りなるのでは?」
レイと直接刃を交えたことがあるフローレンスは、彼女が有する騎士の道に進む覚悟をある程度感じ取っていた。
フローレンスの言う通り、バレない位置から護衛するというのは、レイたちにとってアラッドが自分たちに対してある種裏切ったと感じるかもしれない。
だが、アラッドは別にそう思われても構わないと思っていた。
「あいつらが強いのは知ってる。騎士や魔術師の道に進む覚悟もな……それでも、あいつらはまだ学生だ。相手がモンスターであろうと、人間であろうと戦える戦力として認識されていたとしても、普通に考えればそれでも大人が守ってやらなきゃならないんだよ……強さと、隙が無いってのはまた別の話なんだからな」
才能を持ち、努力も怠らない有望株が……世間ではまだ行ってはならない行動を取ってしまう。
大人でも間違いを起こす者が多くいる世の中で、優れた能力や力を持っていたとしても、何かしらの隙に付け込まれて悪い道に進み……己の未来を潰してしまう。
アラッドは、レイたちにそういった隙はないと思っている。
だが、屑どもがあらゆる手を尽くした場合、強制的に隙を生み出すことは不可能ではなく……ヴェーラたちがその隙を突かれた場合、上手く対処出来るとは思っていなかった。
「何かあってからじゃ遅いんだ。お前もそれは解ってるだろ」
「……そうでしたね」
「それに、あいつらも思うところはあるだろうけど、解ってくれるはずだ」
「………………」
この時、横で二人の会話を聞いていたスティームは「アラッドって、なんだかお父さんみたいだね」と言おうとしたが、なんとなく言うのを止めた。
SIDE 学生たち
「…………」
「ヴェーラ、どうしましたの?」
「うぅん。なんでもない」
休日、エリザたちと王都を散策していたヴェーラは、ふと屋根の上に目を向けていた。
エリザに返した通り、その屋根には特に何もなかった。
(……見られてる?)
パロスト学園の二年生、公爵令嬢であるエリザにとって、誰かに見られるというのはそこまで珍しいことではない。
寧ろ、日常茶飯事の事であった。
好奇の視線、尊敬の眼差し、嫉妬などの負の感情を混ぜ合わせた眼……様々な種類の眼を向けられたことがある。
容姿が優れていることもあり、一瞬だけチラ見されることもある。
故に、一瞬だけ見られるという経験も何度も何度も体験してきた。
普段から敏感に反応してはいないが、それでも警戒心を高めればある程度把握出来る。
「……ヴェーラも、同じものを感じたか」
「っ、もしかして、レイも?」
「あぁ。私の勘違いかと思っていたが、レイも感じ取っていたとなると、どうやら勘違いではないようだな」
「おいおい、なんの話してるんだ?」
彼女たちのナンパ対策として同行しているリオは二人の会話に首を傾げる。
「多分、僕らが誰かに見られること……じゃ、ないかな」
「ルーフも感じ取っていたか。三人も同じものを感じているとなると、確定と言って良さそうだな」
「そうみたいね」
普段から共に行動してる八人の中で、三人が同じ事を感じていた。
二人と信用しているということもあり、レイは間違いなく自分たちが誰かに見られ続けていると確信を持った。
「なんだよそれ。お前ら三人が変なストーカーに狙われてるってことか?」
「…………それだったら、まだ良かったかもしれない」
「あん?」
レイはその凛々しい強さ、ヴェーラはミステリアスな美しさ。ルーフも二人ほどではないが、普段のオドオドした雰囲気と戦闘時の頼りになるギャップからファンがそれなりにいる。
故に、三人にストーキングを行う輩が現れても、全くおかしくない。
しかし、レイはその可能性を否定した。
(これまで向けられてきた視線は……ヴェーラとルーフも同じなのかは分からないが、ストーキングを行う厄介な変質者たちが向けてくるものとは違った)
レイは、ここ最近自分に向けられている視線について、身に覚えがあった。
(あの種の視線…………私たちは、誰かに護衛されている?)
それは、貴族出身の者であれば必ず一度は向けられるタイプの視線であった。
「既に戦力としてカウントされているという事でしょう」
「それもそうか」
学生時代とはいえ、アラッドと後一歩手前のとこまで戦い続け、最後は気迫の差で決着。
そこまで追い詰めたフローレンスが戦力としてカウントされてない、訳がなかった。
「噂程度に話を聞きましたが、随分と友人たちに優しいのですね」
「? なんの………………あぁ、あれか。確かに俺が知らせて提案したことではあるが、俺がわざわざ提案しなくても、大人達が思い付いて実行してたはずだ」
アラッドは母校や国王に諸々の危険性を伝え、未来の戦力となる学生たちを本人達に気付かれない様に護衛することを提案した。
その中には、レイやヴェーラたちだけではなく、アラッドの家族であるシルフィーやアッシュも含まれている。
「かもしれませんね……しかし、ある種それは彼等の覚悟に対する裏切りなるのでは?」
レイと直接刃を交えたことがあるフローレンスは、彼女が有する騎士の道に進む覚悟をある程度感じ取っていた。
フローレンスの言う通り、バレない位置から護衛するというのは、レイたちにとってアラッドが自分たちに対してある種裏切ったと感じるかもしれない。
だが、アラッドは別にそう思われても構わないと思っていた。
「あいつらが強いのは知ってる。騎士や魔術師の道に進む覚悟もな……それでも、あいつらはまだ学生だ。相手がモンスターであろうと、人間であろうと戦える戦力として認識されていたとしても、普通に考えればそれでも大人が守ってやらなきゃならないんだよ……強さと、隙が無いってのはまた別の話なんだからな」
才能を持ち、努力も怠らない有望株が……世間ではまだ行ってはならない行動を取ってしまう。
大人でも間違いを起こす者が多くいる世の中で、優れた能力や力を持っていたとしても、何かしらの隙に付け込まれて悪い道に進み……己の未来を潰してしまう。
アラッドは、レイたちにそういった隙はないと思っている。
だが、屑どもがあらゆる手を尽くした場合、強制的に隙を生み出すことは不可能ではなく……ヴェーラたちがその隙を突かれた場合、上手く対処出来るとは思っていなかった。
「何かあってからじゃ遅いんだ。お前もそれは解ってるだろ」
「……そうでしたね」
「それに、あいつらも思うところはあるだろうけど、解ってくれるはずだ」
「………………」
この時、横で二人の会話を聞いていたスティームは「アラッドって、なんだかお父さんみたいだね」と言おうとしたが、なんとなく言うのを止めた。
SIDE 学生たち
「…………」
「ヴェーラ、どうしましたの?」
「うぅん。なんでもない」
休日、エリザたちと王都を散策していたヴェーラは、ふと屋根の上に目を向けていた。
エリザに返した通り、その屋根には特に何もなかった。
(……見られてる?)
パロスト学園の二年生、公爵令嬢であるエリザにとって、誰かに見られるというのはそこまで珍しいことではない。
寧ろ、日常茶飯事の事であった。
好奇の視線、尊敬の眼差し、嫉妬などの負の感情を混ぜ合わせた眼……様々な種類の眼を向けられたことがある。
容姿が優れていることもあり、一瞬だけチラ見されることもある。
故に、一瞬だけ見られるという経験も何度も何度も体験してきた。
普段から敏感に反応してはいないが、それでも警戒心を高めればある程度把握出来る。
「……ヴェーラも、同じものを感じたか」
「っ、もしかして、レイも?」
「あぁ。私の勘違いかと思っていたが、レイも感じ取っていたとなると、どうやら勘違いではないようだな」
「おいおい、なんの話してるんだ?」
彼女たちのナンパ対策として同行しているリオは二人の会話に首を傾げる。
「多分、僕らが誰かに見られること……じゃ、ないかな」
「ルーフも感じ取っていたか。三人も同じものを感じているとなると、確定と言って良さそうだな」
「そうみたいね」
普段から共に行動してる八人の中で、三人が同じ事を感じていた。
二人と信用しているということもあり、レイは間違いなく自分たちが誰かに見られ続けていると確信を持った。
「なんだよそれ。お前ら三人が変なストーカーに狙われてるってことか?」
「…………それだったら、まだ良かったかもしれない」
「あん?」
レイはその凛々しい強さ、ヴェーラはミステリアスな美しさ。ルーフも二人ほどではないが、普段のオドオドした雰囲気と戦闘時の頼りになるギャップからファンがそれなりにいる。
故に、三人にストーキングを行う輩が現れても、全くおかしくない。
しかし、レイはその可能性を否定した。
(これまで向けられてきた視線は……ヴェーラとルーフも同じなのかは分からないが、ストーキングを行う厄介な変質者たちが向けてくるものとは違った)
レイは、ここ最近自分に向けられている視線について、身に覚えがあった。
(あの種の視線…………私たちは、誰かに護衛されている?)
それは、貴族出身の者であれば必ず一度は向けられるタイプの視線であった。
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