スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
871 / 1,362

八百七十話 強くとも……

しおりを挟む
「そういえばというか……今更ではあるが、お前も知ってたんだな」

「既に戦力としてカウントされているという事でしょう」

「それもそうか」

学生時代とはいえ、アラッドと後一歩手前のとこまで戦い続け、最後は気迫の差で決着。
そこまで追い詰めたフローレンスが戦力としてカウントされてない、訳がなかった。

「噂程度に話を聞きましたが、随分と友人たちに優しいのですね」

「? なんの………………あぁ、あれか。確かに俺が知らせて提案したことではあるが、俺がわざわざ提案しなくても、大人達が思い付いて実行してたはずだ」

アラッドは母校や国王に諸々の危険性を伝え、未来の戦力となる学生たちを本人達に気付かれない様に護衛することを提案した。

その中には、レイやヴェーラたちだけではなく、アラッドの家族であるシルフィーやアッシュも含まれている。

「かもしれませんね……しかし、ある種それは彼等の覚悟に対する裏切りなるのでは?」

レイと直接刃を交えたことがあるフローレンスは、彼女が有する騎士の道に進む覚悟をある程度感じ取っていた。

フローレンスの言う通り、バレない位置から護衛するというのは、レイたちにとってアラッドが自分たちに対してある種裏切ったと感じるかもしれない。

だが、アラッドは別にそう思われても構わないと思っていた。

「あいつらが強いのは知ってる。騎士や魔術師の道に進む覚悟もな……それでも、あいつらはまだ学生だ。相手がモンスターであろうと、人間であろうと戦える戦力として認識されていたとしても、普通に考えればそれでも大人が守ってやらなきゃならないんだよ……強さと、隙が無いってのはまた別の話なんだからな」

才能を持ち、努力も怠らない有望株が……世間ではまだ行ってはならない行動を取ってしまう。

大人でも間違いを起こす者が多くいる世の中で、優れた能力や力を持っていたとしても、何かしらの隙に付け込まれて悪い道に進み……己の未来を潰してしまう。

アラッドは、レイたちにそういった隙はないと思っている。
だが、屑どもがあらゆる手を尽くした場合、強制的に隙を生み出すことは不可能ではなく……ヴェーラたちがその隙を突かれた場合、上手く対処出来るとは思っていなかった。

「何かあってからじゃ遅いんだ。お前もそれは解ってるだろ」

「……そうでしたね」

「それに、あいつらも思うところはあるだろうけど、解ってくれるはずだ」

「………………」

この時、横で二人の会話を聞いていたスティームは「アラッドって、なんだかお父さんみたいだね」と言おうとしたが、なんとなく言うのを止めた。



SIDE 学生たち

「…………」

「ヴェーラ、どうしましたの?」

「うぅん。なんでもない」

休日、エリザたちと王都を散策していたヴェーラは、ふと屋根の上に目を向けていた。

エリザに返した通り、その屋根には特に何もなかった。

(……見られてる?)

パロスト学園の二年生、公爵令嬢であるエリザにとって、誰かに見られるというのはそこまで珍しいことではない。
寧ろ、日常茶飯事の事であった。

好奇の視線、尊敬の眼差し、嫉妬などの負の感情を混ぜ合わせた眼……様々な種類の眼を向けられたことがある。

容姿が優れていることもあり、一瞬だけチラ見されることもある。
故に、一瞬だけ見られるという経験も何度も何度も体験してきた。

普段から敏感に反応してはいないが、それでも警戒心を高めればある程度把握出来る。

「……ヴェーラも、同じものを感じたか」

「っ、もしかして、レイも?」

「あぁ。私の勘違いかと思っていたが、レイも感じ取っていたとなると、どうやら勘違いではないようだな」

「おいおい、なんの話してるんだ?」

彼女たちのナンパ対策として同行しているリオは二人の会話に首を傾げる。

「多分、僕らが誰かに見られること……じゃ、ないかな」

「ルーフも感じ取っていたか。三人も同じものを感じているとなると、確定と言って良さそうだな」

「そうみたいね」

普段から共に行動してる八人の中で、三人が同じ事を感じていた。

二人と信用しているということもあり、レイは間違いなく自分たちが誰かに見られ続けていると確信を持った。

「なんだよそれ。お前ら三人が変なストーカーに狙われてるってことか?」

「…………それだったら、まだ良かったかもしれない」

「あん?」

レイはその凛々しい強さ、ヴェーラはミステリアスな美しさ。ルーフも二人ほどではないが、普段のオドオドした雰囲気と戦闘時の頼りになるギャップからファンがそれなりにいる。

故に、三人にストーキングを行う輩が現れても、全くおかしくない。
しかし、レイはその可能性を否定した。

(これまで向けられてきた視線は……ヴェーラとルーフも同じなのかは分からないが、ストーキングを行う厄介な変質者たちが向けてくるものとは違った)

レイは、ここ最近自分に向けられている視線について、身に覚えがあった。

(あの種の視線…………私たちは、誰かに護衛されている?)

それは、貴族出身の者であれば必ず一度は向けられるタイプの視線であった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

処理中です...