スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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九百六十七話 震える熱気

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(っ!!!!!!!!!!! なん、て重さだ)

アラッドは咄嗟にハイキックを防いだ左腕を右腕で支えることで、なんとか蹴りの衝撃に耐えることが出来た。

だが、当然ながらその場に留まることは出来ず、野次馬たちがつくっている円のギリギリまで押し飛ばされた。

「シッ!!!!!!」

「っと」

当然、ディーナの攻撃の手が緩むことはなく追撃が飛んでくるが、アラッドは即座にその場から離脱。

そして……数秒ほど、限られた円の中をとにかく動き回った。

(…………うん、どうやらヒビまではいってないみたいだな。とはいえ……左腕を右腕で支えなかったら、吹っ飛ばされるどころか、そのまま勢い余って、側頭部から地面に、叩きつけられたかも、しれないな)

最悪、負けていた。
その可能性を感じたアラッドは……特に表情に変化が現れることはなく、普段通りであった。

(にしても、今のは上手く、誘導されてしまったな)

もっと距離を取って躱すべきだったなと反省しながらも、左腕がまだ動くことを確認し終えたアラッドは再びファイティングポーズを取り、ディーナとの打撃戦に臨む。





アラッドがディーナに蹴り飛ばされた直後、元々熱気が溢れていた野次馬たちだったが、更に熱が高まり……訓練場が震えた。

「おいおい、今の結構良い一撃だったんじゃねぇか!!??」

「ガードしてたが……もしかしたら折れてるんじゃないか」

「いやいや、あんな一撃食らったら、どう考えても折れるだろ!!」

打撃戦が得意なディーナが放つ蹴り。
どう考えても、軽い訳がない。

加えて、現在ディーナの四肢には鬼火が纏われている。
アラッドは咄嗟に左腕に纏う魔力量を増やしたのが功を為し、なんとか影響を受けずに済んだ。
ただ、咄嗟の判断が遅れていれば、折れずとも確実に火傷を負っていた。

「なぁ、これってもしかするとよ……あるんじゃねぇか」

「だ、だな。あんだけ強烈な蹴りを食らったんだ。あのアラッドだって、無傷ってわけじゃねぇ……よな」

あのアラッドと、あのディーナが試合を行う。
となれば、野次馬たちは当たり前のようにどっちが勝利するかに賭け、ギャンブルを行う。

主にハプターラで活動している冒険者たちからすれば、アラッドよりもディーナの実力の方が良く知っている。
調子に乗ってバカ絡みしてきた同業者を叩き潰すことも少なくなく、こうして偶にディーナが同業者と本気で試合を行うことになれば、賭けのオッズはディーナの方が低い。

しかし、今回ディーナが戦うのは……あのアラッド。
彼が冒険者として活動を始めてから得た功績の内容やその数は、どう考えても活動を始めて数年以内の冒険者が得られる……経験するものではない。

アラッドがドラゴンスレイヤーの称号を得ており、現在共に活動しているメンバーや従魔などから本当にあのアラッドだと認識された結果……今回の試合のオッズは、アラッドの方が低かった。

だが、試合が始まってから数分が経過し、その間にアラッドの打撃が何度かヒットすることはあったが、目に見えるほどのダメージは入っていなかった。
そんな中、ディーナが叩き込んだ蹴りは、どう見てもクリーンヒット。

アラッドは咄嗟にガードしたものの、思いっきり蹴り飛ばされたところを見ると……野次馬達は「ディーナが勝つのか!!??」と、盛り上がるのも無理はない。

格下が格上の者を倒す……そんなジャイアントキリングな展開を見て、野次馬たちは当然盛り上がる。
そんな野次馬たちと比べて、スティームとガルーレは驚きつつも冷静に二人の戦いを観察していた。

「………………」

「ねぇ、スティーム。さっきの蹴りってさ」

「そうだね。両腕でのガードが間に合ってなかったら……全然あり得たね」

地面に叩きつけられ、側頭部に強い衝撃を受ければ、そのままノックアウトされていてもおかしくなかった。

アラッドには糸という切り札があるものの、発動するには確かな腕が必要。
側頭部に強い衝撃を受ければ、脳震盪が起きる可能性があり、そうなれば糸を使っての対処が間に合わず……と言った結果も、十分あり得た。

「……私なら、あれを食らったら……それまでの分も含めて、ペイル・サーベルスが発動してそうね~~~」

身体強化の大幅強化と痛覚の麻痺。
ガルーレの切り札であり、その手札を有しているからこそ、アラッドから「お前が戦れば殺し合いになるから駄目だ」と伝えられた要因でもある。

「そうなれば、やっぱり殺し合い待ったなしになってしまいそうかな」

「なるだろうね~~~。ん~~~~……悔しいけど、それに頼っちゃ駄目ってなると、私の勝率は……三割ぐらいってところかな~~~」

スキルだけではなく、使用出来るアイテムを全て使用しても構わないというバトルであればまた話は別。

しかし、当然の様にそんなルールで勝ったとしても、それはガルーレの望む結果ではない。

「僕も……似た様な感じかな」

「そう? スティームのメイン武器は双剣な訳だし、リーチに差があるでしょ」

「それはそうなんだけど……筋肉で無理矢理受け止められるかもって思うと、ね」

現在アラッドとバチバチに戦り合っているディーナの鬼人族らしい筋肉を見て、ガルーレは「さすがにそれはないでしょ」とは言えなかった。
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