スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
1,004 / 1,389

千二話 既に助けている

しおりを挟む
「一か月、ですか……」

「あぁ、そうだ。アラッドは、この期間……どう見る」

開戦は、一か月後。

これは一方的に提案された内容ですはなく、両国が合意した上での決定である。

「そうですね…………向こうは向こうで、それまでに何かを行い、戦力を増強したいのかもしれませんね」

「ふむ、やはりそれが考えられるか」

「はい。ただ、木竜や雪竜の件の様な事は起こらないでしょう……恐らくですが」

「あぁ、そうだな。そこはルールを結んだ。もし、破るようなことが起これば、ただの戦争では済まないとな」

「……仮にそうなり、命とあらば全てを斬り刻んできましょう」

国王陛下の命であれば、全てを斬り刻む。
そう答えたソウスケの眼は……本気であり、一切の嘘はなかった。

「…………そう答えてくれるのは、嬉しく思う。だが、そうさせないために、私たち大人が動く」

「……反論する訳ではありませんが、一応私も大人なのですが」

「はっはっは!!!! 勿論、それは解っておる。だが……闘争を好んでいても、アラッドは決して戦争が好きな訳ではないだろう」

「……えぇ、そうですね」

国王の言う通り、アラッドは闘争を好む。
強き者との闘争では、自然と心が躍ろる。

だが……それでも、戦争という理由なき相手の命を奪う戦いは、また別物であると理解している。

「私としては、アラッドには冒険者としての人生を楽しんでほしいと思っている」

「……これでも、貴族の令息です。一応、騎士の爵位を持っていますので、普段は冒険者として活動しているからといって、逃げることは出来ません」

「そうか、そう思っていると解っただけでも、国王としては嬉しく思う。だが……忘れないでほしい。お主は既に、多くの命を救っていることをな」

アラッドはこれまで、騎士として活動したことはなく、冒険者として活動し続けている。
だが、結果としてアラッドは冒険者として活動する中で、多くの命を助けていた。

オークシャーマンを倒し、ドラゴンゾンビをなんとかギリギリで討伐。
雷獣をスティームと共に討伐し、轟炎竜をクロと共に撃破。

そして……風竜を、闇竜をフローレンスたちと共に倒した。

今、この場で国王が口にすることはないが、闇竜と闇の力を持つモンスターたちの詳細内容を書き記したフローレンスから報告書を読んだ際……国王は決して小さくない衝撃を受けた。

(闇竜に関しては、本当に運が良かったとしか言えないだろう。もし……フローレンスたちと同じタイミングでアラッドたちが到着していなければ……全滅か、はたまたフローレンスだけが亡くるかのどちらかであっただろう)

国王は、決してフローレンスの事を過小評価などしていない。
アラッドが冒険者界隈の超新星であれば、騎士界隈の超新星は間違いなくフローレンスである。

それでも、闇竜の戦闘力だけではなく、闇竜が保有していた戦力を考慮すれば……敗北が濃厚であるというのは、誰が考えても間違いない。

そういった点も含めれば、アラッドは偶々偶然とはいえ、これからの世代を背負う者たちを救ったことにもなる。

「……誠に、光栄です」

「頭など下げずともよい。して、話は戻るが、奴らが何を企んでいるか、もう少し詳しい内容は思い浮かぶか」

「そうですね……………………騎士か、冒険者か、それともはたまた一般人かは解りませんが、強力なスキルを持っているが、調整に手こずっているのかもしれませんね」

アラッドにとって、糸に関しては特に扱う上で多少の難しさはあれど、どうしても破れない分厚い壁というのは感じなかった。

だが、クロが殺されかけた事を切っ掛けに手に入れたスキル、狂化には一定の越えなければならない壁を感じていた。

(狂気を解放する時間を伸ばす、狂気を理性で従える……あれは、一筋縄ではいかなかった)

長い年月をかけ、今も成長している狂化だが、間違いなくじゃじゃ馬だった期間が存在した。

「強力だが、扱いに手こずるスキルか……なるほど。そういった理由での一か月という期間はあり得そうだ。では、少し話は変るが、やはり……後ろの二人のスティームとガルーレだったか。その二人と共に戦場を駆ける方がやりやすいか」

「そうですね……その方が、戦りやすいかと。共に行動するメンバーを増やすにしても、気の知れた相手であった方が良いかと」

「ふむ、やはりそうか」

国王としては、自身の頭の中に騎士、冒険者問わず「アラッドはこういった者たちと組んだ方が……いや、この者たちと組むのもありだろう」と候補がいたのだが、本人から気の知れたメンバーでと言われてしまうと、無理矢理提案は出来ない。

これに関しては現役の騎士である護衛の二人も、気の知れた者たちの方が共に戦いやすいというのは身に染みて解っているため、特に反応を示すことはなかった。

(……いや、そうなのだろうな。寧ろ、私などが心配するだけ無駄というものか)

フローレンスからの報告などを聞いているため、現在アラッドと共に行動しているスティームとガルーレがソロでBランクモンスターと討伐出来る実力を有しており、二人ともBランクの従魔を従えていることも知っている。

国王もそこら辺の正体よりも圧倒的に強い戦闘力を有していることは解っているため、ひとまずアラッドの意見を受け入れ、作戦に組み込むことにした。
しおりを挟む
感想 482

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...