999 / 1,361
九百九十七話 例がない
しおりを挟む
「全部残しておいてもらっても良いですか」
受付嬢の虎竜に関するディーナへの聞き取りが終わり、解体士たちが丁寧に丁寧に作業を続け……ようやく虎竜と牛飢鬼の解体が終了した。
アラッドは解体された牛飢鬼の素材を……一つも売却するつもりはなかった。
「そ、そうですか……か、かしこまりました」
ギルドとしては、虎竜と同じぐらい牛飢鬼の情報も気になる。
素材に関しては売却するよりも、研究素材として扱いたかったが……断念するしかない。
アラッドが強いだけの平民出身であれば何度か交渉してとギルド側も考えるが、侯爵家の令息という立場を持つ彼に対し、強く出れなかった。
(内臓や脳なども駄目ですか……いったい何に使うのでしょうか?)
貴族界隈ではアラッドが錬金術も嗜んでいるというのは有名な話だが、冒険者界隈ではあまり広まっていない。
とはいえ、実際に内臓や脳を使用するのはアラッドではなく、弟のアッシュであった。
「ディーナさんは、どうしますか」
「……内臓や、脳は売却する…………あと、そうだな。肉も全て、売ろう」
「かしこまりました」
肉を全て売却する。
その判断に、アラッドたち三人は少しだけ反応を示した。
(えぇ~~~~~、全部売っちゃうの!!!???)
(ディーナさんなら、内臓や脳などを売却するなら解るけど、肉も売ってしまうのか…………いや、そうか。少し前までならいざ知らず、今となってはという事かな)
(…………俺たちが、口を出すことじゃないな)
ドラゴンという生物の肉は……基本的に美味い。
火竜であろうと水竜であろうと……それこそ土竜や毒竜といった属性のドラゴン肉であっても、味に多少の差はあれど……美味いという事実は変わらない。
そして虎竜も……モンスターの種族上、竜種……ドラゴンである。
虎という要素が混ざっているものの、それでもどんな珍味なのかと気になる食材である。
だが、今のディーナからすると、その肉は現在自分の相棒となった従魔の親の肉…………それを自分が食べる訳には行かず、名を考えてもらったアラッドたちにも「礼だ、受け取って欲しい」とは言えなかった。
因みに、ディーナは今回そこを忘れてしまっていたが、竜殺しの効果が付与された武器を使えば、もっと強く深いダメージを与えられていた。
「では、少々お待ちください」
ディーナからどれをどれだけ売却するか詳しく聞き、受付嬢は上司に話を持っていき、共に慎重に……本当に慎重に話を進めていく。
Aランクモンスターの素材という時点で、非常に高額であることは間違いない。
だが……虎竜という存在は過去に例がなく、どの素材をどれほどの額で買い取れば良いのかという情報がない。
クロが討伐したAランクモンスター、牛飢鬼に関しては牛飢鬼以外にもミノタウロスから進化を果たしたAランクモン個体が存在するため、ある程度上手く設定できるが……数十分ほど話し合っても結果が出てこなかった。
「申し訳ありません、ディーナさん。売却頂ける素材の額に関して、少しの間お待ちいただいてもよろしいでしょうか」
「あぁ、大丈夫だ」
ディーナもギルド側の事情をある程度把握しているため、無理に今日中に支払ってくれとは言わなかった。
「ディーナさん、この後祝勝会でもするか?」
「……そうだな。祝っても、良いか」
討伐した相手の子が相棒となってしまったが、やはりそれはそれでこれはこれという感情がある。
ディーナは、今夜はアラッドたちと共に夕食を食べようと思った。
だが……それは良い意味で予定変更となった。
「「「「ディーナっ!!!!」」」」
「なっ!!!???」
解体倉庫からギルドのロビーに戻ると、ディーナと交友のある者たちが一斉に駆け寄って来た。
パワータイプであるディーナとはいえ、決してレベルが低くない面々に飛び掛かられるとバランスを崩しそうになるが……なんとかギリギリのところで耐えた。
「っしゃ!!!!!!!! 主役が来たぜ!!!!!!!」
これまたディーナと顔見知りである男性冒険者が直ぐにエールの入った杯を渡し、アラッドたちにも渡していく。
「んじゃ、ディーナが宿敵をぶっ飛ばした快挙に、乾杯!!!!!!!!」
「「「「「「「「「「乾杯!!!!!!!」」」」」」」」」」
「………………ふふ……ありがとう。乾杯」
先程ロビーで行われた受付嬢とのやり取りで、ディーナが両親を殺した仇である虎竜を倒した……しかもなんだかんだでアラッドたちの手を借りるということもなく、一人で討伐した。
その話は直ぐに広まり、ロビーいた者……話を聞いた者は、直ぐに祝勝会の……もとい宴会の準備を始めた。
ロビーにはあまりディーナと交流のない冒険者たちもいるが、彼らも祝いたかった。
彼等の多くも知っている……親しい者をモンスターに殺される悲しみ、そこからくる憎しみを。
だが、ディーナという冒険者は見事乗り越え、怨敵を討ち滅ぼした。
例え彼女の実力に嫉妬している者であったとしても……今回の一件を祝わない理由はなかった。
受付嬢の虎竜に関するディーナへの聞き取りが終わり、解体士たちが丁寧に丁寧に作業を続け……ようやく虎竜と牛飢鬼の解体が終了した。
アラッドは解体された牛飢鬼の素材を……一つも売却するつもりはなかった。
「そ、そうですか……か、かしこまりました」
ギルドとしては、虎竜と同じぐらい牛飢鬼の情報も気になる。
素材に関しては売却するよりも、研究素材として扱いたかったが……断念するしかない。
アラッドが強いだけの平民出身であれば何度か交渉してとギルド側も考えるが、侯爵家の令息という立場を持つ彼に対し、強く出れなかった。
(内臓や脳なども駄目ですか……いったい何に使うのでしょうか?)
貴族界隈ではアラッドが錬金術も嗜んでいるというのは有名な話だが、冒険者界隈ではあまり広まっていない。
とはいえ、実際に内臓や脳を使用するのはアラッドではなく、弟のアッシュであった。
「ディーナさんは、どうしますか」
「……内臓や、脳は売却する…………あと、そうだな。肉も全て、売ろう」
「かしこまりました」
肉を全て売却する。
その判断に、アラッドたち三人は少しだけ反応を示した。
(えぇ~~~~~、全部売っちゃうの!!!???)
(ディーナさんなら、内臓や脳などを売却するなら解るけど、肉も売ってしまうのか…………いや、そうか。少し前までならいざ知らず、今となってはという事かな)
(…………俺たちが、口を出すことじゃないな)
ドラゴンという生物の肉は……基本的に美味い。
火竜であろうと水竜であろうと……それこそ土竜や毒竜といった属性のドラゴン肉であっても、味に多少の差はあれど……美味いという事実は変わらない。
そして虎竜も……モンスターの種族上、竜種……ドラゴンである。
虎という要素が混ざっているものの、それでもどんな珍味なのかと気になる食材である。
だが、今のディーナからすると、その肉は現在自分の相棒となった従魔の親の肉…………それを自分が食べる訳には行かず、名を考えてもらったアラッドたちにも「礼だ、受け取って欲しい」とは言えなかった。
因みに、ディーナは今回そこを忘れてしまっていたが、竜殺しの効果が付与された武器を使えば、もっと強く深いダメージを与えられていた。
「では、少々お待ちください」
ディーナからどれをどれだけ売却するか詳しく聞き、受付嬢は上司に話を持っていき、共に慎重に……本当に慎重に話を進めていく。
Aランクモンスターの素材という時点で、非常に高額であることは間違いない。
だが……虎竜という存在は過去に例がなく、どの素材をどれほどの額で買い取れば良いのかという情報がない。
クロが討伐したAランクモンスター、牛飢鬼に関しては牛飢鬼以外にもミノタウロスから進化を果たしたAランクモン個体が存在するため、ある程度上手く設定できるが……数十分ほど話し合っても結果が出てこなかった。
「申し訳ありません、ディーナさん。売却頂ける素材の額に関して、少しの間お待ちいただいてもよろしいでしょうか」
「あぁ、大丈夫だ」
ディーナもギルド側の事情をある程度把握しているため、無理に今日中に支払ってくれとは言わなかった。
「ディーナさん、この後祝勝会でもするか?」
「……そうだな。祝っても、良いか」
討伐した相手の子が相棒となってしまったが、やはりそれはそれでこれはこれという感情がある。
ディーナは、今夜はアラッドたちと共に夕食を食べようと思った。
だが……それは良い意味で予定変更となった。
「「「「ディーナっ!!!!」」」」
「なっ!!!???」
解体倉庫からギルドのロビーに戻ると、ディーナと交友のある者たちが一斉に駆け寄って来た。
パワータイプであるディーナとはいえ、決してレベルが低くない面々に飛び掛かられるとバランスを崩しそうになるが……なんとかギリギリのところで耐えた。
「っしゃ!!!!!!!! 主役が来たぜ!!!!!!!」
これまたディーナと顔見知りである男性冒険者が直ぐにエールの入った杯を渡し、アラッドたちにも渡していく。
「んじゃ、ディーナが宿敵をぶっ飛ばした快挙に、乾杯!!!!!!!!」
「「「「「「「「「「乾杯!!!!!!!」」」」」」」」」」
「………………ふふ……ありがとう。乾杯」
先程ロビーで行われた受付嬢とのやり取りで、ディーナが両親を殺した仇である虎竜を倒した……しかもなんだかんだでアラッドたちの手を借りるということもなく、一人で討伐した。
その話は直ぐに広まり、ロビーいた者……話を聞いた者は、直ぐに祝勝会の……もとい宴会の準備を始めた。
ロビーにはあまりディーナと交流のない冒険者たちもいるが、彼らも祝いたかった。
彼等の多くも知っている……親しい者をモンスターに殺される悲しみ、そこからくる憎しみを。
だが、ディーナという冒険者は見事乗り越え、怨敵を討ち滅ぼした。
例え彼女の実力に嫉妬している者であったとしても……今回の一件を祝わない理由はなかった。
529
あなたにおすすめの小説
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~
よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。
しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。
なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。
そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。
この機会を逃す手はない!
ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。
よくある断罪劇からの反撃です。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
身分は高いが立場は脆い
柊
ファンタジー
公爵令嬢ローゼリア・アルフィーネに呼び出された、男爵令嬢ミーナ・ブラウン。
ローゼリアは、マリア・ウィロウ男爵令嬢が婚約者であるルドルフ・エーヴァルトと親しくしている、どうかマリア嬢に控えるように進言しては貰えないだろうか、と頼んできた。
それにミーナが答えたことは……。
※複数のサイトに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる